白い鳥(part2)
攻略メモ
かつて潜水空母の攻撃から自分達を守ってくれたアークバード。その後破壊活動により動力停止となっていたはずだったが、実際にはベルガ残党の手により改修が施されたうえ、核弾頭を搭載していることが判明。アークバードの狙いはユークのオクチャブルスクであった。だが、核攻撃のためには一度軌道修正の必要があり、アークバードは一度だけ降下する。その最後の機会を狙い、アークバードを撃破するミッション。
このミッションは大きく分けて3パートに分けられる。
第一段階 ブースター破壊
飛行制御装置に異常をきたしたアークバードは、ブースターを点火することによって再び宇宙へ戻ろうとする。まずはその脱出手段を奪う。ナガセの会話で、「私はアークバードのことなら何でも知っている」という台詞の後、アークバードパイロットがブースター点火のカウントダウンを行うので、ブースターに攻撃マークが付くと同時に集中攻撃。時間に余裕が無いので、機体下部のランチャーやレーザー砲、小型機を相手にはしなくて良いだろう。ビーム攻撃は破壊力が大きいので、アークバードの上に付いておくことをオススメする。マップ西端に到達するまでにブースターを2基破壊すればOK。
第二段階 メインエンジン破壊
宇宙空間への脱出手段を失ったアークバードは、南へ進路を転進しオーシア領への突入を試みる。核爆弾を抱えての特攻を防ぐため、アークバードのエンジンを叩く。機体上面にエンジンの他レーザー砲台が出現するので、まずはレーザー砲台を最優先に潰すと良い。第一段階同様、レーザー攻撃回避のため機体情報に位置することが必要。エンジンを全て破壊すればOK。
第三段階 最後のあがき
メインエンジンを破壊されたアークバードは補助エンジンを点火して尚も抵抗を続ける。ただ、ここまでくればアークバードは移動することの出来なくなったでかい的にすぎない。機体腹部に行くとレーザー攻撃を被るので、機体の背面側から補助エンジンに集中攻撃を叩き込もう。これを破壊するとアークバードは動力を完全に失い、海の底へと沈む。
アークバードのレーザー攻撃をいかに回避するかが肝要。対処法さえ知っていれば、それほど恐ろしい相手ではない。落ち着いて攻撃していくと良い。
登場敵機:無人戦闘機、アークバード
「何ですって!?」
アンドロメダが傍受したベルカの暗号通信。それは、俺が抱いていた不安を現実のものとした。かつて俺たちを支援し、そしてユークの手によって使用不能になったはずのアークバードが息を吹き返した。それも、オーシアの切り札としてではなく、核の恐怖による世界の掌握を目論むベルカの切り札として。「AsatによるオクチャブルスクN攻撃1400」ベルカが狙いを定めたのは、ユーク国内の大都市の一つであるオクチャブルスク。そして、蘇ったアークバードは今その腹に核を抱えている。
「ユーク工作員による破壊工作と見られていたアークバードの動力部破壊は、実のところ初めから仕組まれていたものだった、ということだろう。敵はその間にアークバードを我が物としたわけだ。君たちが守り抜いたはずのマスドライバー基地からは、毎日のようにシャトルが打ち出されていたそうだよ。アークバードが破壊されたという話の後にもね。どうやら、アークバードだけでなくマスドライバー基地にまで彼らは潜り込んでいたようだね」
「彼らは、どこまであの白い鳥を汚すつもりなの……!」
ナガセが唇を噛み締める。彼女にとって、あの白い鳥は平和の象徴だった。それが今や、この世界を恐怖に陥れるための武器の一つとして扱われている。本来は、オーシアとユークの協調の証として作られたはずのアークバードは、生みの親に牙を立てようとしていた。
「だが、我々にチャンスがないわけではないんだ。オクチャブルスクに照準を合わせるためには、アークバードは一度降下しなければならない。その地点と時間は計算済みだ。相変わらず時間ギリギリの作戦だが、これを成し遂げなければ何も知らない人々が何十万人も命を失うことになる。ラーズグリーズ、君たちの攻撃目標は、あの白い鳥、アークバードだ。」
