古城の幽閉者
攻略メモ
空母ケストレル艦長、アンダースン司令は今回の戦争の裏に潜むものを察知していた。彼の艦隊に所属する情報収集艦「アンドロメダ」は、ベルカ語で交わされた極秘通信を傍受し、ついにベルカ残党によって囚われの身となったオーシア大統領ビンセント・ハーリングの居場所を突き止めることに成功する。彼を救い出すため、ナガセ救出作戦で共に行動したシー・ゴブリン隊を支援するのが今回の任務。
カタパルトからの発進のため、艦載機認定のある機体でないと離陸不可となる(F-14、A-6、F/A-18、F-35C、RAFALEなど)。大統領の囚われている古城には対空兵器が配備されているので、まずはそれを撃破する。シー・ゴブリンが降下して救出作戦を開始すると敵陸軍と戦闘機部隊が出現するので、シー・ゴブリンに敵を近づけないよう、対空攻撃・対地攻撃を繰り返すことになる。出現する地上兵力の数がとにかく多いため、ミサイルでの破壊は極力避け、バルカン砲で仕留めていった方が良い。この頃に登場している機体は安定性の高いものが多いので、低速で近づき集中砲火を浴びせる戦法が有効だ。一方、敵航空機のうちSu-47は破格の機動性を持つうえ攻撃力が高いので、最優先で潰したほうが良い。
しばらくするとシー・ゴブリン隊が大統領との合流に成功するが、敵の反撃にあって身動きがとれなくなる。すると「城の外壁を破壊してくれ」という通信が入るので、目標マーカーのついた外壁めがけて攻撃を行う。ミサイル数発で破壊が可能。無事大統領たちが脱出することでミッションクリア。
この戦いの後、大統領直属の航空戦隊となったウォードッグ隊は、「ラーズグリーズ」隊と呼称を変更。機体色も黒地に赤のインパクトカラーに変更となる。
登場敵機:Su-47、YF-23A、戦車、SAM、対空砲、ガンボート
眼下に広がるのは一面雪の大地。一面白に覆われた平地と山々が連なっている。北ベルカ。かつては一つの国だった片割れ。15年前の戦争の最後、自らの手で核を起爆させたことにより国は分断され、今はオーシアの信託統治領となった北の国。その上空を俺たち4機、――スノー大尉を新たに加えた俺たちは、大統領が囚われている古城目指して飛んでいる。俺たちの後方には城に潜入して大統領を直接救出するシー・ゴブリン隊のヘリが列を連ねる。
「うう、やっぱり寒いぜ。畜生、いつになったら南の海で働けるんだ俺は!」
「シー・ゴブリン、あきらめな。今の俺たちゃ、南の海で泳ぐ前に塀の中の身だ。」
「スノー大尉、勘弁してくれ。俺はまだ捕まるようなことは一つか二つしかやってないんだからな」
やがて、俺たちの目の前に巨大な円形の穴が見えてきた。いや、今や湖というべきか。一つだけではない。7つの円形の湖が、俺たちを出迎える。これこそ、先の大戦の傷跡。ベルカの百万人を超える人々の命を一瞬にして蒸発させた、戦争の傷跡だ。今でも強い放射能を放ち続けるこの地域では奇形の植物や動物が多く、未だ人間が定住するには至っていない。
「ブレイズ、そろそろベルカの孔が見えたかね?もうすぐ、大統領が囚われている城が見えてくるはずだ。こちらで掴んだ情報によれば、城壁などに対空陣地が築かれているようだ。まずはヘリの着陸の障害となる対空兵器を壊滅させるんだ。」
