決戦
長射程AAMのレーダーロックをかけつつ、僕は最大戦速で目標に接近しつつあった。通信は極度に混乱しているものの、カノンシードはまだ生き残っているらしい。だが、このまま奴を野放しにしていたら、いずれは致命的な損害を受けて沈没してしまうかもしれない。選択の余地は無かった。
「来い、アネカワ!貴様をここで葬り、私はオーシアの英雄となるのだ。邪魔をするなぁぁっ!!」
聞き覚えのある、というよりも忘れようの無い甲高い声は、キニアスのもの。そうか、カノンシードを攻撃していたのは、よりにもよっておまえか!スパーク寸前の理性を何とか押さえ込み、冷静にあろうと努める。敵は奴だけじゃない、頭に血が昇って周りが見えなくなったらおしまいだ――落ち着け!僕はHUDとレーダーを睨みつけた。ミサイルシーカーがHUDを滑り、そしてヘッドオンで突入してくる敵機を捕捉した。ロックオンを告げる電子音が鳴り響いたが、直後自らもロックされたことを告げる警報音がそれに代わった。長射程AAMを発射しつつ、僕は機体を降下させた。グレッグ中尉のドラグーン5もミサイルを発射、こちらは加速しながら機体をロールさせ、左翼側から回りこんでいく。数秒後、僕らは音速を超えた速さですれ違った。敵の放ったAAMは加速していく僕の機体を追いきれず、そのまま空に白い排気煙を引いて飛んでいく。回避行動を取っていなかったSu-47の1機がまともにAAMに突入し、敵機は真中から膨れ上がるようにして爆発、四散した。盛大にばらまかれた機体の破片が、炎と黒煙を引きながら落ちていく。ドラグーン5はそのまま垂直上昇し、失速反転、今度は降下して敵の1機にかぶっていく。
「ドラグーン1、三下は俺が預った!お前はあの化け物を仕留めろ、いいな!!」
そのドラグーン5の後方にもう一機のSu-47が肉薄していた。AAMを射出させると同時にエアブレーキを全開で開いたF/A-22は、まるで後方に弾き飛ばされたかのように見え、目前にいきなり迫ったSu-47は激突を避けるために旋回しながら通過する。放たれたAAMは直撃こそしなかったが、垂直尾翼付近で炸裂した爆発は翼を容赦なく引き裂き、主翼にも大穴を開けることに成功していた。翼をもがれた一機のキャノピーが跳ね上がり、パイロットが空を漂い始める。これで数は互角か。僕は友軍機を支援もせず飛行を続ける異形の戦闘機――ZOE-XX02に狙いを定めた。
「キニアス!聞こえているんだろう?今度こそ逃がさない。ここが、おまえの墓場だ!!」
「それはこっちの台詞だ、アネカワ。貴様ごときが私の行く手を阻むとは!だが、そんな時代遅れの機体で、この私を追い詰められると思ったか!」
いきなり機首の向きを変えた奴は、ヘッドオンで突入してきた。機関砲が放たれるのを緩旋回して回避し、こちらも機関砲を放つ。くるりと機体を一回転させてZOE-XX02の巨体がすれ違った。3発のエンジンの大推力のあげる咆哮が衝撃となって響き渡る。何て運動性だ。とてもYF-23Aより一回り以上大きな機体の為せる技じゃない。通り抜けていった敵は早くも反転体制に入り、レーダー照射を受ける警報音が鳴り響く。推力を上げて上昇しながらこちらもループ。警報音は依然鳴ったまま。身体にかかるGが骨を軋ませるのを耐えながら反転を果たし、再びヘッドオン。レーダーロックは向こうの方が早く、僕は舌打ちしながらバレルロールを決めて攻撃を逃れる。攻撃自体は単調だが、旋回性能と大推力に支えられた戦法には舌を巻かされた。
「アネカワ……何故だ。何故邪魔をする。今のオーシアをよく見てみろ。ハーリングの進めた融和政策の結果、軍人たちは牙を抜かれ、不遜にも企業だの大学だのと言った組織の連中が選ばれし者たちが判断すべき政策や経済にまで口を出すようになった。オーシアの覇権は失墜し、弱小国の言い分まで聞いて自らの利権を放棄するような国家は、言わば自殺をしたようなものだ。私はそんなオーシアを情けなく思いながら育ってきた。だが、ベルカの戦士たちはこの15年、虎視眈々と機会を伺いながら覇権を取り戻す為の戦いを続けていた!私は感動したよ。これこそ、国民の、戦士のあるべき姿なのだ、と。だから、私は彼らと手を組んだ。私が作るオーシアは、統一された目標に向けて全ての人々が戦うことの出来る理想国家だ!」
僕らは互いの後背を取り合い……というよりも、奴の追撃を僕が回避し、その後背を取ろうとして逃げられることを繰り返していた。どうやらあの機体、YF-23AよりもパイロットへのG負荷が少ないらしい。こっちはぎりぎり限界一杯だっていうのに――!
