封印
攻略メモ
先日の鉱山偵察時に撮影した写真から、敵の目的が判明した。それは15年前戦争の際隠蔽された戦術核兵器を掘り出し、ユーク・オーシア両国に所属するベルガ人アグレッサー部隊に配備することだったのだ。ハーリング大統領は決断を下し、主人公たちは鉱山の「封印」を目指して飛び立つ。
マップは前回偵察を行ったエリア。今回はレーダー網を気にする必要がないので気分は楽チン。基地に到着するまでは、ミサイル等を温存するためバルカン砲主体での攻撃で施設を破壊していくと良い。途中敵戦闘機も出現するが、数は少ないので部隊と連携して撃墜していくと良い。
敵基地上空に到達すると、目標である鉱山の攻撃ポイントが出現する。話を先に進めるなら真っ先にここを叩けばよいのだが、スコアを稼ぎたい場合は基地の地上施設を壊滅させる必要がある。ここの地上目標は、出現した目標を全て破壊すると次の目標が出現する、というパターンになるので多少面倒くさいのではあるが、地道に潰していくと良い。その後、新たな目標が出現しなくなったら、本命を叩き始めればよい。本命の攻撃ポイントである鉱山入り口上の岩盤はさすがに頑丈で、masamuneはF-117のGPBで攻撃を試みたのだがほとんど残弾が0になってしまった。あとどれくらいで破壊できるかはナガセたちとの通信で分かるので、その会話を目安に繰り返し攻撃していくと良い。
岩盤を破壊し、鉱山を封印すればミッションクリア。作戦の都合上、爆装可能な機体の方が使い勝手が良さそうだ。
登場敵機:Su-47、YF-23A、敵地上施設群
撮影した写真に写っていたものは、俺たちの想像を超えるものだった。廃鉱となった鉱山に隠されていたものは、核兵器――15年前の大戦において、ベルカが自分たちの町を消滅させるために使用したあの戦術核だった。自分自身もそれを抱いて飛行したおやじさんが、このときばかりは険しい顔つきになった。彼らは、この期に及んで核の恐怖を武器とするつもりなのだ。既に一部の核兵器は輸送機に搭載され、国外へ持ち出されてしまったようだ。そして命令が下った。速やかにこの鉱山を攻撃し、これ以上の核兵器の流出を阻止せよ、と。
昨日、独りで飛んだ空を今日は4人で進む。天気は相変わらずの曇天。昨日と異なり敢えて身を隠す必要も無いので、俺としては随分楽な気分だった。既に俺たちの機影は捉えられ、航空基地の管制は大混乱になっているだろう。それも飛来したのはオーシアでもなくユークでもない未確認機なのだから。
「今日はレーダーを気にしなくていいですから、随分楽じゃないですか、隊長?」
「その代わりタイムリミットもある。敵の迎撃機も飛んでくる。どっちが楽か分かったもんじゃないさ」
「あ……すみません、気を抜きすぎていました」
「いいんだ、ただ、油断だけはしないでくれよ」
FALKENを先頭に異形とも言える黒いカラーリングの4機が荒れた大地と密林を通り過ぎていく。眼下には森に紛れて監視塔がちらほらと見える。そのうち一本をスノー大尉が吹き飛ばした。俺は機体を降下させ、川を上ろうとしているガンボートに機銃掃射を浴びせた。艦橋付近からへし折れたボートは、一瞬で水面から姿を消していく。
「それにしても、自分たちの町を跡形も無く消滅させた核の恐怖に再びすがろうっていう、奴らの頭は俺の理解を超える。そうまでしてユークとオーシアを滅ぼしたい理由は何なんだ?」
「ソーズマン、俺にもその理由は分からない。民族とか思想とかって言葉は使いたくないが、昔から北の谷向こうに押し込められてきた彼らには、南進というか、拡大思想が根強く残っているのかもしれないな」
「なるほど、確かにな。15年前の戦争だって、自分たちの勢力圏を拡大するためだけのものだったわけだからな」
レーダーに反応。恐らくはスクランブル発進したベルカの戦闘機部隊だろう。直進で突っ込んでこずに、旋回をして外側から包囲するように接近してくる。俺たちもまた散開し、互いの相手に掴みかかる。真っ白なカラーリングの敵機はレーダーロックを避けるように旋回して垂直上昇していく。その推力を以って逃げ切るつもりだろうが、こっちは今までの機体とは違うんだ。俺も敵に追随して上昇していく。俺を振り切ることの出来ない敵機が慌てて降下に移るが、そのときにはもう俺の射程範囲。機関砲が火を吹き、敵機の翼を穴だらけのボロ布に変えていく。コントロールを失った敵が墜ちていくのを確認して、俺は上空で反転した。そのまま次の敵の上にへばりついていく。振り切ろうと降下、旋回する相手の後背にレーダーロック。そしてAAM発射。急旋回した敵機が1本目をかろうじて回避するが、2本目の直撃を受けて炎上する。
