見えざる姿
攻略メモ
先の戦いにより拠点を失ったユーク軍を追撃するミッション。輸送機を中心とする撤退部隊を追撃し、撃破することが目標となる。敵の輸送機がマップ西端に到達するとミッション失敗。注意が必要なのは、E-767が健在である限りジャミングがかかっていてデコイと本物の判別がつかない点。ユーク軍のジャミングは輸送機の「映像」をあたかも実在するかのように飛行させるものであるため、これに攻撃をかけてもかわされるだけで弾の無駄となる。敵航空機部隊と接触したらまずは上空に上がり、E-767から撃破していこう。E-767を撃破すると本物の位置が明らかになるので、所詮は動きの鈍い輸送機。遠慮なく撃破していけばよい。ただ、護衛戦闘機群はそれなりに強い。F-14AやF-15Cになるので機動性も相当なものだ。きちんと真後ろを取るか、同高度正面のすれ違いざまで確実に落としていかないと苦戦を強いられることになるだろう。
ミッション途中、8492部隊によるユーク民間施設への攻撃が行われてしまう。同時刻この空域にいたのはウォードッグ隊のみであったため、ブレイズたちは首都の司令本部に出頭させられる羽目になる。
登場敵機:F-14A、F-15C、C-5、C-130、E-767、EA-6B DUNE
バストーク半島の拠点を抑えられたため、ユークトバニア軍は撤退を余儀なくされていた。半島付近の拠点から、次々と部隊が首都方面に向けて撤退している。俺たちもまた、航空部隊を追撃し少しでもその戦力を削ぎ落とすべく休む間もなく前線に投入されていた。
出撃した時間帯から、ユーク本土侵攻部隊のハウエル司令官による演説が始まっている。オーシア軍が単なる侵略者ではなく、世界に平和をもたらすため敢えてユーク本土に侵攻したこと、ユークの民間人には決して手を出さないこと、戦争の全ての責任はユーク政府にあること、それを聞いて真に受ける人間は恐らく百人に一人といないような空虚な演説が延々と続いている。もともと後方での勤務が長く、どちらかと言えば政治家に近いあの将軍が司令官にあるとは、少々意外であった。それ以上聞いているのは耐えがたい苦痛だったので、俺はさっさとチャンネルを切ってしまった。
先日のフットプリント作戦で少しは機嫌が直ったのか、チョッパーは鼻歌を口ずさんでいる。ノリのいいこのメロディは、昨日の夜チョッパーの部屋から大音響で聞こえていたロックンロールだ。
「なあブレイズ、やっぱりあの曲はいいよな?」
「ああ、昨日おまえの部屋の前で聞かせてもらったよ。お願いだからボリュームをもう少し下げてかけてくれ」
「お、聞いてくれてたんだ。俺の啓蒙活動の賜物だな。同志が増えて嬉しいぜ!」
「司令官殿にステレオ取り上げられても知りませんよ」
「なに、そしたらグリム、おまえのウォークマンを失敬するだけさ」
「隊長、前方に機影発見。輸送部隊の最後尾のようです」
チョッパーとアーチャーはその後もやりあっていたが、レーダーを見ると確かに輸送機部隊の機影が写っていた。しかし、この数は一体?
