激闘、カノンシード


首都オーレッドで何か異変が起こっているらしい。これまでは連日のようにユークトバニアへの積極的侵攻活動を命じていた参謀本部から、「前線司令官は不必要な戦闘による戦力消耗を避け、次なる命令を待て」という厳命が全軍に伝えられたのである。ユークトバニアの宣戦布告からおよそ3ヶ月間以上行われてきた方針とは完全に相反する命令に、前線では少なからぬ動揺が走っているという。クライスラー大佐たちは用心深く推移を見守っているが、どうやら僕らの知らない間に政変が行われたようだ。それはすなわち、主戦派の最も恐れる勢力――ハーリング大統領の側近たちがここに至って行動を起こしたのか、或いはハーリング大統領自身が帰還した、そのどちらかが起こったに違いない。つまり、オーシアは本来あるべき姿を取り戻し始めたということだ。そして、僕らにも大きな転機が訪れようとしていた。先日エルアノ基地に「整備点検のため」に着陸した空中管制機サンダーヘッドから、シュヴェルトライテ航空隊の消息が伝えられたのである。奴らの居場所は、ノース・オーシア州――南ベルカ。これで、ノース・オーシア・グランダー・インダストリーがベルカと通じていることは完全に明らかとなった。そして、そこに奴もいるのだろう。口だけキニアス――キニアス・アップルルースが。

最大の問題は、現時点ではグランダー・インダストリーに対する直接的な攻撃が出来ない、ということだったが、クライスラー大佐はその不安を一蹴してみせた。こちらから手出し出来ないなら、ねぐらから引きずり出してやろう、というのが大佐の魂胆のようだった。
「連中はノルト・ベルカの鉱山攻撃の際、自らを9103飛行隊と声高に宣言してくれたそうだ。ならば、こちらはその名前を最大限に使わせてもらう。そこでだ、諸君に伝えなければならないことがある。既に諸君は9103飛行隊の任を解いてあるが、改めて命ずる。本日より「叛逆飛行隊」は竜騎兵――ドラグーン戦隊と呼称する。叛逆した9103の名前を、ベルカの航空隊に負ってもらうためだ。……モニターを見たまえ」
画面上に表示されたのは、最近すっかりと見慣れてしまったオーシア北東部の地図。グラハム中尉の操作によって、地図上に様々なポインタが表示されていく。サンダーヘッドによってもたらされた、シュヴェルトライテ航空隊の出現地点、エルアノ基地などが表示され、そして僕らの作戦行動エリアが表示された。
「彼らの所在が完全に明らかになった以上、我々は彼らの進路上を守っていればいい。ZOE-XX02、Su-47ともに空母からの発艦機能は持たないと見て良い以上、海上からの侵入に対する警戒は解いて良いと思われる」
「しかし大佐殿、奴らが巣にこもっている限り、こちらからの攻撃は出来ないのではないでしょうか?」
「だからだ、ウォーレン大尉。奴らを引きずり出す。カノンシードとも連携し、君らには南ベルカ空域にて哨戒索敵体制を取ってもらいつつ、共通回線で定期的に呼びかけてもらう。"叛逆飛行隊9103は南ベルカに潜伏中。引き続き監視を行う"――とでも言ってもらおうか。部隊を二手に分け、カノンシード班とエルアノ班を交代しながら飛んでもらう。ただし、ベルカの息のかかった連中以外への攻撃は禁ずる。いいな?」
クライスラー大佐とアルウォール艦長の立てたプランは、シグニッジ基地の時にベルカが行った方法を逆手に取ったものというわけだ。汚名を着せられる方はきっと頭に来るだろう。特に、キニアスのように自らの行いが正義だと信じて疑わないような人間にとっては、堪えようの無い屈辱に違いない。そしてベルカとグランダーも、謂れの無い謀略、と退けたくても、オーシア政府の追求を受ければ何らかの答えを出さざるを得なくなる。その場合、最も手っ取り早いのは不安要素を取り除くことだ。そこを、僕らが叩く。
「大佐、もう一つ忘れていますぜ」
「ああ、分かっている。アネカワ少尉。本日付けで指揮官権限により君を特務中尉とし、ドラグーン中隊の指揮権も付与する。今日から君のコールサインは、ドラグーン1だ」
僕は言われたことに反応できなかった。何だって?特務中尉はともかくとして、指揮権にドラグーン1だって?それはつまり……。
「私にドラグーン戦隊を指揮しろ、と言うのですか。そんな、無茶です。指揮官にはガイヤ大尉かウォーレン大尉が適任と判断いたします」
