砂漠の電撃


攻略メモ
ジラーチ砂漠にて、オーシア陸軍第2・第3大隊が敵の野戦司令部と石油施設に攻撃をしかける。両部隊の進撃を空からサポートすることが任務。今回のミッションは、それぞれ離れたエリアで進撃する友軍に次々と襲い掛かる敵部隊を逐一倒していく必要があるため結構忙しい。レーダー上の光点や友軍の通信を頼りに、敵出現位置を確認しながら進んでいくと良い。意外と今回の友軍は頑丈なので、少しの間放っておいても何とかなる(笑)。
「砂漠の矢」とは異なり、敵地上軍攻撃がメインとなるため、爆装可能な機体で出撃した方が楽。また攻撃目標数が意外と多いため、ミサイル搭載量の多い機体を選んでおいたほうが無難だろう。支援回数が多いのはマップ北側を進む部隊で、戦車部隊に空挺戦車部隊、と最初はマップに登場しない敵が次々と出現するので注意。マップ南側を進む部隊は、途中にある防衛陣地さえ落としておけば勝手に石油施設まで進んでくれる。どちらかの部隊が攻撃目標点に到達すると、レーダー上に大量の攻撃目標が出現する。面倒ではあるが、一つ一つ確実に潰していこう。可能であれば両方とも拠点を壊滅させることが望ましい。
拠点陥落後、マップ西方から戦艦と護衛艦、そしてランチャーが出現する。この時点でミサイル・爆弾等を使い切っているとかなり苦戦を強いられるので、対地目標は極力バルカン砲を活用して破壊したいところ。戦艦は結構硬いので、この際艦橋を優先して潰してしまうのも良いかもしれない。
登場敵機:C-130、AH-64、F-15E、C-5B、TND-GR.4、A-10A、EA-18G ABELCAIN、地上目標等

雪原から救出されたナガセが無事退院し、俺たちは幾日ぶりかでサンド島へと帰還した。これで休暇の一つでももらえるのならば随分楽なのだが、そうと問屋がおろすはずも無かった。俺たちを待っていたのは休暇ではなく、最前線の地上部隊支援任務だった。リムファクシの支援を失ったユーク軍は各地で敗走を続け、ついにジラーチ砂漠に大戦力を集結させた。この砂漠を越えればユークの首都は目前であり、事実上これが地上戦の分水嶺になる可能性が高かった。これに対しオーシア軍も陸上と空からの爆撃により前線に設けられた敵拠点を強襲するべく、部隊を集結させた。とはいえ、ユーク軍に比べれば火砲も兵員数も劣るオーシア軍を勝利に導くには、航空兵力による効果的な支援が必要だ、そこで君らの出番だ、と司令官殿は作戦の実状まで明かしてしまった。隣でチョッパーが苦笑している。大方司令官殿が俺たちの動員を総司令部に陳情したことはミエミエであった。
「さて、今回の作戦に当たって、一つ問題がある。この作戦図を見れば分かるとおり、作戦範囲が極端に広いのだ。付近には補給可能な航空基地もないため、支援部隊を選ばなければならない。ブレイズ、今回は貴官らに選ばせてやろう。」
そう言って彼が取り出したのは、またしてもコイン。この期に及んで、一体我が軍の高給士官たちは何を考えているのだろう。俺は無表情であることに努めながら、コインを宙に放った。手の甲でそれを受け止め、かぶせた手の平をゆっくりと上げる。……俺たちの出撃コースが決まった。
「敢えて言っておくが、先日の収容所でバートレットが発見されなかったことにより、彼は敵性スパイであったという容疑がかけられている。その教え子たる君らを疑う人間も少なくない。君らがその働きで無実を証明することに期待する」
司令官殿は、言わなくて良いことを言った。