「だから、オーシアを破壊すると言うのか!?」
「そうだ!今のオーシアには、何の目標も無い!世界を手中にするという理想もなければ、統一された目標を支持する人間もな!だから、オーシアを一から作り直すために破壊する。この私とADLERがあれば、オーシアの大都市は全て破壊出来る。そこから生き残った人々こそ、私の臣民に相応しい、意志と生命力を持った者たちだ。生き残ろうともしない愚民が何人死のうと、それは無駄などではないのだからな!!」
後方からAAM!!急降下をさせつつ機体をロールさせ、タイミングを計って僕は上昇に転じた。こちらの制動を追尾しきれないAAMが緩やかな放物線を描いていくのを頭上に見下ろしながら反転した僕は、奴めがけて機関砲弾を浴びせた。数発が敵の機首に当たり火花を散らしたようだが、致命傷になどなっていない。すれ違いざま僕は反転をかけ、ようやく奴よりも先にその後背を取ることに成功した。ZOE-XX02の3基のバーニアが火を吐き、猛然と加速する。僕は一定の距離を保ちつつ、奴よりも短い旋回半径で追尾を続ける。それにしても、キニアスの奴、そんなことをずっと考えていやがったのか。僕は奴の吐き出す一つ一つの言葉に戦慄を覚えていた。時代遅れとも、差別的とも言える奴の考えは、ベルカに吹き込まれたものではなく、奴が長い間心の中に抱えつづけてきた「闇」なのだ。オーシアの覇権。選ばれた人間による統治。キニアスに限らず、ハーリング大統領を追い出して政権を奪った連中もまた、そんな幻想を信じてユークトバニアとの戦争という手段を選択したのか。冗談じゃない。冷静にあれ、という自分の理性のヒューズが飛んでいく。
「おまえの高説はよく分かったよ、キニアス。だがな、僕はお前がどんな理想を語ろうと、どんなお題目を唱えようとお前を信じないし、お前を許さない。人の信頼を裏切り、そんなくだらない子供じみた妄想のために、オーシアを破壊するだって?今のオーシアは間違いだから作り直すだって!?」
僕はスロットルを最大にして、旋回しながら逃げるキニアスの後背を完全に捕捉した。距離が近過ぎる!機銃モードを選択し、HUDの照準レティクルに敵の姿を捕捉する。
「おまえのような人間がいるから……おまえのような連中が戦争なんか始めたから、今オーシアは苦しんでいるんだろうが!!何が間違いだって!?間違っているのはお前の頭の中だ、キニアス!!お前のやろうとしていることは、昔の独裁者そのものじゃないか!!」
「独裁の何が悪い!国益の何たるかも知らぬ愚民によって動かされる政府に大義も正義も無い!あるのは腐りきった欲望に基づいた打算ばかりだ。そんな過ちは全て正されなければならない!選ばれた血統の人間によって支配された世界こそ、真の国益を掴み取るんだ!真の世直しが実現するんだ!!」
「戯言を!!仲間を、上官を、祖国を裏切ったおまえの行動こそが「打算」だろうが!!そんなおまえの世直しなど、誰も望みはしない!!何が国益だ。おまえの我侭をかなえる事がオーシアの国益か。おまえの嫌いな人間を抹殺することが国益?一つ教えてやる。オーシアの国益は、おまえみたいな姦賊を消し去ることだ!!」
「姦賊!?この私を姦賊だと!?オーシアの救世主たるこのキニアス・アップルルースに対して、今の言葉は万死に値するぞ!!」
「うるさい!!もうその口を噤め、チキンめ!!」
