たとえばこんなあとがき


終わった……。ようやく終わりました……。
履歴情報を確認すると、物語を書き始めたのが4月9日。書き上がったのは10月23日。途中決算期による執筆中断もあったものの、「エトランゼたちの戦旗」・「エースの翼跡」、ここに完結です。AC04の頃と比べて、格段に分量も増え、オリジナルの登場人物たちも増やし、張った伏線の取り漏れがないようにメモを書き散らしながらの執筆となりましたが、AC05時代に執筆した番外編などの経験が役に立ったのか、とにかくも収拾を付けられたのかな、と思います。いやぁ、それにしても長かった……。

今回のAC0、魅力的な登場人物たちが多いのに対し、物語は案外淡々と進んでいく印象がありました。どちらかと言えば、AC04に近いイメージというべきでしょうか。なので、ブレット・トンプソンが「彼の話をすると、皆どこか嬉しそうだった。それが答えかもしれない」と言われても、正直よくキャラが分からないと思った方も多かったのではないでしょうか?ま、サイファーはAC0をプレイする方皆さんなのですから、当然人それぞれのサイファー像があります。でも小説化に当たっては、そこが悩み所でした。一時は、マッドブル・ガイアの人格がサイファーになったりもしたのですが、どうせなら「鬼神というイメージと正反対のキャラクターにしたらどうか?」と考え始め、そして生まれたのが我らがレオンハルトです。当初はもう少しハードボイルドな印象だったんですが、シャーウッドやガイア、ラリーのイメージを固めていくうちに、すっかりと家庭人となってしまいました(笑)。「円卓の鬼神」と「良き家庭人」のギャップ、でもこれって、戦場に赴く兵士一人一人の抱える問題なんですよね。1人の兵士が倒した敵の兵士にも、家庭があり、家族があり、恋人がいるかもしれない――そう考えたら戦争なんてやってられないはずなんですが、現実に戦争は起こり、多くの命が奪われていってしまう……レオンハルトもまた、そんなことは承知の上で戦い続けているというわけです。

もう一つ、AC0から採用されたエース・スタイルも悩みの種でした。何しろ、本編では選択するエーススタイルによって登場する敵エースまで代わってしまうわけですが、小説化するに当たっては出来れば全員出したい。どうしよう?……という結果、じゃあ各エーススタイルに属するキャラクターを作ってしまおう、ということで、今度はガイアとシャーウッドが生まれました。サイファーはどちらかと言えば戦況を見渡して適確な判断を下す、言わばソルジャースタイルのエース(性格は結構ナイトよりですが)。それに対し、"プライドが前面に出た若いパリパリのナイトエース"――ということで、シャーウッド君がまず誕生し、"報酬と力を愛する豪快なムードメーカー"――というコンセプトで、マーなりー・エースのガイア誕生、となりました。さらにPJが何しろあんな最期になってしまいますので、戦争を生き延びた若い恋人たち、ということでジェーン・オブライエンが追加となり、どうせならPJと遠距離恋愛でよろしくやっていた女性も出してしまえ、というわけでセシリー・レクターが加わりました。いざ書き始めてみたら、これらの面々とサイファーとをからめていくことで、基地の風景が随分とイメージしやすくなりましたね。これだけではなく、実際には名前すら出てこないヴァレーの司令官殿としてウッドラントが登場し、その副官役として珈琲魔人が追加され、さらにサイファーの専属メカニックも必要だよな、というわけでナガハマが追加となり……気がついたらヴァレーだけでも随分と賑やかなことに。こうなったら、ベルカのエースたちも全員登場にしてしまえ……とやった結果、本来の物語よりもなんだか随分と話が増えてしまい、実質的なミッションは18しかないのに、終わってみれば50話に達することとなってしまいました。
ではここらで、ちょっとした暴露話でも。
ジェイミー・ウッドラント中将(2階級特進、戦死)
当初の予定では、「国境無き世界」に加わってしまい、フレスベルク司令官に就任。そのためイマハマがヴァレーの司令官に就任する羽目となり、最終的にはサイファーと激闘を繰り広げる……予定でした。基本的にレイシストな彼ですので、当初はそのつもりでサイファーを嫌ってみせたりしているうちに、なんだか随分とやり手のおっちゃんになってしまいました(笑)。AC05のペローが何しろあんなキャラだったので、もう少しかっこいい中年にしたいな……と考えているうちに、あんな良い司令官殿にいつの間にか昇格。最期は美人に看取られて逝くという、全く予想もしないおいしい役どころとなってしまいました。

マゴハチ・イマハマ少将
珈琲魔人(笑)。妖怪「珈琲じじい」の異名を持つこの人物、当初は本当に現場に向かない官僚的キャラでいくはずが、どこで間違えたのかヴァレーの陰の功労者になり、最終的にはとっても熱いハートの好人物であることが判明する事態となりました(笑)。イーグルアイにまで乗り込んでしまうし……、ラリーに対して「なぐってやりたい」と言ってしまうし……。本当に何をどこで間違えたんでしょう?ちなみに彼の珈琲好きは、masamuneの趣味のコピーだったりします。あまてらすさんのおかげで、愛すべきサル顔敏腕司令官に昇格した彼に拍手(笑)。