ジラーチ砂漠は広大な砂丘の広がる、ユーク大陸の中でも最も大きな砂漠地帯となっている。眼下では砂煙をあげながら地上部隊が進撃を続けている。冷房も効かない戦車や装甲車の中は、まるでサウナだろう。太陽の熱と、地面からの熱とが容赦なく彼らの体力を奪っているはずだ。
「ちっくしょう、馬鹿にしている馬鹿にしている、馬鹿にしているぞぉぉっ!」
チョッパーは出撃後もまだ怒りが収まらないらしい。
「またしてもオイラの出撃をコイントスなんかで決めやがって!おいブービー、今からちょこっと引き返して司令官殿のねぐらを攻撃してきても良いか?」
「ダヴェンポート大尉、一体何回同じことを言わせるつもりだ。私語を慎みたまえ」
チョッパーとサンダーヘッドのこの会話はすっかり作戦前の社交辞令のようになってしまっている。いい加減、チョッパーの性格も分かっているだろうとは思うのだが、サンダーヘッドのストーンヘッドもなかなか頑丈らしい。
「あいよ、ラーズグリーズ・スリー了解っと!」
「何を言っているんだ、君は。自分のコールサインを忘れないでくれ」
「へいへい、冗談の通じない奴だぜ。なあ、ブービー?」
俺は苦笑しながらもうやめとけ、と手信号でチョッパーに伝えた。狭いコクピットの中でチョッパーは肩をすくめて笑っている。しかし、一方の地上部隊からは緊迫した通信が立て続けに聞こえてきた。敵もなかなか動きが早い!陸軍の突破口を開くためにも、俺たちはそれを上回る早さで障害を取り除く必要があった。

