ラーズグリーズの悪魔
攻略メモ
ユークトバニア首都への侵攻作戦を開始した陸上部隊に対し、先だって撃沈したシンファクシ級潜水空母二番艦リムファクシから弾道ミサイル攻撃が行われる。陸上部隊支援の為、このリムファクシを撃沈することが任務となる。ちなみにリムファクシは1分以内での急速潜航が可能であるため、万一発券された場合にはそれまでに攻撃を行わなければならない。
実のところ、必ず敵潜水艦には発見されてしまうので、とりあえずは他の潜水艦に目もくれずリムファクシを叩こう。ミサイル3発でとりあえず攻撃は成功する。その後、リムファクシから射出される無人戦闘機とリムファクシ本体が相手になる。リムファクシは中盤の大ボスと言って良いほどの頑丈さと攻撃力を持つため、がむしゃらに突っ込むとあっという間に撃墜されてしまう。しかも一定時間で急速潜航してしまうので、ある程度の損害を与えて潜航不能になるまではタイミングも図らなければならない。よって、浮上地点が少し遠めであるならば敢えて攻撃せず自分の近くに浮上するのを待つのも手といえる。恐らく、特殊兵装・ミサイル双方が空になるほどの消耗戦を強いられるはず。作戦指示を攻撃に切り替えて全機で集中攻撃を与えていくのも良い。どうしてもやられてしまう人は、浮上後すぐのミサイル攻撃を旋回でかわし、第二撃までの間の隙を突く戦法が有効だ。それか、F/A-18Eの対艦ミサイル、A-10Aの対地攻撃ミサイルを使うのもいいだろう。ミッション中、お約束の5,000フィート以上までの上昇を強いられるので、管制官の通信を聞き漏らさないようにしよう。
オープニングなどで何度も繰り返される「ラーズグリースの悪魔」という言葉。それが自分達チームの呼び名となっていることが初めて分かるミッション。前作AC04での「リボン付きの悪魔」みたいなものだろう。
登場敵機:無人戦闘機、補給潜水艦、ピケット潜水艦、潜水空母リムファクシ
定時偵察を行うはずだったブリーフィングの開始が遅れている。珍しいことに本国から参謀本部の士官殿が駆け付け、ペロー司令官殿たちと何やら深刻そうな話をしている。俺たちはそんな彼らを横目に見ながらすっかりとくつろいでいた。チョッパーはグリムを相手に冗談を飛ばして周囲の整備兵たちの笑いと高級士官殿たちの軽蔑の眼差しを浴び、グリムはというと何やら小さな回路版を取り出していじくっている。ナガセはいつも手にしている赤い本を開いて何かを書き込んでいた。
「ああ、駄目。あんなに読んだ本なのに、どうしても思い出せない」
ナガセは首を振って本を閉じた。一体彼女は何を書き込んでいるのだろう?
「どれどれ、オイラに貸してみな」
「あ、駄目!どうしても思い出せないのよ。お姫様が大事にしていた青い鳥がいなくなってしまうのよ。その後の言葉がどうしても」
彼女が手にしている本のタイトルには見覚えがある。俺自身も子供の頃に読んだ記憶がある。最も、内容なんてきれいさっぱり忘れてしまったほど昔のことであるが。
「それってラーズグリーズの仕業だろ?」
チョッパーの台詞に少し意外そうな顔をしてナガセが身を乗り出した。
「知っているの?」
「知っているもなにも。昔イタズラをしてうちのばーさんにさぁ、悪いことばっかりしているとラーズグリーズに捕まえられてしまうよ、と言われて夜中にトイレ行けなくなってよぅ。んでオネショのおまけがついてもっと怒られたのさ」
「もう……!」
「あれ?俺何か悪いこと言ったっけか?」
「チョッパー、最後が落としすぎじゃないのか?」
豪快な咳払いが俺たちの後方で聞こえた。振り返ると司令官殿が俺たちを睨み付け、本国から派遣されてきた中佐殿はバツの悪そうな顔で俺たちを見ていた。
「そろそろミーティングを始める。あー、何だ、その」
「私は参謀本部付のミッチェル中佐です。緊急事態につき、私から作戦内容を報告しましょう。モニターを」
俺たちに対する作戦指示でいつも使われるモニターに映し出されたのは、ユークの北方、北極を目の前に広がる海峡地帯。この時期、この海域は氷で閉ざされてしまうはずだ。隣でナガセが息を飲んだ。ちなみに、その海峡を「ラーズグリーズ」海峡という。
「我々陸軍部隊の拠点が、弾道ミサイルの攻撃によって壊滅的な打撃を受けました。幸い、既に部隊のほとんど全てが侵攻を開始した後だったので被害は僅かでしたが、今後この陸上部隊が狙われた場合我が軍はかなりの痛手を被ることになります。そこで、敵の潜水艦の位置を調べていたところ偶然ではありますが、ミサイル攻撃の本拠と言うべき、シンファクシ級潜水母艦2番艦「リムファクシ」の浮上ポイントを確認したのです」
シンファクシ級!かつて、俺たちが率いた新米パイロットたちを葬りさった海中の悪魔。まだ他にもいたのか。
「ウォー・ドッグ隊には、この好機にリムファクシを叩いてもらいます。リムファクシは1分で急速潜航する能力を持った潜水艦です。これは、あなたたちにしか頼めない無謀な作戦です。……健闘を祈ります!」
再び現れた海中の悪魔。こいつをのさばらせておけば、いつかの新米パイロットたちのように友軍部隊に大損害が出ることになる。俺はもう、あのときと同じ光景を見るのだけはご免だった。
格納庫へ向かう途中、俺はチョッパーに引き止められた。いつになく彼の顔はマジであった。
「あの中佐殿、何だかくさいと思わないかい?ブービー。これが参謀本部決定事項の作戦としたら、何で奴のような下っ端がしかも乗り込んでくるんだ?」
「つまりチョッパーは、この作戦には打算がある、と考えているのか?」
「ああ。しかも作戦内容に関するディスクを奴が直接司令官殿に渡していたの見たろ?つまり、この作戦はひょっとすると奴の独断専行かもしれんぞ。」
俺は腕を組んだ。仮にそうだとすれば、俺たちに与えられた情報は正確ではない可能性がある。リムファクシが浮上するのは事実としても、これが罠ということは有り得ないだろうか?