「こちらドロセル8、敵は見た事も無い真っ黒なカラーリングだ!」
「ドロセル3よりCIC、何なんだこいつらは!あんな機動見たことが無いぞ!!」
俺たちの周りで次々と敵機が墜落していく。新しい翼を得たのは、俺だけでなく3人も同じなのだ。
「こいつは凄い。これまで乗っていた機体と全く違う!」
「同感だぞ、アーチャー。乗り慣れたF-14にはもう戻れないような乗り心地だ」
俺たちは向かってくる敵機を片っ端から叩き落としていった。急旋回で逃げようとする敵のさらに内側を取り、照準レティクルに捉えトリガーを引く。爆発を起こして吹き飛んだ敵から離れ、別の敵機を追いかけるナガセのフォローに付く。2機に追撃されたSu-47は加速して俺たちから逃れようとしたが、俺たちの機体の推力は敵のそれを凌いでいた。ナガセ機から発射されたAAMは容赦なく敵の機体を火の玉へと変えた。
「メイディメイディメイディ!くそ、キャノピーが飛ばない!!」
森の合間から爆炎と黒い炎が上がる。気がつくと、俺たちの進路を阻む敵戦闘機はいなくなっていた。主力ともいえる8492の連中たちは既に飛び立った後で、残りの部隊は少なかったのだろう。多くのパイロットがベイルアウトに成功していたが、これで当面の敵戦力は減退したはずだ。少なくともこの作戦中においては。
「CICよりドロセル2、ドロセル7、応答しろ!黒い機体って何だ!?こちらCIC!」
その呼びかけに応えるものはいない。やがて二筋に分かれている川が上流で一つになった。ここまでくれば、目指す鉱山はもうすぐだった。俺たちは編隊を解き、散開して敵の航空基地に襲い掛かった。
既に迎撃戦闘機を失った航空基地など、固定目標の塊のようなものだった。俺たちは四方から攻撃を浴びせ、基地のハンガーを、管制施設を、そして工場プラントを次々と破壊していく。地上からは黒煙が上がり、建物から逃げ出した敵兵たちが防空壕を目指して逃げ惑うのが見える。SAMのレーダーロックをかわし、逆に敵の死角から機銃掃射を浴びせていく。直撃を食らったSAM車輌が爆発して四散する。巻き添えを食った車輌から兵員達が逃げ出し、その後ろで車輌が爆発を起こす。この際、この基地を二度と使用出来ないよう俺たちは徹底的に施設を潰していった。滑走路にはグリムの開けた大穴が開き、脱出をしようとしていた輸送機の進路を阻む。その輸送機もスノー大尉の攻撃を受け主翼をへし折られ、今では滑走路上の無骨なオブジェと化していた。
「ブレイズは、ここをたったひとりで駆け抜けたんだ……私には、とても出来そうも無い。ベルカの関りがある土地は、息苦しくなって駄目」
ナガセの呟き。俺は黙って聞いていた。彼女もまた、返答など求めてはいないであろうから。
「隊長、僕たち、まだ間に合いますよね?」
「ああ、彼らがまだ活動しているということは、まだ残りがあるってことだ。もう持ち出されてしまったものは仕方無いが、これ以上持ち出させないことは少なくとも出来る」
「アーチャー了解、スノー大尉、援護願います」
基地を壊滅させた俺たちは、ぽっかりと口を開けている鉱山を捉えた。鉱山の中にAAMを撃ちこんでもこれほど規模が大きくなるとどの程度のダメージを与えられるか分からない。ならば、物理的に封印するしかない。鉱山の上には固い岩盤が突き出していた。あれを使えないだろうか?俺は一度鉱山の真上をフライパスした。この岩盤を使わない手は無い。
「各機、鉱山の上の岩盤を狙ってくれ!あれを崩して鉱山を永久に封鎖する!」
俺はミサイルを岩盤目掛けて撃ち込んだ。派手な土煙が上がり爆発が起きるが、この程度では岩盤は崩落しない。上空で旋回して距離を取り、再び正面から攻撃を叩き込む。ナガセたちがSAM車輌を屠っている間に、俺やソーズマンは繰り返し何度も攻撃を叩き込んだ。予想以上に頑強だった岩盤から徐々に岩石が転がり落ち始めた。
「ブレイズ、あと少し!あと少しで崩落する!!」
「ああ、これで決めてやる!」
