報復の連鎖


攻略メモ
オーレッド南西空域で、ユーク軍の機影を発見。敵勢力はアピート国際空港を目指して進撃しているものと想定される。空港は極度の混乱状態にあるため、急行し敵航空部隊を排除して制空権を確保することが任務となる。
最初に登場する敵戦闘機の数は少ないため、長距離射程のAAMなどを搭載した機体であれば、敵とドッグファイトすることもなく撃墜できる。むしろ厄介なのはその後、空港に着陸していた輸送機から出てくる地上部隊と航空部隊の攻撃だ。夜間なのでうっかりしていると地面と衝突、なんてことも有り得るのでHUDの高度計には注意しておこう。ターゲットと表示される敵勢力を全て破壊し尽くせばクリア。
登場敵機:F-14B、A-10A、F/A-18E、TND-GR1、C-5、戦車、Mig-31

オーレッドを飛び立った俺たちが向かったのは、首都オーレッドから湾岸高速を抜けた先にあるアピート国際空港。この上空を、ユークトバニアのマークを付けた戦闘機が飛んでいるとの報告があってから既に1時間近くが経過していた。幸い、まだ被害は出ていないものの滑走路は閉鎖され、上空にいた旅客機は空中待機を命じられ空港周辺を旋回し続けていた。

「トホホホホ、オイラの出撃がコイントスで決められるなんて、馬鹿にしている馬鹿にしている!」
「もういいじゃないですか。おかげであんな辛気臭いところから解放されたんですから」
「お二人さん、これから向かうところは大変な状況よ。気を引き締めて!」
「へいへい、撃墜王スリー了解ってな。あーっ、石頭のいない空は気持ち良いぜ!」
「……こちら首都圏防空コントロール。ウォー・ドッグ、作戦目標は確認できているだろうか?」
俺たちの向かう前方には、アピート国際空港の滑走路灯が下方に見え始めていた。そして、レーダーには明らかに民間機のものではない光点も。しかし、この空港を狙いに来た割には随分と数が少ないようだが……?
「オーシアの空軍機接近!」
「奴らの仲間が民間人を虐殺したのだ、血祭りにしてやれ!!」
F-14の編隊が反転して俺たちに向かってきた。バルカン砲の曳光弾が薄暗い空を切り裂いて飛んでゆく。下手に生き残らせたとしても特攻される恐れがある。俺はAAMを彼らに対して放った。双方編隊を組んだまますれ違う。轟音と振動が駆け抜けた後、4機のF-14は空中で四散し、その部品をばらまく結果となった。
「ブービー、方位090に新手が3機。」
「チョッパー、アーチャー、対処を任せる。俺とエッジは空港の状態を確認しに行く」
「アーチャー了解!空港には近寄らせませんよ!」
俺とナガセは高度を下げ、空港上空を通過した。まだ空港施設には被害は出ておらず、駐機中の旅客機や貨物機は待機を命じられて動いていない。貨物の取り下ろしが発生しているようで、何機かの貨物機がカーゴドアを開けて積荷の搬送を開始していた。
「こちら管制塔。空軍コントロール。この空港に空挺部隊ないしは輸送部隊を派遣しているのか?積荷の搬送許可を求められたので許可したのだが」
俺たちの前に派遣された部隊がいたのだろうか?確かに航空部隊相手ならSAM等を扱う部隊が配備されることは珍しくも無いのだが。
「こちらコントロール。現在バーナ学園都市で発生した神経性ガスによるテロに対応中で確認が取れない。が、そちらには空軍の戦闘機しか派遣していないぞ」
「どういうことだ?ならば何故貨物機がいるんだ?」
回答は、滑走路から来た。貨物機から搬送された積荷は自走を始め、空港施設に対して無差別に砲撃を開始していた。それだけではない。貨物機から出てきたのは航空会社のグランドハンドリング要員ではなく、フル武装の空挺兵だった。
「こちらウォー・ドッグ隊、ブレイズだ!管制塔、滑走路にいるのはユークトバニア軍の輸送機だ、民間機じゃない!!」
「何だって!?連中いつの間に侵入していたんだ!!」
それはこっちが聞きたかった。着陸している輸送機は1機や2機の話ではない。10機以上の輸送機がその口を開き、戦車部隊を吐き出していたのだ。俺は手近の輸送機に狙いを定め、バルカン砲のトリガーを引いた。空港施設に被害が出るのはやむを得なかった。連続した攻撃で蜂の巣になった輸送機が爆発四散する。その衝撃でターミナルの窓ガラスが連続して砕け散った。ターミナル内部は大混乱となり、航空会社の社員たちの呼びかけも空しく、旅客たちが我先にと出口へと殺到していた。だが、そのまま外に出しては展開している部隊の餌食になるだけだった。
「こちらアピート空港管制塔、ユークトバニア軍の各機、攻撃を止めろ!ここは民間施設だぞ!!」
「そうは言ってもなぁ、うちの軍隊も同じようなことをむこうでしちまったのさ」
「それじゃあチョッパー、これはその報復だというの。だとしたら、人間てなんて愚かなの!!」
「オイラだって哀しいよ。こんなことしたって、憎しみが拡大再生産されるだけなのにな」
さらに新手の戦闘機部隊も出現し、俺たちはその対処に振り回されていた。ターミナルに対して攻撃を続ける空挺戦車を撃破し、まだドアを開いていない輸送機にミサイルを打ち込んで破壊する。爆発の衝撃で吹き飛ばされた敵の兵士が駐機中の旅客機に叩きつけられ、捻じ曲がって地面に落ち動かなくなる。機銃掃射の後には、少し前まで人間だった有機物の残骸が散らばり、空港は空への玄関口から地獄への門に姿を変えたかのようであった。
「ターミナルビルにいさせてもダメだ!地下鉄のホームを使って避難させるんだ!!」
ビルの中ではパニックに陥った旅客を空港職員が必死になって誘導している。
「作戦に参加している兵士諸君、無差別攻撃を徹底せよ。我々の受けた恨みを倍にして返してやれ」
「し、しかし、空にいるのは民間機でしょう!?我々の国民も搭乗しているのではないのですか?」
「黙れ、大義の前には多少の犠牲は必要なのだ。命令に逆らうのなら、貴様を撃墜するぞ!」
「その前にお前が墜ちろ!!」
俺は空港に突っ込んでくる敵編隊の先頭にいた部隊長機のコクピットを吹き飛ばした。断末魔とともに機首が吹き飛んだ機体は、そのまま滑走路に墜落し爆炎を上げた。残りの3機は翼を振って抵抗の意志がないことを示すと、戦域から離脱していった。
「くそっ、脱走者がいるぞ!奴らもまとめて地獄に送ってやれ!!」
「さっきからギャンギャンうるさいんだよ、戦争愛好者の皆さんはよぉ!」
敵部隊は俺たちの攻撃で甚大な被害を受けながらも、抵抗を止めなかった。空港警備に当たっていた警官隊や陸軍部隊もターミナルから応戦を開始したため、ユークトバニア軍の兵士たちはビル内部に突入も出来ず、ビルからと俺たちとに挟撃される羽目となっていた。やがて、その中の一人が「ユークトバニア万歳!」と絶叫すると手榴弾を炸裂させ、搭乗ゲートの隅に隠れていた味方もろとも吹き飛ばしてしまった。
「止めて、もう止めて、こんな凄惨なことをして一体何のためになるというの!?」
ナガセの声は涙声になっている。だが彼らは最後の最後まで抵抗を貫いた。上空に展開した敵戦闘機部隊を片っ端から叩き落し、地上で抵抗を続ける戦車を一台残らず破壊するまで、この戦いは続いたのであった。