「折角の機会なんだ、ありがたく頂戴しておきな。それにな、これは俺とウォーレンで話し合って決めたんだ。俺たちのどっちかが隊長になると、結局は喧嘩になる」
「違うだろう、ガイヤ大尉。アネカワ、君はもう、この部隊のトップと言って良い腕前になっているんだ。9103が経験した実戦の撃墜スコアでも君がトップになっていることは知っているだろう。……君になら、私は背中を任せられる。だから、君には1番機を受けてもらいたいんだ」
確かにスコア上はそうだろう。だが、それはウォーレン大尉とガイヤ大尉のサポートあってのことだ。僕一人で築き上げたものではないはずだ。僕は、救いを求めるようにクライスラー大佐を見上げた。シルバーフレームの眼鏡の奥の目は、以前感じた冷徹なものではなく、温和な光をたたえているように見えた。その瞳が言っている。"自分の力をもっと信じろ"、と。
「……アネカワ中尉、拝命致しました。1番機、有難く頂戴します」
これからは自分だけでなく、ガイヤ大尉たちの命までも預ることになる。これまで以上に重いものを背負って僕は飛ばなければならない。だが――もしそうすることで皆の役に立てるなら、出来る限りのことを果たしたかった。オーシアのためとか、大義のためとか、そんな面倒くさいことではなく、仲間たちを守るため、そして戦争の犠牲にされる人々のために。そのために、シュヴェルトライテ航空隊を、ベルカを倒す。僕らのしていることも、決して正しいことではないだろう。武器もて相手の命を奪う行為に変わりは無い。それでも、奴らを野放しにするわけにはいかない。奴らを放っておくことは、さらに無数の血を流すことと同義なのだから。
「よし、それではオペレーション・ピンプリックを開始する。出撃だ、ドラグーン!!」
「了解!!」
恐らく、ここに来てから初めてであろう、と言えるほど、揃って敬礼したのではなかろうか。ガイヤ大尉がニヤリと笑うと、クライスラー大佐も笑ってみせる。そして大尉は僕の肩を叩いて言った。
「お手並み拝見と行こうじゃないか、中尉殿。落第点だったら、どうなるか分かっているよな?」
本当にやりかねない人だけに、正直なところ、後悔した。
ピンプリック作戦――その名のとおり「嫌がらせ」作戦の効果はてきめんだった。敢えて南ベルカの上空を通過してSAMを打ちかけられたりもしたが、逆に言えばそれだけグランダー・インダストリーは警戒する理由があり、警戒するだけの軍事力を持っているというわけだった。どうやら南ベルカに潜伏しているベルカの航空隊はシュヴェルトライテだけではないようで、迎撃に上がって来るSu-47を僕らは確実に仕留め、出血を強いていった。カノンシード班とエルアノ班を交互に、しかも昼夜を問わずに行われた作戦行動で僕らは少なからず疲労が蓄積していったが、得たものも決して少なくは無かった。オーシア政府が、グランダー・インダストリーに対して強制監査を行う方針を打ち出したのである。名目は、オーシア政府から投入された軍事予算の不正使用に関するもの、となっているが、どうやらオーシア政府は数日前までのオーシア政府では無くなったことは間違いないようだった。2010年も今日を除けばあと2日となり、数ヶ月の戦争で血塗られた2010年がもう少しで終わろうとしていた。
「ドラグーン5より、ドラグーン1、周辺空域に敵影なし」
「了解、次の空域への移動を開始する」
「了解、アネカワ、隊長職が似合ってきたな」
今日の僕の受け持ちは、グレッグ中尉とともにカノンシード班。南ベルカ空域はガイヤ大尉のチームが今日は受け持っている。この数日で僕らが叩き落したベルカの戦闘機は10機以上。そろそろ、僕らの所在も掴まれているだろう。何しろ相手はノース・オーシア・グランダー・インダストリーだ。軍事衛星などを使用して僕らの追跡をしている可能性は高い。だが、そのリスクを冒さなければ、ベルカを表舞台に引きずり出すことなど出来はしないのだ。カノンシードへのレールガン砲撃射程空域を僕らはカバーするようにルートを選び、冬の空を駆けていく。レーダー上の反応はネガティブ。レーダーのカバー範囲を変更しても、特に反応は変わらず、か。そんな僕の機体に対し、無線のコールが鳴ったのはその時だった。回線チャンネルは……ドラグーン戦隊の専用チャンネル?
