代償の街


攻略メモ
軍上層部のコイントスでミッションが決められるという腹立たしい現実を味わうミッション(苦笑)。バーナ学園都市で発生した神経性ガスによる大規模テロ鎮圧の為、上空から中和剤を散布するミッション。機体選択は出来ず、軍司令部が手配したMir-2000に中和剤を搭載して学園都市に赴くことに。敵戦闘機などは登場しないのだが、攻撃対象となるガス発生地点がレーダーに出力されないため目視での攻撃となる。作成区域は市街地であるため、ビルなどの障害物も多く低空での行動は危険である。多少時間はかかるかもしれないが、目標点を定めたら一旦上昇し、急降下爆撃の要領で中和剤を投下していくのがベター。
ガス発生点をあらかた片付けると、逃走するテロリストを追撃するミッション。攻撃の必要は無いので、旋回を繰り返しながら追い詰めていこう。通信でどっち方面に向かうかがある程度把握できる。そして、その通信から敵テロリストのお出迎えの攻撃ヘリ出現を確認できる。あいにくAAMは積んでいないが、ヘリの動きはそれほど早くないので、バルカン砲でしっかりと狙っていこう。数派に分かれて出現するAH-64を全て撃墜すればミッションクリア。
登場敵機:AH-64

オーレッドを飛び立った俺たちが向かったのは、オーシア国立大学を中心に様々な大学研究所や民間の研究施設が集められ、数多くの学生達が生活するバーナ学園都市。紅葉のシーズンともなれば、学園都市内に植えられた様々な広葉樹が色づき、観光都市としても有名な街だ。だが、今その学園都市は全域に渡って大パニックになっている。市内に潜入した工作員は、よりにもよって市街の各所で神経性有毒ガスの散布を開始したのだ。

「トホホホホ、オイラの出撃がコイントスで決められるなんて、馬鹿にしている馬鹿にしている!」
「もういいじゃないですか。おかげであんな辛気臭いところから解放されたんですから」
「お二人さん、これから向かうところは大変な状況よ。気を引き締めて!」
「へいへい、撃墜王スリー了解ってな。あーっ、石頭のいない空は気持ち良いぜ!」
「……こちら首都圏防空コントロール。ウォー・ドッグ、作戦目標は確認できているだろうか?」
俺たちの前方には、もう学園都市が見えてきている。そして、その街から狼煙のようにあがるガスの煙さえも。あの色は、まさかマスタードガスを使用したというのか!?
「こちらバーナ市警、パト7号、くそっ、みんなパニックになっているぞ。早く安全地域に避難させないと。早く応援を寄越せ!!」
「パト7号、今空軍の凄腕が中和剤抱えて向かってくれている。何とか市民を避難させてやってくれ」
バーナ市警の警察通信が聞こえてきた。この混乱にあって、警察や消防は市民を安全地帯に避難させる為自らも危険地帯に立ちながら誘導をしている。少しでも被害を少なくしなければ!
「ブレイズから各機、今はとにかく時間が惜しい。分散してガスの発生ポイントを叩いていこう。少しでも中和が進めば、市民の避難路が確保できるはずだ。行くぞ!」
中和剤ポッドを装備できる機体がこれしかなかったとはいえ、Mir-2000の動きはいつもの機体に比べると鈍重に感じる。だがやるしかない。俺はビルの合間を潜り抜けながら、ガス発生ポイントに中和剤をばらまいていった。足元では、逃げ惑う人々が宙を切り裂くように飛んできた戦闘機を見て驚いている。
「へい、上空の戦闘機、聞こえているかい?こっちは今市民の誘導をやっているエクレール巡査部長だ。中和作業に感謝する。これで避難がしやすくなったぞ!」
「巡査部長、とにかく皆を早く安全なところに!」
「任せろ!お前さん方だけに仕事を押し付けるわけにはいかんからなぁ」
俺たちは市内各所に立ち込めるガスの煙めがけて中和剤を次々と散布していった。ビルの密集地には上空から垂直降下で中和剤を散布し、煙の続く幹線道路沿いは低空飛行で次々と散布を繰り返す。
「なあブービー、これってやっぱり、この間のお返しなんだろうなぁ」
「そんな!こんな報復をしたって、余計に憎しみを生むだけなのに。人間てなんて愚かなの!」
「ナガセ、そうカリカリしなさんな。ユークの人たちにしてみれば、俺たち自体がそういう存在になっちまったんだからよぉ」
そうこうしている間に俺たちの攻撃(?)は功を奏し、ほとんどのガス発生ポイントで煙が止んでいた。市民の避難も成功したようで、結果的に相当の人数が脱出に成功したようだ。同時に市外からもかなりの台数の救急車が到着し、市内の公園や学校のグランドなど、土地を確保できる場所では早くも治療活動などが開始されている。どうやら、俺たちは間に合ったらしい。