この作戦から指揮を執るおやじさんからの通信が入った。その言葉とおり、白い大地に塔のように突き立った建物が見えてくる。17世紀頃のベルカ王朝が建築した城の一つであり、平和な時代には観光施設としても賑わっていたという古城は、数世紀を経た今本来の使われ方を得ることになった。俺は高度を下げ城の上をフライパスした。城壁の上にはSAMや対空砲台が並んでいるのが見える。が、それほど数が多いわけではなかった。俺は上空で反転し、真上から機銃掃射を浴びせた。奇襲攻撃に対応しきれない砲台群はそれほどの時間をかけずに沈黙した。
「ふーむ。編隊飛行なんて本当に久しぶりだ。」
「隊長、これくらいなら楽勝ですね。砲台、沈黙!」
「油断しないでアーチャー。この程度で済むとは思えない」
シー・ゴブリンのヘリはようやく城の上空に到達しようとしていた。俺たちは城の周りをゆっくりと旋回しながら、敵の来襲に備えた。動くものの気配の絶えたこの大地の上では、時間の経過を忘れてしまいそうな錯覚を感じる。
「よし、城の上に到着したぞ。ウォー・ドッグ、支援に感謝する。さあ、大統領にご対面だ!」
「おいおまえら、大統領にあっても恥ずかしくないよう服装を整えておけよ!」
「パグよりコングへ、おまえの面じゃ何着ても同じだ。人間に見えないからおまえは下がってな」
「なんだと!おい、ランディ、進撃中背中には充分気をつけておけよ!」
海兵隊の荒くれ者たちの軽口が飛び交う。多分、これが彼らの流儀なのだろう。あの狭いヘリの中で押し合いへし合い罵り合っているのだと思うと、愉快な話であるが。1機目のヘリが降下を始める。城壁と城の間の空間にゆっくりと降下していく。その後には、大統領を乗せることになるヘリが続く。
「へい、ウォー・ドッグ、ナガセ大尉はいるかい?ヘリの乗り心地はどうだった?」
雪の大地に放り出されたナガセたちを救出した連中だ。
「あのときはありがとうございました。本当に助かりました!」
「よせやい、礼なんていらないぜ。その代わりと言っちゃあなんだが、大尉、俺たちヘリ部隊に転属してみないか?部隊を挙げて大歓迎だ。この際、隊長には隠居してもらって、うちの隊長についてもらってもいいな。どうだい?」
「シー・ゴブリン、やめておいた方がいいですよ。人使いの荒さを知ったら、そんなこと言えなくなりますから。」
「アーチャー、どういう意味?ごめんなさい、私はまだ今のポジションを動くつもりがありません」
「かーっ、やっぱりフラれた!おい、ブレイズ、幸せな野郎だよアンタは!あーあ、言われたとおりになっちまったよ、おしゃべりの旦那。アレ……?随分静かだと思ったんだが、おしゃべりの旦那はどうした?今日はいないのかい?」
シー・ゴブリンはチョッパーの死を知らなかったのだ。
「いえ……彼は……ここには……」
「ブレイズより、シー・ゴブリン。残念だが、チョッパー、いや、アルヴィン・H・ダヴェンポート中佐はノーベンバーシティ上空での戦闘で戦死した。今日からスノー大尉が俺たちと共に飛んでいる。まあ、そういうわけだ」
「……そうか、悪いことを聞いちまったな。いいや、おしゃべりの旦那の話、戻ったら聞かせてくれよな……って、おわっ!!」
シー・ゴブリンのヘリが急制動をかけ、いきなり垂直上昇する。斜め上空から、曳光弾の筋が走る。敵機!ジュネットが予測していたとおり、オーシアとユークから得た資金を元手に開発された敵機が上空から突っ込んできた。大型の前進翼。Su-47か!