ユーク軍は予想以上の地上兵力を戦域に展開していた。恐らく、俺たちの担当していない戦域では地上兵力は少ないのだろう。反面、航空部隊の数が非常に限られているということは、向こうでは空からの攻撃に友軍が苦しめられている、ということであった。ユーク軍の抵抗は熾烈なものであり、地上を進む陸軍第2・第3大隊は戦車部隊とトーチカからの攻撃によって度々進軍を阻まれ、その度に俺たちは上空支援に回らなければならなかった。
「敵輸送機が何かを投下したぞ。何だか箱みたいだな。気を利かせて俺たちにビールでも贈ってくれたのか?」
「馬鹿、そんな気の利いたモノかよ、あれが。あれは空挺戦車だ!!部隊後方、敵戦車進撃中!!」
第2大隊の後方から、ユーク軍の空挺戦車部隊が砲撃を浴びせる。第2大隊は前方のトーチカ群と後方の戦車隊とに挟撃される羽目となっていた。
「くそったれが!こちらブラックナイト、雪隠詰めで身動きが取れない!何とかしてくれ!!」
前後からの激しい砲撃で地上のいたるところで火柱が上がる。何台かの車輌が直撃を被って炎上する。俺たちは散開して前後の敵に向かった。俺は腹に抱えてきた爆弾を戦車めがけて投下した。上空から放たれた爆弾は、中央にいた戦車を中心に炸裂し、付近の車輌も巻き込んで吹き飛ばした。チョッパーたちはトーチカに連続して機銃掃射を食らわし、これを沈黙させることに成功していた。地上から新たな黒煙が上がっていく。
「隊長、対戦車ヘリ接近!」
AH-64の細長い機体が接近する。エッジがその前面に飛び出し、機銃掃射をお見舞いする。1機が直撃を受けて機体の真中からへし折れて墜落し、1機は後部ローターは破壊されコントロールを失って爆発する。だが1機が攻撃を果敢に交わし、戦車隊への攻撃コースに入ろうとした。だがそこは俺の射程内だった。俺は機体脇のロケット弾のおさめられた弾装を集中的に狙った。弾薬が炸裂し、AH-64は真横に吹っ飛んで四散した。地上から歓声が上がった。
「こちらブラックナイト。敵包囲網を突破!支援に感謝する!!」
だが、敵の防衛網はチョッパーをして「こいつは余程暇な戦闘好きの人間が作った」と言わせるほど強固なものであった。俺たちは相次ぐ支援要請に振り回されながらも、敵部隊に損害を与え、友軍の血路 確保していった。散開して支援に当たっていた俺たちだったが、第7波の敵攻撃を退けたことで敵の反抗が一時的に止んだタイミングで再び合流した。4機とも今のところ損害なし。
「隊長、俺に兄がいるって話をしたことありましたっけ?」
「ああ、確かユークへの上陸作戦のとき、そんな話をしていた。まさか今日もいるのか?」
「はい、僕らの下を進んでいる部隊にいるはずです。僕がこの道に進んだのも、彼の影響が大きいんです。……兄を僕は死なせたくない。」
俺も同じ気持ちだった。出来る限り、自分たちと共に進む友軍を守りたかった。それは即ち、より多くのユーク軍兵士の命を奪うこととイコールであるのだが。
「こちらダルメシアン、コーギー、今のうちに弾込めとけよ」
地上を行く部隊は、互いに犬の名前をコールサインにしていた。ウォー・ドッグと地上を疾走する様々な犬たち。快調に進撃を続けていたかに見えた友軍の先頭車両何台かが突然火を吹き、何台かが衝撃で横に転がる。
「くそっ、敵さんの大口径の砲撃だぞ!回避行動を取れ!!」
「こちらセントバーナード、ダルメシアン、聞こえるかダルメシアン、応答せよ!」
「セントバーナード、そっちが探している奴らなら今の砲撃でやられちまったぞ」
「おい、こっちの砲兵は何をやっているんだ!支援砲撃はどうした!?」
「こちら第3砲撃小隊です。司令本部の命令により、現在施設へ向けて進撃中です。」
「ど阿呆!!司令本部の命令なんざクソ喰らえだ!!こっちから砲撃されたくなかったら、そこから3キロ下がって砲撃しろ!!てめえらのせいで全滅したら化けて出てやるからな!!」
陸上部隊でさえも、無能な上層部に苦しめられている。通信を聞いているだけで腹が立ってきた。戦場で命を危険にさらして戦い、傷つき、そして命を失うのはいつだって下っ端の俺たちだ。俺たちは砲台群への攻撃を試みたが、その周辺は対空火器の集中配備点でもあった。猛烈な対空砲火が撃ち出され、俺たちは回避を余儀なくされた。
地上部隊が全力で回避を進める中、第3大隊から離れてきた一隊が対空陣地への猛攻を開始した。斜型陣を取ったその部隊は、連続一斉射撃で弾幕を張り、一気に陣地内へと突撃を開始する。
「さあ、ここを潰してサンド島の四機の突破口を作るんだ。いつかの借りをここで返させてもらうことにしよう」
「シェパード了解!ウォー・ドッグ、聞こえるか。ここは俺たちに任せろ。早く砲台を潰してやってくれ!あれさえ潰せば、目標はすぐそこだ!!」
「おい、ブービー、これって、あのときの連中か?」
「ああ、間違いない。隊長殿、どうやら引退が随分先になってしまったみたいだな」
「聞こえているよ、ブレイズ。だがその通りみたいだな。まだまだ私は引退するわけにはいかないみたいでね」
ユークへの上陸作戦のとき、上陸B隊の指揮を取っていたあの老練な指揮官殿は健在だった。彼の指揮のもと、部下たちも激戦を生き延びてきたのだろう。あっという間に陣地に潜り込んだ部隊は、内部から次々と対空砲台を潰していく。このチャンスを逃す手は無かった。俺たちは対空砲火の減衰した空域を突破し、その背後にある砲台群へ肉薄した。その砲身めがけて爆弾を投下する。後ろからはチョッパーとアーチャーがAGMを放ち、その排気煙が砲台へと伸びていく。轟音と共に火柱が上がり、砲台が消し飛んだ。上空で反転して、次の砲台に再び爆弾を投下。大爆発と共に、砲台が弾けとぶ。
「第4砲塔、使用不能!!くそっ、こいつらは化け物か!?」
「大変だ!上にいるのはラーズグリーズらしいぞ。皆殺しにされちまう!」
燃え盛る砲台からわらわらと兵士が飛び出してくる。砲台群は完全に沈黙し、その先にある敵拠点までの血路の鍵は開いた。俺たちはそのまま直進し、野戦滑走路沿いに展開した敵戦車部隊に襲い掛かった。まだ戦闘態勢をとっていなかった敵は突然の攻撃に対応しきれず、兵士達が慌てふためいて逃げ惑う姿が眼下を通り過ぎる。俺たちは分散して、滑走路全域に広がる部隊に襲い掛かった。それに続いて進路を阻まれていた陸上部隊が突入を開始し、一挙に制圧にかかる。サンダーヘッドからの通信では、もう一方の拠点に対する総攻撃も始まったらしい。両軍の砲撃が飛び交い、滑走路周辺は煙と炎で充満していたが、戦意を失った軍と勢いに乗った軍の差は歴然としていた。陸軍部隊は無謀とも言えるような突撃を敢行し、ついに敵の主力を壊走させることに成功したのだ。指揮系統を失った敵部隊は各所で分断され、次々と白旗を挙げ投降を始めた。そして、基地が陥落するまでにそれほどの時間はかからなかったのである。