「パト7号より、本部、テロリストと化学兵器を搭載していると見られるトレーラーを発見!軍管制、そっちでこいつの行き先とか確認できないか?」
先ほどのパトからの通信が入ったのは、俺たちが編隊を組みなおして帰投しようとしていたときだった。
「こちらコントロール、すまないが今アピート国際空港でも大規模なテロが発生していて確認が取れない!今そちらに派遣している航空部隊に上空からの支援を依頼してくれないか?」
「おいおい、人使いの荒いことだぜ。だがアピート空港にまで攻撃が来ているってのか?これじゃあユークの皆さん、片道切符の特攻じゃねえかよ」
「そして多分、逃走しているトレーラーの連中も同じようなものかもしれないな」
「ブービーもそう思うか。はぁぁぁ、何だかやってられなくなってきたぞ、オイラは」
再び高度を下げた俺たちは、学園東通りを猛スピードで疾走する大型トレーラーを発見した。その後ろを、天井に「P7」と書かれたパトカーが追撃している。避難が完了している市内では他に動いている車が無いため、その二台の動きが非常に際立っていた。俺たちは無線のチャンネルを警察無線に合わせた。
「こちらオーシア空軍ウォー・ドッグ隊、トレーラーを追撃中のパトカー、これから上空支援に付きます。」
「おお!さっきの腕っこきの奴らだよな。有り難い!上からヤツの行く方向をしっかり見ていて欲しい。こっちは運転するので手一杯なんだ!」
「オイラはチョッパーだ、なあ、面倒くさいからさぁ、撃っちゃってもいいかい?」
「おいおい、こっちは向こうさんを逮捕したいし、そうしないと事件の真相が分からなくなってしまうだろ。流れ弾にも当たりたくないから勘弁してくれ」
「ちょっとでもダメ?」
「ダメ!!」
まるで子供の会話だ。ナガセが笑いをこらえている声が聞こえてくる。
「だってさ隊長、撃ったらダメなんだって」
「チョッパー、それくらいにしておけって。各機、あのトレーラーから目を離すな。行き先が分かれば封鎖線を張ることも出来る。」
「エッジ了解、このエリアの地図を照合してみます」
トレーラーを運転している工作員の腕も見事だ。交差点でもあまり減速させずに豪快な煙を上げながら曲がっていくなんて芸当はそうそう出来るもんじゃない。その後ろをドリフトさせながら追撃する7号車の腕も見事だ。まるでハードボイルド映画を見ているようなカーチェイス。映画のワンシーンを見ているような錯覚にとらわれそうになる。
「7号、こちら11号だ。今そっちに向かっている。おまけに他の連中も連れて来ている。奴さん、今どこに向かっているんだ?」
「おい11号、おまえ今日非番だろう。何だってパトに乗っているんだ?」
「馬鹿野郎、こんなときに非番もくそもあるか。上空の支援機、こちらはパト11号、相手の行き先がわかれば教えてくれ。これだけ台数がいれば封鎖も出来るはずだぜ」
相変わらずトレーラーは追尾を振り切ろうと猛スピードで疾走している。途中何度も駐車している車輌を跳ね飛ばしたり、信号機をへし折ったりしているので凸凹になっているが、猛スピードで走り続けている。
「なあブービー、あいつらどこから脱出するんだろうな?」
「そりゃあ、ユークに帰るんだから、どこかに待ち合わせのヘリか飛行機……あ!」
「だろう?オイラ、今日は何だか冴えているぜ。敵さんが空港を攻撃した目的は、脱出ルートの確保!ならこいつは最終的に空港方面に行くはずだ!」
となれば、今トレーラーが走っているエキスポ大通りから川向こうへ渡る橋を越えるしかない。もちろん内陸部に入って他の橋を越えることも出来るが、そんな時間的余裕が彼らにあるとは思えない。ある意味賭けだが、土地勘ということでは地元の警察連中の方が有利だ。
「パト11号、賭けが外れた場合はこっちが責任を持つ。こいつの行き先は空港だ!橋を封鎖してくれ!!」
「11号、了解!いいねぇ、のるかそるかの賭けなんてよ。もうこっちのサイレンが見えるだろう?奴さんの鼻っ面にぶち込んで、無理矢理にでも橋に行かせてくれ。任せたぜ!」
「ところで巡査部長、この後部座席に載っているのは何です?」
「ん、ああ、そいつは15年前の戦争の時の戦利品の対戦車ライフルさ。こんなときのために整備しておいて良かったぜ」
俺たちが撃つまでも無く、7号がトレーラーの前方めがけて拳銃を連射した。急ハンドルを切ったトレーラーは、そのまま橋を上がっていく誘導路に入ってしまった。橋の向こう側では、既に20台以上のパトが停車し、警官たちが銃やらライフルやら、そして中に対戦車ライフルを構えているヤツの姿も見えた。トレーラーは観念したのか、速度を落とし橋の中央で停車した。なかなか見応えのあるカーチェイスもチェックメイト、というわけだ