「どういうこと?まさかこの地域全部の航空隊が退却しているというの?」
俺たちの目前には、信じられないほどの数の輸送機と護衛機が飛行していた。最後尾でこんなにいるということは、全体では一体どれほどの部隊がいるというのだろう。
「こんなにいるのを、4機で落とすんですか?」
「仕方ねぇだろ、行くぞグリム。チョッパー交戦!」
気の早いチョッパーは早くも輸送機めがけてAAMを発射した。後方からの攻撃に気が付いたのか、輸送機は旋回をはじめ、そして驚いたことにすんでのところでAAMを回避した。輸送機らしからぬ機動に正直俺は驚かされていた。だが、妙な違和感が胃の辺りにあった。それはこの不自然なまでに多い敵機の数だ。グリムもナガセもAAMを発射していたが、そのどれもが回避され空しく排気煙だけが空に伸びていく。
「隊長、これってもしかして……?」
グリムの機械好きは部隊内でも知られている。簡単な修理なら自分でもこなせてしまう腕前だ。ことに電子工学に関しては、独学にしてはたいしたもんだ、とおやじさんのお墨付きまで出ている。
「お、今日は妙に冴えていらっしゃるようじゃないの、若者よ。で、何がどうなっているんだい?オイラにも分かるように教えてくれ」
「隊長、これデコイです!今我々が相手にしているのは、ホノグラムですよ。開発が進められているとは聞いていましたけれども、まさか実戦配備されているなんて。」
グリムの説明はこうだった。E-767などの電子戦機でレーダーの機能をある程度奪い、そのうえで各機に設置されたホノグラム再生機で自分自身のコピー映像を周辺に映し出し、その映像をE-767でコントロールするという視界を奪うジャミングではなく、相手の混乱を誘うジャミング。それがこの正体だった。ならば、話は早い。コントロールを握っているE-767を叩けば良い。
「各機、電子戦機の数はそれほど多くないはずだ。あまり時間は無い。散開するぞ」
「エッジ了解、自由戦闘に入ります」
「チョッパー了解、しかし敵さんも色々考えるねぇ」
散開した俺たちは、E-767が待機しているであろう高高度に駆け上がった。なるほど、この高さから見れば状況は一目瞭然だ。俺たちは敵の掌の上に上がりかけていたというわけだ。高度17,000フィートで、お目当てのE-767が悠然と飛行しているのを発見した。
「!馬鹿な、我々の新型ジャミングを見破ったというのか?」
慌てて回避行動をとり始めたが、もともとが旅客機ベースのE-767では、鈍重さが際立っていた。両翼のエンジンを吹き飛ばし、機体上部のレドームを蜂の巣にして次の獲物を探す。同高度、方位300にいたもう一機にはAAMをお見舞いし、高高度の花火を咲かせる。機体中央からへし折れた機体が慣性の法則にしたがって地表へと落ちていく。タネさえ分かってしまえば後は簡単だった。E-767を壊滅させた俺たちは、ようやく本来の数になった航空部隊に襲い掛かっていった。
もともと護衛戦闘機が少なく、いや、新型ジャミングに頼り切っての撤退戦故に輸送機の数の割に護衛が少なかったこともあって、俺たちはほとんどの部隊を壊滅させ、最前方の輸送機隊を残すのみとなっていた。
「ふぃー、後はあれだけだな。今日はのんびりと眠ることが出来そうだぜ」
「こちら8492リーダー。作戦を開始するぞ」
チョッパーの会話に割り込むように、別の通信が入った。そして再びレーダーに異常が発生した。新たなジャミングが開始されたのだ。しかし、E-767は既に壊滅させたはず。
「エッジ、そこから何か見えるか?周辺に友軍機はいないはずだが?」
だが、ジャミングの影響か返答は無かった。ガリガリ、という雑音だけが聞こえてくる。
「こ……サンダーヘ……同空域を飛行中の……ECCM…中止…よ」
管制機の通信はまだそれでも聞こえているが、このジャミングは友軍が放っているようだった。しかも、聞き覚えのある部隊名を俺は聞いていた。8492、8492……?そうだ、大統領を救出に来た連中が、今何故ここに?しかし、俺の視界には彼らの姿は全く捉えられなかった。もちろん、レーダー上にも。