「チョッパー、このことを他に話しているか?」
「馬鹿言うな、こんなことおまえさん以外で誰に話すかよ」
「いずれにしても、リムファクシを放っておけば友軍に少なからず損害が出る。司令官殿や中佐殿の打算はともかく、リムファクシを叩いておくことには意味があるんじゃないか?」
チョッパーは大げさな身振りで頷いた。ひょっとしたら、自分自身をそれで無理やり納得させようとしていたのかもしれない。
「よし、いこうぜブービー。欲の塊は放っておいて、俺たちの出来ることから始めるとするかぃ!」
俺たちはヘルメットを抱えて、自分たちの愛機に駆けていった。待っていろ、リムファクシ。おまえが海面の上に出られるのは今日が最後だ。俺はコクピットの中に貼ってある、いつかの後輩たちの写真を見て、改めてリムファクシの撃沈を誓った。
白い氷が限りなく広がる海面上を、俺たちはかなりの低空で駆けていた。敵潜水艦からの発見を避けるための措置とはいえ、この天候か300フィート程度で飛びつづけるのは実のところかなり危険な行為と言えた。
「ブルブルっ、何だか寒気がする。この北の国からラーズグリーズが来たんだ……」
「ラーズグリーズ……」
「ナガセ、笑わないでくれ。オイラは何だか昔の気分になってきた」
「ダヴェンポート大尉、私語は慎めと何回言わせる気なんだ。間もなく無線封止だ」
「へっ、そしたらマイクを切って独り言にいそしんでやらぁ」
無線が切れ、後は自分の機体のエンジン音だけが響き渡る。それすらも吸い込まれていくような白い海面が彼方まで広がっているように見える。間もなく敵の潜水艦が張っている防空網に入るが……。
「ウォー・ドッグ、聞こえるか?リムファクシが君たちに気が付いた!1分以内に攻撃を敢行せよ、急げ!!」
「やばっ、オイラの歌声が敵さんに聞こえちまったか!?」
「チョッパー、いい加減にしなさい。急ぐわよ、対艦ミサイル発射準備!」
「あいよぉ、姉御!」
俺たちはさらに加速した。接近がばれた以上、今更音を立てずに飛ぶ必要も無かった。リムファクシまでの距離3500……3000……2500!
「ファイア!!」
俺たちは一斉にASMを放った。数本の矢が、海面の上少しだけ張り出しているリムファクシの艦体めがけて伸びていく。散開した俺たちの向こうで、派手な水柱が何本も上がった。
「馬鹿な、敵機の攻撃だと!!急げ、緊急潜航!!」
さすがに頑丈な艦体を持つリムファクシ。これだけでは沈められるはずもなかった。あっという間に白い水泡の中にリムファクシは姿を消していった。
「くそっ、潜航しやがったか。何てスピードだ!」
「待ってブレイズ!何でリムファクシは海中から撃ってこないのかしら?」
確かにそうだった。シンファクシといい、リムファクシといい、海中からあの弾道ミサイルを射出出来ることが最大の強みなのだ。それをしてこないということは……さっきの攻撃でミサイル発射ベイにでも損傷が発生したということだ。
「次の浮上でもう一度総攻撃をかけよう。艦体中央部と俺たちにとって脅威のSAM発射機を叩くぞ!」
やがてリムファクシが再浮上した。同時に弾道ミサイルが発射され、大陸めがけて上昇していく。同時に無人艦載機が射出され、俺たちにおそいかかってきた。無人機であるが故の強み、それは人間が戦闘機動を行う上で常にさらされるGを全く無視できることだ。無人戦闘機はとんでもない機動で俺たちの周りを飛び回る。
「アーチャー無人戦闘機を狙います。皆さんはリムファクシを!」
グリムに上を任せ、俺たちは再び襲い掛かった。接近するSAMを旋回で回避し、再びASMを撃ちこむ。近距離に接近してからはバルカン砲を叩き込み、SAM発射機を粉砕することに成功した。上空で反転し、再び上から攻撃。俺たちは反復攻撃を何度も仕掛けリムファクシの攻撃力を少しずつ削っていった。
「馬鹿者!何をしているんだ!!陸上部隊を見殺しにするつもりか!さっさと沈めないか!!」
聞こえてきたのはミッチェル中佐殿の罵声。なるほど、仮面の下はそんなものだったか。
「あーあ、うちの司令より優しい人が来てくれたと思ったんだけどなぁ」
「高級士官なんてみんな同じですよ。期待しちゃ駄目ですってば」
チョッパーとグリムの毒舌にミッチェルが黙り込む。いつだったかの司令と同じように、作戦に失敗したら見ていろよとでも考えているんだろう。俺は何度かの反復攻撃で煙を吹き始めた艦体に集中砲火を浴びせた。一際大きな爆発が発生し、艦体側面に亀裂が走った。
「艦体損傷!バラストタンク破損!!潜航できません!!」
「くそ、たった4機にこんな損害だと!?釣り合いが取れないぞ!!」
艦体中央が開き、弾道ミサイルが撃ち出される。が、それの向かう方向は大陸ではなく……ここ。つまり俺たちが目標か!