「こちら空中管制機サンダーヘッド、応答せよ」
何度か聞いたことのある張りのある声。ローゼズ大尉曰く、「ストーンヘッド」ことサンダーヘッドからのホットラインだった。
「こちらドラグーン1、感度良好です」
「先刻、9103飛行隊の機影をキャッチした。数は4、うち1機はデータが存在しない。ノルト・ベルカ領空からオーシア領海を目指している。現在地点はエルアノ基地から方位050、距離はおよそ900キロの地点だ。現状のコースから考えて、狙いはエルアノではない。空母カノンシードと考えられる。急げ!現在地からなら、攻撃を阻止出来る可能性は高い!!」
ガツン、と頭を殴られたような気分になった。既に僕らは射程範囲の南側、つまりは内陸部側まで来てしまっている。それに対し、敵部隊はノルト・ベルカ側から海上を回り込んでくる計算だ。くっ、間に合うか!?
「アネカワ!迷っている時間は無い、反転しよう。まだ燃料は充分にある!!」
グレッグ中尉の言うとおりだった。このまま最大戦速で急行すれば、何とか間に合う位置ではある。僕はエルアノ基地へと通信を開き、緊急事態を告げた。既にガイヤ大尉たちも作戦空域に飛んでいるから、反転してくるにしても間に合わない。僕らが食い止めるしかなかった。僕は操縦桿を思い切り引き、機体を急反転させた。そしてスロットルを最大出力に叩き込む。シートに弾き飛ばされるようなGがかかり、機体が音速を超えて加速を開始する。――間に合ってくれ!!祈るような気持ちで、僕は叫んでいた。
「ドラグーン1よりスタートレイダー、緊急事態発生、上空警戒を強化せよ、繰り返す、上空警戒を強化せよ!!」

アネカワ中尉からの緊急連絡を受けて、カノンシード艦内は第一級戦闘配置に移行した。レッド・アイが対空レーダーを最大限に使用して敵部隊の接近に備える。たった2艦ではあったが、ジクザク航行を開始し、回避行動を開始する。散弾弾頭で狙われてどこまで効果があるか、は疑問であったが、的を多少は狙いにくくなることに期待して、カノンシードは波を引き裂いていく。いずれはこうなると覚悟してのことだ。だが、簡単にやらせはしない。獲物を引きずり出した以上、ドラグーンが確実に奴らを葬るだけの時間は何としても稼がなければならないのだから。
「方位090、敵影4、急速接近中!!アネカワ隊も急行中!!」
「エルアノ基地に伝えろ!こっちの部隊は囮で、本隊が他の方面を攻撃する可能性アリ、ガイヤ隊は現状を維持されたし、以上だ」
「了解しました!」
これまで、搭乗員たちが前線にあっても、カノンシード自身が前線に出ることはほとんど無かった。よって、海戦――海戦と呼べるかどうか――を初めて経験するスマキア伍長たちの声が緊張で震えているのは仕方の無いことだろう。アルウォールは艦外マイクにスイッチを切り替えた。この海戦では、少なくとも甲板要員は必要ない。少しでも、攻撃による被害者を少なくしなければ!