俺はAAMを放つと同時に、ジェネレーターの作動キーを押した。低い回転音が響き、コクピットの位置が若干せりあがる。ヘルメットのバイザーディスプレイに充填率がカウントされていく。レーダーロックは、岩盤の下方。相当な重量をかろうじて支えている根元。充填率が100%をカウントする電子音が鳴り響くと同時に、俺はトリガーを引いた。青白い光条がまっすぐに伸び、岩盤に突き刺さる。圧倒的な熱量と破壊力に根元の岩石が溶け出す。何て威力だ。これまで色々な機体に乗ってきたが、こんな攻撃兵器を搭載した戦闘機は初めてだった。突き刺さった圧倒的なエネルギーに根元をえぐられた岩盤は、やがて轟音と共に崩落した。大量の岩石と土砂が廃鉱の穴を埋め尽くしていく。流れ出した土砂は一気に斜面を滑り落ち、麓にあった施設をあっという間に飲み込んでいった。
「馬鹿、逃げるな!ここで逃げたら誰がここの核を……俺たちの希望を守るん……」
廃坑内の兵士の声が唐突に途絶え、沈黙が後を支配する。轟音が鳴り止んだとき、鉱山の入り口は完全に埋め尽くされ、どこにあったのかも分からないほど地形が変化していた。封印はこれで完了だ。
「これでベルカはここから核を掘り出すことが出来なくなったわけだ。」
「隊長、やりましたね!」
敵の攻撃は完全に止み、密林はもとの静けさを取り戻した。本格的に発掘作業を始めるにしても、相当の期間を要することになるだろう。だが俺は別の不安に思い当たった。ベルカは果たしてここにしか核を隠していなかったのだろうか?まさかとは思うが、他の場所、似たような隠し場所にさらに多くの核兵器を持っていたとしたら……?
俺は首を振って悲観的な己の考えをとりあえず振り払った。今はすべてが可能性でしかない。そんなことに気を回すよりも、俺には考えるべきこと、為すべきことが他にあるのだから。
俺たちの家、ケストレルは今オーシアの北西部にあるホーツク航空基地に入港している。表向きは数少ない搭乗員と乗組員たちの休養と物資補充の為であったが、実際には俺たちの数少ない根城として占拠したと言った方が良い。もっとも基地司令官は、少し前までマクネアリ空軍基地の司令官であったアンドリュー大佐で、ハーリング大統領とアンダーセン艦長の説得によって今ではこれまた数少ない協力者として俺たちをサポートしてくれることになった。おかげで、俺たちはこうしてオーシアの大地の上に足を下ろすことが出来るわけだ。アンドリュー大佐は際限の無い前線からの航空支援要請に対し、無謀な進撃を止めるよう上申し、その返事としてオーシアの空軍基地の中でも練習隊や一部の偵察隊くらいしか使用しないホーツク基地に飛ばされてしまったのだ。戦争の真の敵がベルカとそれに操られた者たちである、と聞かされた彼は呆然としていたそうだが、大統領に改めて忠誠を誓った。幸い配属された人数が極端に少ない忘れられた地であるため、情報の漏洩を防ぐことは容易だった。
棺桶の蓋が開き、俺はようやく外気を吸うことが出来るようになった。雪が舞い降りる滑走路の寒さが頬に感じられる。エンジンを既に停止したFALKENをこうして見ると、やはり異形というべきか。乗っている本人がそう思うのだから、敵としてこいつを見たパイロットたちは驚くことだろう。
「ブレイズ、FALKENはどうかね?だいぶ慣れてきたんじゃないかな?」
厚手のコートを羽織ったおやじさんは作戦時は指揮を執りながらも、普段は今までとおり整備兵たちの頭領として彼らを操っていた。
「コントロールはだいぶ慣れました。むしろ、機動性に振り回されている感じがしますよ。それから今日初めて戦術レーザーを使用しましたが……こいつはあまり使いたくない、禁断の兵装ですね」
「そうか。ブレイズ、やはり君は私たちの立派な後輩だよ。手にしてはいけない武器を手にして思い留まれる勇気があれば、核の炎こそ自分たちの理想と勘違いしたベルカの連中のようにはならないで済むさ。敢えて封印はしないが、それで良いか?」
「ええ。もし封印を解かなければならないとしても、それは過ぎた武器を手にして自らの力と考える敵に対してにしたいと思います。俺……いえ自分は、虐殺の空を飛びたいわけではありません」
おやじさんは俺の肩を軽く叩いた。それでいい、と言いたげであった。このFALKENだけでなく、3人が乗る新型にしても、もしユークの手に渡っていたとしたら、きっとオーシアの兵士たちに甚大な損害を出していたに違いない。そうしておいて、ベルカはオーシアにも同じ物を渡すのだ。あたかも、依頼主の要望に応えたかのように。そのはずの機体は届かず、挙句の果てに俺たちの手に渡ったことでベルカの目論見は崩れたはずだ。だが、核の使用もためらうことの無いベルカが打つ手は時に俺たちの予想を上回る。まだまだ気を抜くことは出来なかった。ラーズグリーズとしての俺たちの戦いは、まだ始まったばかりなのだから。