「サンダーヘッドよりブレイズ、敵の狙いは君らだ!着弾まであと15秒!急いでくれ!!」
俺たちは一気に急上昇をかけた。HUDの高度計が一気にカウントアップし、6000を超えたところで反転し、真下にリムファクシを捉える。そこに散弾ミサイルが炸裂し、無数の光球が眼下を包む。急降下した俺の機体は、光球の合間をすり抜け、一気にリムファクシに肉薄した。艦体中央めがけてミサイルを連続で撃ちこむ。排気煙の向こうでいくつかの小爆発が起こった後、リムファクシの艦体後方が弾けとんだ。これで弾道ミサイルはもう撃てまい!!
「兵装コントロール損傷ーっ!!散弾ミサイル発射不能!!」
「やっぱり、やっぱりあいつらはそうだったんだ……悪魔にかなうはずは無い」
「馬鹿っ、あれは戦闘機だ。当たれば落ちる戦闘機だ!おとぎ話に惑わされてどうするんだ!!」
既にリムファクシの兵装はほとんど残っていない。艦内がぱにっくになるのも当然だった。だが、ここで見逃すわけにはいかなかった。
「チョッパー、エッジ、アーチャー、セイルを狙うんだ!これで終わりにするぞ!!」
「了解!!」
俺たちは四方からリムファクシに接近した。残弾のASMを全て叩き込み、仲間と接触しないようルートを選びながら上昇する。4機が海面スレスレから急上昇した直後、セイルに集中したミサイルが一斉に炸裂し、艦体を突き破った。
「魚雷室損傷!」
「弾薬庫に被弾!爆は……」
艦内の弾薬に誘爆したリムファクシは、艦体各所で爆発を起こしていった。敵の通信はまだ続いていたが、途切れるのは時間の問題だろう。
「リムファクシ、君らが相手にしていたのはラーズグリーズの悪魔のようだ。」
「そうか……我々こそがそうだと思っていたんだが、我々の時代は終わったのかもしれん……」
激しい浸水によって海面から姿を消しつつあるリムファクシ。その中央部から、ひときわ大きな水柱が上がった。それはリムファクシの墓標のように激しく吹き上がった。大爆発を起こしたリムファクシは、激しい水泡を海面に残し、氷の海の下に完全にその姿を消したのだった。
作戦成功の報を聞いて、満面に笑みを浮かべていたミッチェル中佐殿を基地からさっさと追い出し、俺たちは宿舎の会議室に集まった。久しぶりのアルコール解禁。リムファクシの沈没により、一時的に俺たちが休むことの出来る時間が出来たということだ。司令官殿にしても、俺たちの手柄を横取りして鼻を高く出来るわけで、これぐらいの羽目外しは目をつぶってくれたらしい。
チョッパーが持ち込んだステレオからはガンガンとロックンロールが流れ、彼は気の合う整備兵たちとグラス片手に踊りまくっている。ナガセはそれでもオレンジジュースを静かに飲みながら、それでも楽しそうに皆を見ている。グリムはと言えば、既にチョッパーたちに飲まされた酒が回ったのか、ソファを占領して寝息を立てていた。ジュネットとおやじさんは奥の椅子で何か話している。こんな時間は、ひょっとしたらハイエルラーク基地に行って以来かもしれない。
「隊長、飲みすぎはいけませんよ。ひょっとしたら、明日また出撃があるかもしれない」
「分かっているよ。この後は俺もオレンジジュースに付き合わせもらうよ」
久しぶりに彼女は微笑を見せてくれた。「あと一本ぐらいにしてくださいね」と言い残して、彼女は先に部屋へと戻っていった。マイクを持ったチョッパーが彼女を引きとめようと「ジュテーム」を連呼して皆に笑われている。まだまだ楽しい夜は続きそうだった。もちろん、今晩くらいは俺もこの雰囲気を満喫するつもりだった。