だが、敵さんは次の手を既に打っていた。 「隊長、レーダーに機影。国籍不明の攻撃ヘリが接近しています!」
ナガセの指摘の通り、海上から何機もの攻撃ヘリの機影。奴ら、このまま橋に強硬着陸して安全地帯まで一気に逃走するつもりだ。俺はAAMのレーダーをかけようとして舌打ちした。今日はいつもの機体ではなく、AAMは一発も積んでいなかった。ならば機銃で仕留めるしかないか!俺は加速し、奴らの抱えるAGMの射程範囲に入る前に襲い掛かった。すれちがいざま、2機の機首を破壊し、急旋回をして1機の後部ローターを吹き飛ばす。エッジたちも低空でAH-64を狙い撃ちにし、次々と葬っていった。驚いたことに、橋に展開した警官隊のうち、重火器を持ったメンツはヘリへの攻撃を実施し、うち1機を仕留めることに成功していた。対戦車ライフルを担いできた彼の戦果であった。
最後のヘリが撃墜されるのを確認して観念したのか、工作員達は自決することも無く白旗を挙げトレーラーから降りてきた。警官隊が彼らを逮捕し、その手に手錠をかけパトカーへと押し込んでいく。歓声があがった。
「パト7号より、パト11号、緊急事態発生だ!!」
お祭ムードを一気にかき消すような緊迫した通信。俺もまた何事かが発生したのか、と緊張した。
「女の子から、お父さんが誕生パーティ中にいなくなった、と捜索依頼が入っている。パト11号、直ちに捜索を開始せよ、今すぐだ」
俺は胸を撫で下ろした。なるほど、非番で駆けつけた11号が取った休みの理由は、娘の誕生日だったのだ。
「チョッパーより11号、ウォー・ドッグ隊は上空から捜索を行う。……早く帰ってやれよ、娘さん待ってるんじゃないのかい?」
「……了解!パト11号直ちに帰投する!始末書は悪いが皆に任せるぜ!!」
再びあがる歓声。結局俺たちはパト11号の帰投を見守り、手を振る娘さんたちの上空をフライパスして帰還したのであった。

この日のテロにより、バーナ学園都市では300人の死傷者、アピート国際空港では一般の旅客を中心に400人以上が死傷する事態となった。オーシアのメディアはユークトバニア軍による残虐行為を非難する報道が繰り返し放映していた。が、この前段にはユークトバニアにおける工科大学攻撃があるのだ。死傷者の大小は別として、かくも無惨な報復がこれから繰り返されていくのかと思うと、俺の気は重くなっていくのだった。

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