「ブレイズ、敵地上部隊を発見。城から増援要請が行ったみたい。続々集まってくる!」
俺たちはSu-47とすれ違った。クルイーク要塞の後、俺たちを襲撃した連中と同じ、真っ白な機体が通り過ぎていく。すぐさま急上昇した敵機の動きは鋭く、つけこむ隙がない。これが、15年前の戦争で連合軍を苦しめた伝説のベルカ航空隊の戦り方か!!俺もまた急上昇をかけ、手近の1機に喰らいつく。素早い動きで回避行動を取る敵機よりも小回りで旋回し、重なるように上へへばりつく。機関砲が火を吹き、白い機体に黒い穴を開けていく。急減速した敵機をかわし、体制を立て直す。黒い煙を吐き出した敵機からパイロットがベイルアウトし、雪の大地に降下していく。レーダーには新たな光点が出現していた。ヘリを、大統領が帰還するための大事な足をここでやられるわけにはいかない。
ベルカ残党軍は予想以上に豊富な戦力を持っているようで、城の周りには相当の台数の戦車やSAM車輌が集結しつつあった。そのどれもが、古城に向かっていた。俺たちは上空援護と対地攻撃に分かれ、空に地上に攻撃を繰り返していた。機関砲の直撃を受けた戦車が炎上し、中から火だるまになった兵士が飛びだしてきて、雪の上で動かなくなる。SAMの放ったミサイルを回避し、逆にミサイルを放つ。ミサイルアラートに反応して急上昇。俺を捉え損ねたAAMがそのまま地上に突き刺さり爆発する。俺たちは古城を中心に防衛線を構築していた。そして、城の中では既に海兵隊が奥まで入り込もうとしていた。
「それにしてもひどい埃だぜ。こんなところに大統領はいるのかね?」
「何だか敵兵以外の者も出てきそうな気分だ。早く帰りたいもんだな」
突然バシャーン、という音が無線の向こうで響き渡る。続いて銃声。ドカドカ、という足音。怒号。再び銃声。どうやら向こうも始まったらしい。逆に言えば、それだけ抵抗しなければならないほどの重要なモノが、この城には在るということだ。アンドロメダが傍受した情報はやはり正しかったことになる。
「ブレイズ、正門から機甲部隊侵入!」
「ああ、捕捉している。行かせはしない!」
俺は真上から降下し、敵戦車隊を照準レティクルに捉えた。射程内に入ったところで、操縦桿のトリガーを引く。機関砲の飛んでいく光の筋が戦車の天板に吸い込まれ、そして炸裂する。爆発に巻き込まれた後ろの車輌が誘爆し、足が止まったところをさらに叩く。進むことも退くことも出来なくなった敵部隊を俺は容赦なく叩いていった。何があっても、こいつらをシー・ゴブリンの元へ行かせるわけにかいかないのだ。
「くそ、こいつらキリがないぞ。一体連中はどれだけの兵器を手にしたっていうんだ!?」
スノー大尉が城の東部から進撃していた戦車隊を撃破しながらぼやく。全く同感だ。この地域にこれだけの兵力を動員できるということは、相当の兵力を手にしたことになる。同時に、それを動かすだけの兵士も動員できる状態にあるということだ。
「上空の支援隊、聞こえるか!?今、城内の管制室で戦闘中!もう少しでケリがつきそうだ。俺たちの帰りの足と、大統領を運ぶリムジンは健在かい?」
「こちらウォー・ドッグ、ブレイズだ。安心してくれ、城の外からの敵は何とか防いでいるぞ。だが、キリがない。大統領を頼んだ!」
「OK、任されたぜ。きっちり五体満足で連れて行くからな。おい、ロディ、ちんたら撃ってないでさっさと突っ込め!敵さんが最悪の手段に出ちまう前に突破するんだ!!」
城内も大詰めのようだ。やがて銃声が止み、兵士たちが走る軍靴の音だけが聞こえてくる。その音が唐突に消えた。どうやら、最深部に彼らは到達したらしい。
「大統領との面会地点に到達。服装を整えろ!」
「おい、油断するな。まだ敵が残っているみたいだ!!」
「ウルリヒ、「ククク」を実行せよ」