トリガーを引き、僕は機関砲弾を浴びせた。至近距離からの攻撃は程なくADLERの3番エンジンのカバーに命中し、穴を穿っていく。火花が何度も散った後弾けとんだカバーの下から黒煙が吹き出し、急降下した奴の機体が黒い煙の柱を空に引いていく。その煙が唐突に止まったのは、エンジンを切ったからだろう。それでも、猛スピードで僕の追撃を逃れていくのは、恐るべき機体性能と言って良かった。
「くそ、この程度の損害で、落ちる私ではないわっ!!」
大きくループを描きながら、奴の機体がヘッドオンしようと機首を傾けていく。僕もまたヘッドオンで今度こそ仕留めようと、レーダーロックをかけていく。やがて互いにループの頂点に達した僕は、HUDの中に奴の機体を捉えようとした。
「ドラグーン1、駄目だ、回避しろ!!」
グレッグ中尉の声と、僕が操縦桿を引いて機体を跳ね上げたのとどっちが早かったろうか。直後、ZOE-XX02の機首が光り、衝撃波と轟音が通り過ぎていった。とんでもない速度で打ち出された――レールガン弾頭は空間を切り裂くようにして降下し、そして眼下で弾け飛んだ。散弾弾頭の光が海面上で炸裂し、膨れ上がった光球が爆炎へと姿を変えていく。先ほど脱出したパイロットのパラシュートが、その炎の中に没して姿を消す。衝撃波が機体を打ち、跳ね上げたはずの機体をさらに数メートル上空へと叩き上げた。激しい衝撃が全身を襲い、苦痛にうめき声を上げる。視界がぼやけるのを首を振って耐え、操縦桿を握る力を強める。気絶したらそのときが最後。しかしキニアスの野郎、何てことをしやがる!僕は後方を振り返り、機体の状態を確かめた。エンジン、問題無し、主翼、問題無し、尾翼……大丈夫!あんなものをまともに喰らっていたら、今頃バラバラだったろう。奴はループ中にレールガンを取り出していたのだ。あのコクピットの下に隠された悪魔の兵器を――!
「何故だ、何故当たらない!!アネカワ、この悪魔めが、い、今殺してやるぞ。お、お前なんか私の手で引き裂いてやる!」
「このクソ野郎めが!!うちのエースが、てめぇみてぇなガキと同等だと思う方が間違いだ!!」
残りのSu-47を撃墜したグレッグ中尉が猛然とZOE-XX02に襲い掛かった。機関砲とAAMの猛襲を回避しようとしたキニアスの機体が跳ねるように旋回した。腹に抱えた安定翼が大きく開き、エアブレーキの役目を果たすと共に、機体の姿勢を制御していく。
「蝿がちょろちょろと、私の邪魔をするなぁぁぁぁぁ!!」
ZOE-XX02から発射された機関砲弾が、F/A-22の主翼と尾翼を撃ち抜いた。ぐるりと機体を翻して降下したドラグーン5をさらに追い詰めんとしたキニアスの真横が一瞬がら空きになった隙を僕は逃さなかった。コクピットがあるであろう機首を狙い、僕もまた機関砲弾の雨を浴びせていく。このチャンスを逃してなるものかっ!!僕は全弾を打ち尽くすつもりでトリガーを引き絞った。火花が機首の根元――レールガンを剥き出しにした嘴の根元を直撃し、20ミリの弾丸が穿つ穴が次々と弾けていく。そして異形の元凶とも言うべきレールガンにも数発が命中し、大口径のバレルに火花が散る。主翼の一部が吹き飛んで、一瞬バランスを失った機は煙を吐きながら旋回していく。コマ送りで減っていく残弾が200になったところで僕は指を放し、その後背にさらにへばりついた。HUDの照準レティクルには奴の姿がしっかりと捉えられていた。これで終わりだ!!完全に捕捉した敵の背中めがけて、僕は残りの残弾を全て叩き込んだ。
「おまえに殺された人たちの恨み、僕の目前で命を奪われたザウケン少尉の恨みを、その身に刻め!!キニアース!!」