攻撃目標は完全に制圧され、第2・第3大隊は勝利の歓声をあげていた。通信越しに大音響の歓声が聞こえてきて耳が痛くなる。が、そんな彼らの目前に、突如火柱が上がった。慌てて兵士たちが物陰に隠れ辺りを警戒する。まだ敵戦力が残っていたのか!?
「サンダーヘッドよりウォー・ドッグ、敵の増援部隊を発見した。ロケット砲に護衛艦……くそ、馬鹿にしている、戦艦だ!!」
「おいおい、俺たちは化け物に大当たりだな。勘弁して欲しいぜ全く!」
作戦区域西を流れる河はかなりの深度を持つため大型艦船が入ることは可能だが、まさか戦艦を持ってくるとは。俺たちの装備の残弾数も決して多くは無かったが、かといって増援部隊を攻撃できる部隊は俺たちだけしかいなかった。
「チョッパー、グリム、そっちはロケット砲を狙ってくれ。こっちは爆装だ、艦船を狙う!」
「チョッパー了解!って、ナガセ、たまにはポジション変わらねぇか?」
「ネガティブ、隊長の2番機は誰にも渡さない」
「だってさ、ブービー。まぁ、仲良くやってくれ」
俺は戦艦にコバンザメのように張り付いているイージス護衛艦をまず狙った。敵のSAMを回避しつつ、その艦橋目掛けて爆弾を投下する。残弾はあと4発。さらに機銃掃射を浴びせる。これで艦体自体にどれだけキズを付けられるかは微妙であったが。機体を持ち上げ、船の上を通過して加速、上昇を始めたところで爆弾が命中した。艦橋に直撃を食らった護衛艦は、連続して爆発を起こしながら漂流を始める。戦艦から対空砲火が浴びせられてきたのを、高度を変えながら回避し、低空に降下する。そのまま対空砲火の死角を付いて、一気に距離をつめ、そして爆弾を翼から解放した。あと2発。低空を加速度つきで放たれた爆弾が、海面をホップアップしながら、戦艦の横腹を突き破った。
「隊長、加勢します!」
ロケット砲を壊滅させたグリムが、反対方向からミサイルを打ち込む。対空砲座の集中点にミサイルが炸裂し、砲座が破壊され部品が水面に飛び散る。黒煙が上がり、火災が発生している。だが、この程度で沈むようなヤワな船ではなかった。辺りもしない主砲弾を次々と打ち出し、残りの銃座からも激しい攻撃が俺たちに浴びせられる。俺たちはその砲弾の雨をかいくぐり、次々と攻撃を命中させた。チョッパーも加わり、四方から俺たちは攻撃を浴びせる。ナガセの放ったミサイルが主砲砲台を破壊し、砲台が大爆発を起こした。衝撃で浸水が始まったのか、艦体前方が傾き、水の中に没していく。爆発が艦底を突き破ったのだ。あと少し!俺は多少の損害を覚悟して、戦艦の真上に上がり、そして垂直降下した。一気に高度計のカウントが下がり、艦体が目前に迫る。3000……2000……1500!!
「喰らえっ!」
最後の爆弾を解き放ち、ギリギリの所で再上昇して戦艦から離れる。艦橋付近から火柱が2本派手に上がった。直撃だ。艦橋を支える支柱がへし折れたのか、艦橋が右舷へ傾いている。折れた根元からは炎が吹き上げ、艦体から次々と乗組員が海へとダイブする。コントロールを失った艦体は、損害を受けている右舷方向に流れていき、そして川原に乗り上げて停止した。火災の勢いは止まらず、黒煙がもくもくと空へ伸びていく。脱出した兵員達は反対側の岸辺へ向かって必死に泳ぎだす。しばらくして、辺りを漂白するような大爆発が起こった。弾薬庫の中に残っていた砲弾が一気に爆発したのだ。
「サンダーヘッドよりウォー・ドッグ、敵戦艦の完全破壊を確認した。ご苦労だった!」
完全なる、オーシア軍の勝利だった。地上部隊がユーク軍完全撤退の報を受けて、さらに盛り上がる。兵士たちのあげる歓声は砂の大地に響き渡る。俺たちが彼らの上をフライパスすると、歓声は一層大きくなり、そして「ウォー・ドッグ」の連呼が再び始まった。その声は砂漠を抜ける風に乗り、砂漠全体に広がっていった。

ジラーチ砂漠での戦闘に勝利したオーシア軍は、ユーク首都侵攻に備え拠点を構築しつつある。敗走したユーク軍も、首都攻略の最大の要害クルイーク要塞に立て篭もり、進撃を迎える準備を整えている。この戦争の決着は近いのだろうか?それとも、泥沼化への一歩を進むのだろうか?俺たちの前途は、まだ決して明るいものではなかった。

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