戦闘が終了した滑走路からは、破壊された輸送機や戦車のあげる黒煙がたなびいていた。
「くそっ、ユークの豚野郎。なんてことをしやがるんだ」
「そこの管制塔、それはオイラたちも同じ気持ちだぜ。」
「支援に感謝するよ。おかげで、多くのお客さんを守ることが出来たみたいだ。」
だが、滑走路はとてもではないが使用出来る状態ではなかった。にもかかわらず、まだ上空では旅客機が旋回を続けている。
「こちらOAUC75便、燃料があまりない。もう戦闘は終わったんだろ?早く着陸させてもらえないか」
「こちらOAL515便、同じく着陸を希望する。戦争は大陸の向こうの話ではなかったか?」
目の前で戦闘を見ていたはずの旅客機の通信は何とも平和で滑稽だった。チョッパーの呆れかえったようなため息が聞こえてきた。
「今の戦闘を見ていなかったのか!アピート空港は滑走路を破壊され着陸不能だ!!管制が前から指示を出していたように他空港へ迎え!!こっちは戦争やっているんだぞ!!燃料が足りない?こっちは死人も怪我人も数え切れないくらい出ているんだ。ガタガタ言わずに自分で判断しろ、このトンボ野郎っ!!」
管制官の怒声。旅客機のパイロットが息を飲む。
「待機中の民間機。降りられるなら降りてみな。戦闘の記事に加えて、民間機墜落っていう一面記事を飾ることが出来るぜ。周りで見てたんならもう少し目ン球開けて状況を見ておきな。それとも、俺たちみたいな軍人の言うことを聞くのはごめんかい?」
「チョッパー、止めておけ。もう充分分かっているだろう、彼らも。自分たちが「戦場」と隣り合わせにいるんだということを」
「しかしブービー、こいつらさっきから自分のことばっかり言いやがってよぉ」
「でも、私たちは彼らを守らなくてはならないし、今日も守りきった。帰りましょう、基地へ」
民間機のパイロットはグウの音も出ない。でも、これが現実だった。目の前が戦場でも尚も平和だと錯覚する感覚。これこそ、今のオーシアの抱える最大の問題なのではなかろうか。査問委員会の主戦派たちのように。

この日のテロにより、バーナ学園都市では300人の死傷者、アピート国際空港では一般の旅客を中心に400人以上が死傷する事態となった。オーシアのメディアはユークトバニア軍による残虐行為を非難する報道が繰り返し放映していた。が、この前段にはユークトバニアにおける工科大学攻撃があるのだ。死傷者の大小は別として、かくも無惨な報復がこれから繰り返されていくのかと思うと、俺の気は重くなっていくのだった。

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