鈍い衝撃が再び機体を襲う。アネカワから放たれた攻撃がエンジンを直撃していた。2番エンジンが引き千切られて吹き飛び、その衝撃でアップルルースはコクピットの壁やディスプレイに何度も叩きつけられていた。ディスプレイのいくつかが既に機能を停止し、機内には脱出を勧告する警報が鳴り響いていた。ただ、慣性の法則に従って加速を得た機体は、相変わらずのGを身体に与えて飛び続ける。そのGによって、傷口から血が吹き出し、アップルルースの驚愕は限界に達した。
「い、嫌だ、私は、私は死にたくないっ!誰か、誰かいないのか!!誰でもいい、私を支援しろ!グランダーコントロール、聞こえないのかっ!?」
応えるものはない。自分を支えるはずのグランダーからの通信は途絶したままだった。
「もう諦めろ、キニアス。助けは来ない。死にたくなければ、ベイルアウトしろ。そして法の裁きを受けるんだ」
「法の裁きだと!?オーシアを救う私が裁きを何故受けなければならないんだ!」
「……だから、おまえは独りなんだよ、キニアス。ローゼズ隊長は、おまえのような奴でも、いつかは気が付いてくれるだろう、と信じて手を差し伸ばしていたのに、おまえはその手を振り払った。挙句、守ろうとしてくれた大尉を見殺しにするだけでなく、自らの逃亡すら正当化してみせた。……そんなおまえだから、誰もおまえを信じないんだよ。そんなことも分からないのか?」
アネカワの声は、本当に沈痛そうだった。どうして、私をそんなに哀れむ?どうしてっ!?警報音に、別の鋭い警報音が響き渡っていることを彼が認識したのは、1番エンジンまで出力低下を告げた時だった。アネカワめが!!こうなったら、お前だけは道連れにしてやる。何が何でも、一緒に地獄へと引きずり込んでやる。自分の立つべき正当性の全てを否定され、全てに見捨てられて正気を失ったその目には、攻撃を受けて異常をきたしたレールガンが発する警告すら映らなかった。アネカワの攻撃によって直撃を受けたジェネレーターは既に臨界を突破した状態で稼動し、想定を超えた高温によって機体は内部から溶かされつつあったのだ。機体を反転させようとした彼は、視界が突然前のめりになったことに気がついた。それは暴走したジェネレーターが、コクピットの付け根までを高熱で焼き、構造材をひしゃげさせた結果だった。嘴が閉じるように砲口を塞いでいることにすら、アップルルースは気が付かなかった。狂気に囚われた目が睨むディスプレイには、アネカワともう一機の蝿の姿が捉えられていた。これだ。この瞬間を私は待っていたのだ。最後まで立ちはだかった、仇敵をこの手で撃ち砕き、世界を手中にする、この瞬間を。HUDの中にはアネカワのYF-23Aがしっかりと捉えられていた。
「地獄に道連れだ、アネカワぁぁぁぁっ!!私こそが英雄だ!!」
レールガンの発射トリガーを引いた刹那、膨大な閃光がアップルルースの視界を占領した。彼は勝利を確信し、笑いすら浮かべていた。しかしディスプレイが全て真っ白に彩られ、異常に気が付いた瞬間、コクピットのディスプレイが彼自身の体から吹き出した血で彩られた。それもまた一瞬にして、ZOE-XX02の機体は光球へと姿を変え、雲を吹き飛ばしながら炸裂した。砲口を塞がれたうえ、暴走したジェネレーターがついに限界を超えて爆発したのだ。はじき出された弾頭は、射撃手の乗るコクピットに秒速数キロの速度で衝突してそのまま力を解放した。恐らくは自分の死すら認識できないうちに、キニアス・アップルルースはこの世界から蒸発した。光の奔流が消えたとき、彼と彼の操っていたZOE-XX02は僅かに燃え残った黒焦げの小さな破片を撒き散らして、大空に散ったのだった。