ハインラント・ロッテンバーク
彼の設定自体は、当初からあまり変わっていません。シャーウッドのベルカ版というか、サイファーのことを執拗に恨み追い続ける男、という部分、根本的には変わっていません。最初なんか完璧に復讐鬼そのものでしたし。ところで、彼は本来なら円卓で戦死の予定でした。それが、設定の都合上シュヴァルツェの登場が後ろにずれたため、「臨界」の話まで生き延びました。さらに、ここで死なせたら「国境無き世界」の印象が薄いな、と思って、撃墜されるも生存と変わり、トドメとしてラリーとの出会いにより人間的に立ち直っていく……というわけで、物の見事に生き延びた挙句、エースの翼跡にまで登場しているという、信じられない結果となったのが「彼」です。別人28号とはまさに彼のためにある言葉でしょう(笑)。

アントン・カプチェンコ
何故この人だけ写真が無いんだろう?というキャラでしたが、あまてらすさんのおかげで「ドクター」の似合う人物像がイメージされ、それに合わせて本編とは少しイメージの違うキャラとなりました。本編では、彼は純粋にベルカの復権と栄光を信じていた人物になっていますが、小説では自らの行為に疑問を抱き迷っているキャラとなりました。本編の「円卓の鬼神」ステージの会話、彼だけ他の二人と比べると微妙に温度差を感じたんですよね、私は。その結果が、過ちに気が付き、想いをサイファーに託すという展開へと繋がりました。彼の最期の自決は完全なる創作ですが、笑いながら逝った男としての姿、いかがでしたでしょう?

ジョシュア・ブリストー
アヴァロン上空での決戦において、情けない言動が無数にあり、敗北後も執拗に組織の再建に奔走した男……。ブリストーファンの方には何とも申し訳ない結果となってしまったのが鰤公です。当初はここまで惨めな展開になることは予想していなかったんですが、物語を執筆していくうちに何となく彼の「歪み」が見えてきてしまったんですよね。一見すると「なるほど」と頷きたくなるような彼の「理想」の裏側に隠されている破滅的な衝動――矛盾する二つの性格の危うさ。これを誰かに論破させたら面白いな――というわけで、シャーウッドにコテンパンに言い負かされる役柄になってしまったのが彼です。終わってみれば、本編よりもはるかに惨めなことに……。

ラリー・フォルク
このひねくれ者(笑)。この人の考えていることを想像するのが、非常に困難な仕事でした。彼の登場機会、会話は数あれど、肝心なところでの彼の感情が分からなかったりするんですよね。中でもPJの最期のシーン。あの部分をどう捉えるべきかで本当に悩みました。それで執筆がストップするくらい悩みました。そして、ラリーは真剣に「V2」で世界を変えることを信じていたのかどうかという部分も良く分からず、一応物語版ではこうだった、ということにしてますが、実際どうだったのかは本人に聞いてみないと分からないですねぇ(苦笑)。物語の終盤、答を見つけた彼が今後どのように生きていくのか、という部分は興味深いところです。
……ま、色々と読み直してみたり、406STFのエース諸氏の執筆されている作品を見て「あ〜、こういうのもありだよなぁ」と思ったりで、まだまだ物書きとしては未熟な面も痛感しております。そんな作品に、素晴らしい華を添えてくださったのがあまてらすさんの挿絵でした。文章だけですとなかなかイメージが湧きにくい登場人物たちが、頭の中ではっきりと形になって動き回るというのは初めての経験でしたし、長年の夢でありました、物語+イラストという構図が現実のものとなり、あまてらすさんには感謝感謝の一言に尽きます。決して足を向けては寝られません。物語の中盤の頃、なかなか進まないペースとこれから書かねばならない文量とに挫けかけたりしたのですが、あまてらすさんの絵を見て逆に励まされて、「まだまだまだまだ〜っ!!」と気分が盛り上がったり……。そして、読者の皆さんの叱咤激励のおかげで、ここまでたどり着くことが出来ました。改めて御礼をさせて下さい。本当にありがとうございました。

……さて。
一仕事終わったらバカンスと相場は決まっている。バカンスと言えば南半球の海岸。しばらくは羽を休めてぐうたら三昧の日々を……!
ジリリリリ、ジリリリリ。
なんだい、やかましい。
「へい、こちら406STF司令部。明日から南のオーレリアでバカンスで休業中だよ」
「そうか、話が早い。ちょうど次の任務もオーレリアだ。良かったな、バカンスとセットで派遣してやろう。もっとも、バカンスは作戦終了後だが」
「ちょ、ちょっとぉ、聞いてないよぉぉぉっ!!」
「では、健闘を祈る。明日の朝一で迎えをやるから、準備しておくように」

開戦まで、24時間とちょっと。朝一で買いに行くとして、作戦開始まで、残り35時間程度。
では、皆さん、オーレリアの空でお会いしましょう。

オーレリア空軍派遣まで、あと24時間と6分。
雨風吹き荒れる夜の街を眺めながら――。

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