「全甲板要員は直ちに艦内へ退避!繰り返す、甲板要員は直ちに艦内へ退避!急げ!!」
ガスタービンの動力が全開で稼動し、カノンシードの巨体を突き進めていく。だが、この程度など、空を駆ける戦闘機たちから見ればドンガメも同然だ。CICのディスプレイに、甲板要員たちが次々と艦内へ飛び込んでいく姿が映し出される。よし、それでいい。アルウォールが心の中で胸を撫で下ろした直後のことだった。鼓膜が破れそうなほどの轟音と衝撃がカノンシードを揺さぶった。CICのモニターには、膨れ上がる光がカノンシード後方の海面を覆い尽くしていく姿が映し出されていた。衝撃波に弾き飛ばされた波がカノンシードに押し寄せ、艦体を激しく揺さぶる。
「後方600メートル付近に着弾ーっ!!」
「艦体損傷、ありません!回避成功!!」
歓声があがりかけたのを手で制止し、アルウォールはディスプレイを睨みつけた。今のはある意味牽制攻撃だ。距離とタイミングを計算して、次はもっと正確なのが必ず飛んでくる。相手がアホであったとしても、その辺りの計算をコンピュータが補ってしまうだろう。ならば、こっちはその計算の上を行くしかない。今度はこちらの速度を計算して鼻先に放ってくるとして……。
「面舵一杯!!」
「了解、面舵一杯!!」
カノンシードは速度そのまま、大きく旋回していく。よし、それでいい、そのまま、もっと早く!!かき乱された波が不規則に広がっていき、ぶつかり合う波が砕けていく。大きく円を描くような航跡を引きながら、カノンシードは海原を疾走していく。まさか空母でこんな艦隊機動をやる羽目になるとは思わなかったな、と苦笑を浮かべたアルウォールの目が、ディスプレイの一つで止まった。光の筋が空を切り裂くように接近していた。第2弾、来たか!
「全員、何かに掴まれ!!今度はもっと近くに来るぞ!!」
マイクを握り締め叫ぶのと同時くらいに、迫り来た光が分裂し、そして膨れ上がった。光の暴走と轟音が弾け、カノンシードの前方に光球が出現してやがてそれは爆炎へと姿を変えた。衝撃波と弾き飛ばされた波とが前方から襲い掛かり、それはカノンシードを艦首から直撃した。下方からすくい上げられるようにしてカノンシードの艦首が一瞬宙に浮きかけ、衝撃の支えを失って今度は思い切り海面へと突入する。水柱があがり、衝撃波に晒された甲板を洗い流していく。艦内の人間にとってはたまったものではなかった。艦首が持ち上がった瞬間、多くの乗組員が通路などを後ろへ転がったと思った刹那、今度は海面に落下する衝撃がまともに彼らを襲ったのだから。CIC内部も同様で、アルウォール自身は指揮卓を何とか支えにしたものの派手に転倒し、グラハム中尉は額を配管の一つに打ち付けてしまった。オペレーターたちも同様で、着席しているが故に身動きが取れず、顔や腕を激しく打ち付けてしまっていた。
「オールステーション、損害状況を報告せよ!」
「こちら機関部、まだまだ行けます!機関に損傷なし!!」
「こちら第1弾薬庫、問題ありません!」
「第1居住区、先ほどの攻撃で甲板が損傷し、一部で崩落しています。負傷者はいますが、いずれも軽微!」
この状況下で乗組員たちはパニックにも陥らずに自分を信じている。ならば自分自身、それに応えるしかないではないか。それに、先に逝った搭乗員たちの分まで、自分はあがき続けなければならないのだ。彼はCIC内のオペレーター一人一人に歩み寄り、無事を確認していった。緊急の治療が必要な者がいたとしたら、最悪治療室まで担いでいくしかない。そのうちの一人、スマキア伍長は腕を押さえながら脂汗を流していた。額に小さな切り傷が刻まれてしまっていた。アルウォールは軽く伍長の押さえている腕を握った。息を吸うような悲鳴をあげ、伍長の顔が歪む。衝撃で手を打ち付けた際、骨折したのだろう。