唐突にジャミングが止み、通信機能が復活する。
「こちら工科大学!大変だ、大学がオーシア軍機の攻撃を受けた。至急救急車を送ってくれ!」
「オーシアの野郎、何だって民間施設にバルカン砲を撃ちやがるんだ!ふざけやがって!!」
「誰か、誰か早く来てくれ!教室が、みんなが、うわああああっ!!」
聞こえてきたのは、恐怖と絶望に満ちた悲鳴と怒声。
「お、おい、一体何があったんだブービー?」
「こちらサンダーヘッド、ウォー・ドッグ、念のために確認しておくが民間施設への攻撃を行ったのか?」
「ブレイズよりサンダーヘッド、こちらは今の高度にいたんだ。地上施設の攻撃が不可能であったことくらい、そっちでトレースしていたと思うが?」
「サンダーヘッド了解、こちらでも確認していた。だが、ならばどの部隊が攻撃したというのだろう。こちらのレーダーでは君らの姿しか捉えていないのだ」
「いい加減にしろよ、ストーンヘッド。俺たちが何だって民間施設を攻撃しなくちゃならないんだ?」
下からの通信を聞いたのだろう。輸送機の支援に付いていた戦闘機がこちらに反転してきた。
「オーシアの悪魔どもめ、俺たちだけじゃあきたらず民間人の命まで必要か!?」
「待って、大学を攻撃したのは私たちじゃない!聞こえているなら攻撃を止めて!」
だが既に他の部隊を撃墜してきた俺たちの声に耳を貸す人間はいなかった。怒りに任せて攻撃を繰り返す敵機を、俺たちはやりきりない気持ちで撃墜した。
「くそっ、俺は必ず戻ってくるぞ。必ず戻って、お前らオーシアに復讐してやる!!」
脱出したパイロットの叫びがヘッドホンに響く。俺たちじゃないんだ。だが、今誰がその叫びに耳を貸してくれるのだろう?
「ちっ、戦争の汚ねぇ面だ。誰がやっても結局こうなっちまうんだ!!」
チョッパーが最後の一機を叩き落し、周辺で飛んでいるのは俺たちとサンダーヘッドだけになっていた。作戦的には成功だが、下でこの光景を見たユークの人々は、大学を攻撃し味方の航空部隊を壊滅させた「悪魔」として俺たちを認識したに違いない。しかも、民間人には手を出さない、と演説したばかりでの暴挙。俺たちの手によるものではないにしても、ユーク人の憎悪を煽ったことは間違いない。
「とりあえず帰投しよう。今ここにいても情報が集まるとは思えない」
「エッジ了解、でも何てことなの……」
「ナガセ、おまえはやっていないんだ。オイラたちが悩んでも仕方無いぜ。……元気出せ」
これほどまで気の重い帰投は久しぶりであった。
サンド島に着陸した俺たちを迎えたのはハミルトン大尉だった。既に基地には作戦行動中に発生した民間施設攻撃の話が伝わっているようだった。
「帰ってきてすぐで申し訳ないが、君たちにはこれからオーレッドに飛んでもらうことになった」
ハミルトン大尉は両手を広げて首を振りながらそう告げた。
「司令官殿にも、中央司令部にも伝えたんだがね。君たちは上空にいて攻撃を行えたはずがない。別の部隊が大学を攻撃したことは間違いないとね。だが、司令官殿は中央の意向を防ぎきれなかった。中央司令部からの命令を伝える。直ちに首都オーレッドに向かい、査問委員会に出席せよ」
「ちょっと待ってください!まだ中央司令部にはサンダーヘッドの記録データも届いていないはず。なのに我々が査問とはどういうことですか!?それとも司令官殿だけでなく、大尉も我々が攻撃を行ったとお考えですか?」
「ブレイズ、私は君たちが高高度にいて地上施設への攻撃を行えなかったことは知っている。だが、同時にあの空域で確認された機影は君らだけであることも事実なのだ。君らが聞いたという8492という部隊の行動を委員会で明かすしかない。……こちらでも出来る限りのことはする。」
これ以上に無い屈辱。しかも査問委員会ともなれば軍事法廷とは異なり弁護士すら付けられない。そもそも査問委員会自体が明確に定められた制度ではなく、これまでの輝かしい実績といえば主戦派と目される上層部が、その意向に従わなかった将官を一方的に処分した、というくらいのものなのだ。行く前から、目眩がしそうになった。