「敵戦闘機、全機消滅!ドラグーン1、ドラグーン5は健在、我が軍の勝利です!!」
レーダー士がそう叫ぶと、CICだけでなく艦内の至る所から歓声が上がり始めた。アルウォールは軍帽を取り、額の汗を拭った。どうやら、毒を食っただけで何とかなったらしい。至近距離での散弾弾頭の炸裂を二度も受けながらも、カノンシードは健在だった。もっとも、対空ファランクスや対空SAMは最早使い物にならないほど損傷し、艦橋のレーダーも爆風で幾つかが破損し、CICのレーダーにも支障が出ていた。何より、航空甲板は機首から捲れあがったまま戻らず、さらにその甲板が風の抵抗を受けて航行速度を低下させる、という有様だった。もちろん戦闘機の着艦も離艦も出来ない状態であることは言うまでもない。それでも乗組員の大半が生き残ったこの海戦は、カノンシードの勝利だろう、とアルウォールは思った。CICを見回した彼は、通信機の上に頭をつけたまま突っ伏しているスマキア伍長に気が付いた。隣に座るレーダー士が脈を確かめ、「OK」とサインを寄越す。
「ずっと腕の痛みを耐えたままでしたから、緊張の糸が切れてしまったんでしょう。医務室へ運んでやらねばなりませんな」
グラハム中尉が頬を撫でながら言った。彼はさらにもう一度転倒し、今度は頬に青あざを作ってしまっていた。他の乗組員たちも多かれ少なかれ似たような状態だろう。船体と同様に、乗組員たちも満身創痍であったが、不思議と疲れは感じなかった。囮作戦は大成功と言って良く、カノンシードが実際に損害を受けたことで、例え海軍が主戦派の巣窟であったとしても無視することは二度と出来ないし、闇に葬り去る真似も出来なくなった。仮に首都から主戦派が駆逐されていたなら、グランダー・インダストリーとベルカに対して戦端を開くに充分な証拠も得た。その結果、ドラグーン戦隊を勝手に指揮し、運用してきた罪を問われることになるだろうが、それはまた別の事件の話だ。少なくとも、この無意味な戦争が終わるまで自分たちは引くことは出来ないのであるし、また引く必要も無い。オーシアとユークトバニアの戦争の裏で蠢いていた真の敵を表舞台に引きずり出す絶好の機会なのだから。
「とりあえず、軍医長を呼んで来てくれ、グラハム君。無理に動かすよりも、今は少しでも休ませておいてやろう。……彼女も、すっかりこの艦のクルーとして馴染んだし、成長したものだ」
「全く同感です。いやしかし……艦長の指揮には改めて敬服致しました。自分の未熟さを思い知らされたような気がしますよ」
「バカなことを言うもんじゃない。君たちなら、すぐに私など越えていくさ。それに大体、私はもうそろそろ引退したいんだ。最後の花をここで掴むことが出来たような気がする。カノンシードが生き残り、今私たちがここにあること。それが、私の、カノンシード隊の勝利だ……さて、そろそろ我々の家に帰ろうじゃないか。空の守りは、竜騎兵の英雄たちに任せてね。針路変更!エルアノに帰還するぞ!!」
再び大歓声。これだけ撃たれ続けても、カノンシードの戦意もまた健在だった。オーシアの空は平穏を取り戻し、夕暮れの光が淡く空と海を照らし出す中、満身創痍のカノンシードとレッド・アイは母港エルアノへ向けて海原を凱旋していった。