初陣
攻略メモ
先のセントヒューレット軍港での脱出作戦で功績を挙げたサンド島分遣隊を目障りな存在と認定したユーク軍は、サンド島を急襲。敵戦闘機部隊の猛攻の中、スクランブル発進するというミッション。序盤に展開している戦闘機郡はF-4EとTND-GR1。一定数を撃破すると本命であるB-1Bを中核とした爆撃部隊が登場するので、こいつらは基地上空に到達する前に撃墜しなければならない。また、ミッション中「アーチゃー」のコールサインで呼ばれるようになるグリムがスクランブル発進する。彼が無事離陸できるよう、極力基地上空の制空権は確保しよう。ミッション後半からはF-16C、Mig-29Aが登場するため自分ひとりでは厳しいと感じたら作戦行動の「攻撃」を選択して僚機にも攻撃をどんどんさせていこう。数派続くB-1B部隊を撃ち落とせばミッションクリア。
登場敵機:F-4E、TND-GR1、F-16C、Mig-29A、B-1B、F-4G MINDRIPPER
今やユークトバニアとの戦争の最前線になってしまったサンド島。相次ぐ戦闘で疲れた身体をベットに投げ出してはみたものの、一向に寝る気にもなれなかった。たった一日でこれまでの数十倍の命を奪ったという事実に、麻痺しかけていた恐怖が戻ってくる。いや、戻りつつはあったものの、その状況下を当然と思い始めている自分がいることに気が付いて、余計に恐怖を感じていた。しかし、戦争の死神はこれだけ苦しんでいる自分をまだ許してはくれないようだった。
突然の閃光と轟音、そして衝撃に慌てて部屋の外に飛び出す。基地内には耳障りなサイレンの音が鳴り響き、敵の空襲を告げ始めている。どうやら、セントヒューレットでの敵さんの「戦功」を台無しにした俺たちに対し、敵さんも本腰を入れて攻撃する気になったということなのだろう。俺はそのまま自分の機体が格納されているハンガーまで走り出した。既に上空には敵戦闘機が展開しているようで、エンジンの奏でる轟音が室内にも響き渡っていた。
全力疾走でハンガーにたどり着き、パイロットスーツを慌しく身につけ、機体へ駆け出す。この状況下で、整備班は機体の緊急発進の準備を既に始めていた。馴染みの整備兵に例を言って、一気にタラップを駆け上がりコクピットに滑り込む。先頭はチョッパーだが、外では既に爆弾が投下され炸裂する光と炎と轟音、そして機銃掃射の曳光弾の射線が滑走路をなぶり始めていた。
「ブレイズ、チェックOKだ。いつでも飛び立てるぞ」
「ありがとう!早く退避壕へ!!」
親指を立て、キャノピーを閉める。整備兵たちが一目散に機体から離れていく。
「うわっち!!」
チョッパーの鼻先を掠めて機銃掃射が走り、ハンガー外に停めてあったF-5Eの予備機や車輌を粉砕する。その破片を浴びたようだが、幸い機体には何の異常もないようだ。
「くそ、タービンの回転が上がらない。早くしろ、早く、そうだもっと早く!!」
「ウォードッグ、敵の第一波が丁度離れた。この機会を逃すな!!」
管制の言うとおり、抱えていた爆弾を落とし尽くしたのか、戦闘機隊の攻撃が止んでいた。3機ともハンガーから滑り出し、一気にタクシーウェイから加速していく。
「ブレイズ、こういうときはスピードが第一だ。一気に上がれ!」
スロットルをMAXに叩き込み、アフターバーナー全開で急加速する。速度計が目まぐるしく動いていき、身体がシートに張り付けられる。Gで少し引きにくくなった操縦桿を引き、機体を地面の束縛から解き放つ。多少アクロバット飛行のようだが、そのまま操縦桿を引き垂直上昇に切り替える。一気に3,000フィートまで駆け上がり、機体を反転させると、レーダー正面に光点。全く絶妙のタイミングであった。
「ブレイズ、交戦!」
まっすぐ突っ込んできたF-4Eの機銃掃射をロールで回避しながら、AAMを発射する。すれ違いざま、コクピットに直撃を被った敵機はそのまま爆発四散し、僚機の機体にもダメージを与えていた。薄煙を引きながらまだ基地目指して飛び続けるもう一機に今度は後ろからバルカン砲の接吻をお見舞いする。尾翼をズタズタに引き裂かれた敵機はコントロールを失い、高度を下げていった。
「ブレイズ、敵の中に爆撃機が混じっている。本命はそっちよ」
「敵さん、この基地自体を破壊するつもりで来たか!それくらいはオイラでも分かるぜ」
戦闘機の護衛を受けながら突入してくるのはB-1B。護衛機の攻撃を潜り抜け、背後にへばりついた俺はバルカン砲のトリガーを引く。さすがに戦闘機とは比べものにならない頑丈さだが、集中砲火を浴びたエンジンが爆発を起こし、獲物はきりもみ状態に陥った後、空中爆発した。爆弾ごと吹き飛んだせいか、一際大きな花火が基地を照らす。もう一方のB-1Bは、エッジが追撃をかけ、既にミサイルの餌食としていた。
「こちらウォードック・リーダー、フォードだ。サンド島何かあったのか?」
「おっと、どうやら俺たちの上に乗っかる中佐殿がいらっしゃったみたいだな」
俺たちの部隊は分遣隊。それ故、隊長不在となれば本土から士官が派遣されるのは当たり前だ。だがこの状況下、通信を聞いていなかったわけではなかろうに何たる気楽さだ。