直後、外を飛ぶ俺たちが見えるくらいの土煙があがり、城の窓が衝撃で砕け散る。
「くそっ、閉じ込められた!大統領は無事か!?」
「ああ、問題ない。だが、こっちに怪我人が出た!くそう、ヘリは足元だっていうのにな!」
「ウォー・ドッグ、聞こえるか。退路を断たれちまった。こうなったら、イチがバチかだ。ヘリの上の壁を破壊してくれ。それ以外に、ここから出る術が無い」
ヘリの上。うっかりすれば、崩落した瓦礫がヘリの真上に落ちてしまう。まさにイチかバチだ。俺は一度城をフライパスして通過し、ある程度の距離を取って旋回して城を真正面に捉えた。正面の壁めがけて、俺はミサイルを発射した。2本のミサイルの排気煙が伸びていき、そして17世紀から城を支えていた壁で炸裂した。轟音と共に黒煙があがり、壁に大穴が開く。下にいるシー・ゴブリンから悲鳴と罵声が聞こえてくる。間一髪、ヘリは無事だったらしい。もっとも、細かい瓦礫を回避することは出来ず、胴体にはいくつもの凹みが出来ていることは間違いないだろう。
「ぶはっ、鼻の奥まで埃が入っちまった。」
「やりすぎだぞブレイズ、俺たちまで一緒に吹き飛ばすつもりか」
「文句いってる暇があったら、さっさと下りるぞ。折角彼らが作ってくれた脱出の機会を逃すな!」
海兵隊の面々が壁の大穴からロープをたらし、次々と下りていく。その中に、ワイシャツ姿の男がいるのを俺は見逃さなかった。ハーリング大統領であることは間違いなかった。大統領の脱出を察知した敵機が一斉に俺たちに向かってくる。ナガセが俺の左翼についた。俺たちはそのまま敵の正面に突っ込み、そして攻撃を浴びせる。2機がすれ違いざまの攻撃で爆炎をあげる。反転して、残りの敵機のケツを追い回し、ヘリへの攻撃ルートから敵機を無理矢理引き離す。アーチャーもソーズマンも地上部隊に熾烈な攻撃を浴びせて破壊していく。やがて、ローターをフル回転させたヘリが高度をあげ、そして一気に加速した。追いすがる敵機を容赦なく叩き落し、俺たちは大統領脱出の血路を開いたのだった。
どのくらいの時間が経ったろうか。追撃を諦めたのか、回りに敵の姿はなくなっていた。一つにはベルカの領域外に到達したことで、オーシアの防空圏に入ることを敵がためらったこともあるのかもしれない。
「大統領、お怪我はありませんか?」
ナガセ機が、ヘリの横に付く。少しして、懐かしい声が聞こえてきた。そう、自らを「積荷」と呼んだ、ビンセント・ハーリング大統領の声だった。
「素敵な声のお嬢さん、君が来てくれたんだね。それから、海兵隊のみんな、本当にありがとう」
海兵隊の連中の歓声があがる。数人の怪我人は出たようだが、どうやら死人は出ずに済んだらしい。さずかというべきか、運が良いと言うべきか。
「大統領、空母ケストレルでアンダーセン艦長がお待ちです。これからの私たちの行く先について、話し合いたいということです」
俺は出撃前、艦長から大統領へ当てられたメッセージを伝えた。
「そうか、アンダーセンは舞台裏に気がついてくれたんだね。ところで……君はもしや?」
「はい、ウォー・ドッグ隊の隊長を務めていましたブレイズです。最も、今では記録上撃墜されたゴーストですが」
「ああ……また君たちに貸しが出来てしまったようだね。さあ、諸君、それでは我々の家に帰ろうじゃないか。……悪巧みはそれからゆっくり考えるとしよう。」
再び大歓声。オーシアの指揮からも離れた不正艦隊があげた、初の大勝利だった。海兵隊の一人が、音程外れの歌を歌いだす。その曲を俺は今知っている。俺は自然と、その歌を歌いだしていた。やがて他の男たちもつられて歌いだす。大統領を乗せたヘリは、一路西へ向かう。俺たちがたどり着いた新天地、いや亡霊たちの巣窟と言った方が良いか。ケストレルという名の、俺たちの家に。