「だ、大丈夫です、艦長。私はまだ……まだやれます!」
激痛に耐えながらもスマキア伍長の目は死んでいなかった。アネカワたちが必ず救援に来ることを、彼女は疑っていないのだ。アルウォールは胸元のポケットから、ハーモニカを取り出した。こんなときには滑稽かもしれないが、腕を固定するのには充分役に立つ。
「通信士、彼女の腕を固定してやれ。……伍長、やれるな?」
「……はい!ドラグーンとの通信はお任せください!」
頷いて、アルウォールは指揮卓に戻った。吹き飛んでいた軍帽をグラハム中尉が差し出し、それを受け取ってかぶり直す。
「しかし、これではっきりと分かったな。あのレールガン、威力はともかく、動いている目標への攻撃には全然向かない、とな」
「はい、艦長の仰る通りかと。これだけ図体のでかいカノンシードを2回外すんですからね」
いくつかのモニターが死んでいたが、カノンシードは未だ健在だった。二度目の攻撃で艦首甲板が捲れ上がり、スキージャンプ台のようになっているだけでなく、海面に着水したときの衝撃で多少は浸水しているようだが、まだ動く。まだ生きている。自分たちがこうして生き残っているように。
「さぁて、次はどう出ると思う、グラハム君?」
「ここまできたら、もう毒は食ってしまいましたからね。次は皿ですが、出来るならより高級な方から食べたいものです」

「何をやっている!早く仕留めないか!」
「うるさい、分かっている!!」
そう言いながら、キニアス・アップルルースは舌打ちを繰り返していた。どいつもこいつも、自分の邪魔をする。そもそも、この画期的な兵器をもたらしたのはこの自分なのに、さも「自分の国の不始末は自分でつけろ」とばかり送り出され、目標のカノンシードはADLERの照準をかいくぐって沈まず、未だに回避行動を取り続ける。次の支配者たる、自分の意志に逆らうかのように――!おまけに、早く当てろとは何事だ!そうだ、オーシアにいた頃からいつもそうだ。下賎な連中が、自分の上に立ち邪魔をしてきた。だから、軍隊に入ったのに、軍隊でもそれの繰り返しだった。オーシアを再生し、オーシアに君臨するべきは、このキニアス・アップルルースであるはずなのに!彼はぎらついた瞳でディスプレイに投影されている射撃照準スコープを睨みつけた。オーシア海軍の空母カノンシード――自分たちの所在を察知し、恐らくは9103の一派であろう不愉快な船。激情のまま、アップルルースはトリガーを引いた。反応なし。何故だ。ADLER、お前までこの自分に逆らうのか!何度かトリガーを引いて、ようやく彼は表示されているコーションに気がついた。連射で高熱を帯びたバレルの冷却が充分でなかったのだ。改めて舌打ちしたアップルルースの耳に、場違いと思えるような警告音が響き渡ったのは、自動制御のスイッチを切断し、手動でレールガンを射出するよう、切り替えようとしたときだった。
「敵影2、急速接近中!!」
慌ててレーダーに目を落とすと、自分たちめがけ国籍不明の戦闘機が2機、急速に接近してきていた。ディスプレイ上の索敵反応も同じ。そして聞き覚えのある声が耳を打った。
「今度こそ逃さない……覚悟しろ、シュヴェルトライテ!!」
それは、アネカワの声。やはり、最後に立ちはだかるのは貴様か、アネカワ。大人しく9103でテストだけしていれば良かったものを、自分の攻撃を運良く避け、そして牙を剥くとは――!許せん。決して許さんぞ。お前はこの私が超えなければならない壁だ!アップルルースはレールガンを格納し、格闘戦モードに火器管制を切り替えた。そして通信を開く。
「来い、アネカワ!貴様をここで葬り、私はオーシアの英雄となるのだ。邪魔をするなぁぁっ!!」

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