「本機が到着するまでに敵部隊の排除は完了するんだろうな?」
「現在も敵部隊と交戦中。最善を尽くします」
何たる言い草だ!思わず罵声を浴びせたくなるのをこらえて、それだけを言う。八つ当たりというわけではないが、たまたま正面に飛び出た敵機にAAMをお見舞いし、その羽根を弾き飛ばす。ベイルアウトしたパイロットが、海面にゆらゆらと降下していくのを横目に見ながら、基地上空を見ると、ハンガーからF-5Eが一機、離陸態勢に入ろうとしていた。
「おい誰だそこにいるのは!今どういう状態だか分かっているのか!?」
管制も気が付いた。F-5Eはタクシーウェイを滑走路目指して移動を開始する。
「こちらハンス・グリムです。基地上空の支援に参加します」
「馬鹿!おまえまだ補修訓練受けていないだろ!他の搭乗員は?」
「誰もいませんでした。」
「かあーっ、まじかよ畜生。今からじゃ逃げるのも間に合わねぇんだぞ!」
チョッパーのことだから、ヘルメットが無ければ髪の毛をかきむしっているに違いない。
「いいわグリム、護ってあげる。気をつけてね」
「ありがとうございます!支援よろしく頼みます!」
「コントロールよりウォードッグ、新手だ!方位090、F-16Cが4機侵入!」
レーダーにもダイヤモンド編隊を組んだ敵機の姿が映っている。高度を次第に下げながら滑走路を目指しているのは明らかだった。
「ブービー、グリムの奴頼りないけれどもどうするんだ?」
「言うまでも無いだろう、空に上がるまで絶対に守り抜くんだ。行くぞ!!」
「おおっし!そうこなくちゃな!!」
俺たちは上空から、攻撃態勢に入ったF-16編隊にかぶっていった。
「グリム、F-5E、離陸します!!」
離陸準備を終えた彼の機体が、滑走路を加速する。アフターバーナーの炎が上空からもはっきり見える。地上にいるうちに撃墜しようと追いすがる敵を叩き落し、彼の離陸を支援する。やがて彼の機体も陸を離れ、上昇を開始する。
「そうだ、もっと上がれ、そうだもっと早く!!」
グリムは機体を急上昇させることもなく、基本どおりに高度を上げていく。もっとも、この時点であらかた敵機は片付けてしまっていたが。
上空で編隊を組みなおし、再び敵襲に備えていると、またも場違いな通信が入ってきた。
「コントロール。こちらフォードだ。燃料が無い。着陸許可を求める」
「フォード、こっちは空襲中だ。もう少し待ってくれ!」
「ウォードッグ、本機の着陸を援護せよ。あらゆる犠牲を払ってもだ。」
これにはチョッパーが切れた。
「何を考えていやがる!今どういう状態かも分からないのか!!燃料が無いって?戦闘区域から逃げ回っていたからだろうが!!」
「ダヴェンポート少尉だったな」
「そうであります。」
「それから今指揮を取っている貴様もだ。上官侮辱のツケは払ってもらうぞ」
「失礼ながら、中佐。隊長職に就かれた以上、緊急時には指揮を執るのが隊長の務めです。先ほどまでは隊長からの指示もとくになかったため、自分がその任を果たしておりました。改めて指示をお願い致します」
正直こんな石頭に指揮を執られるのはご免であった。そして、おまえは隊長失格だと暗に言った俺の言葉は、見事フォードを激怒させることに成功した。
「貴様ら、上官侮辱罪で譴責にしてや……」
フォードの怒声が途中でやみ、断末魔の悲鳴もすぐに消えた。AAMの直撃を被った奴の機体は炎に包まれながら墜落していく。
「てめぇのケツも確認できないような人間に指揮なんぞ執られてたまるかよ」
「チョッパー、もうやめておけ。二階級特進で、准将殿だからな」
「二人ともいい加減にして、またB-1B接近。でもこの編隊以外に機影なし。これが恐らく最後の一波よ」
限りなく続きそうだった俺とチョッパーの愚痴りあいをクールなナガセの声が現実に引き戻す。
「アーチャーは俺の後ろに。エッジとチョッパーは護衛機を頼む」
「エッジ、了解。いくわよチョッパー!」
2機が急旋回し、護衛戦闘機と交戦を開始する。俺はグリムを前に出し、B-1Bのケツにつける。
「グリム、初陣の初手柄だ。行け!」
「はい、うぉぉぉぉぉ!」
グリム機からAAMの排気煙が伸びる。放たれた矢はB-1Bの主翼を吹き飛ばし、機体を衝撃で弾き飛ばす。横に回転しながら落ちていく敵を横目に、俺は最後の一機に迫った。
「メィディメィディ!護衛機、何をやっているんだ!後背の敵を振り切れない!至急援護せよ!!」
むろん、逃す暇も与えなかったことは言うまでも無かった。
基地の防衛に成功した俺たちは、グリムという新たなメンバーを迎え新たなチームを組むこととなった。司令官殿はそれでも本土の士官を配属したかったようだが、生半可なパイロットでは役に立たないという事実に直面し、ハミルトン大尉が俺たちを支持してくれたこともあって渋々引き下がったようだ。だが、同時にこれからは自分を守るだけではなく、メンバーたちの命も預る身になったということでもあった。
ユークトバニアの相次ぐ攻撃に、ようやくオーシア軍も重い腰を上げ、部隊の再編が開始された。部隊の再編が意味することはユークとの全面対決になるということでもある。その最前線に今ある俺たちだった。