おやじさんの視線に応じて、大統領が後を続ける。
「平和の象徴として作られたものを逆手に取るとは、敵ながら天晴と言いたいところだが……。ラーズグリーズの皆、あの白い鳥にそろそろ安らかな眠りを与えてやってくれ。ブレイズ君、頼んだよ」
「大統領、そのためには、あの白い鳥をこの世界から抹消することになりますが、それでよろしいのですね?」
答えはわかっていたが、俺は敢えて問い返した。大統領は迷いの無い目で頷いた。
「平和になったら、彼女の妹を作ろう。……ラーズグリーズ、出撃せよ!」
雲の上に広がるのは、どこまでも続くような青い空。雲海の上は、今日も快晴だった。高度を下げるとはいえ、アークバードの降下高度は航空機から見れば遥か上空、俺たちは最大戦速でアークバードとのランデブーポイントを目指していた。既に高度は18000フィートを超える。キャノピーの向こう側は極寒の凍てついた世界が広がっているはずだ。
「隊長、僕たち、いつも奴らの後手に回っているような気がしませんか?今回だって、封じたと思っていた核をまだまだ彼らは持っていた。僕らはいつになったら彼らの動きを抑えることが出来るのでしょうか?」
「グリム、弱気になってどうする。まだ核攻撃が行われたわけではないんだ。俺たちが諦めたら、誰が奴らを止めると言うんだ?」
「そうよ、アーチャー。私たちは諦めちゃいけない。まだ勝負は決まっていないんだから」
グリムが焦る気持ちは分からなくも無い。実際、俺だってそう思う。ベルカの打つ手は、その度に俺たちの想像を超える。15年に渡って綿密に練られてきた計画は実に巧妙で、未だオーシアとユークが操られているという事実に気がつかない。いつしか、破滅の道を自分たちが歩み始めているということにさえ。
「あの白い鳥はナガセ大尉の希望だった。いいんですか、大尉?あれを落としてしまって?」
「グリム、彼女はもう落とす決心をしているぞ。」
「でも、アークバードは大尉の憧れだったんです。大尉、あの高度まで上がるのはしんどいですが、大丈夫ですか?」
俺たちは既に高度20000を超えていた。そして、上空から舞い降りてくるアークバードの白い身体が肉眼でも捉えられる。
「大丈夫、って何が?……ちょっと待って、アークバードが何か射出した!」
アークバードの右側面から打ち出されたのは脱出ポットだった。射出の勢いでアークバードから離れたポットはある程度自由落下してから、パラシュートの花を咲かせた。
「アドラーよりシャンツェ、脱走者だ。」
「シャンツェよりアドラー。どうした?例のオーシアの男か?」
「そうだ。既に用済みの奴だったんだが……おい、どうした?高度が下がっているぞ!」
アークバードはさらに高度を下げていく。機体制御のためのフラップがさらに上を向き、機体を下界へと押し下げていく。
「くそ、あいつめ何か細工をしていきやがった!」
「そのスイッチを切れ!これ以上下がるわけにいかん!!」
俺たちはその間に、アークバードの下、つまりヤツの腹に張り付いた。白い巨体が今目の前を漂っている。俺は攻撃開始を告げた。トリガーを引き、機関砲をその白い腹目掛けて撃ち込んでいく。グリムが、スノー大尉がAAMを放ち、白い鳥の機体は炎と煙に包まれていく。だが、もともとの設計がそうなのか、それとも改修の成果なのか、アークバードの装甲を打ち破ることは出来ない。
「こちらアドラー、敵の攻撃を受けている。シャンツェ、オーシアは押さえているのではなかったのか!?」
「そんな馬鹿な。オーシア軍は既に我々の手中にあるはずだ。敵の部隊章は見えるか?」
「……黒い機体……尾翼には例のマーク。くそっ、ラーズグリーズだ!オブニルの連中が言っていた奴らだ!!」
「シャンツェよりアドラー、全力で撃退せよ!無人航空機を射出するんだ。レーザーの使用も許可する!!」
鳥の腹が開き、その隙間からいくつもの飛翔体が飛び出していく。形こそ、オーシアやユークで使用されている無人偵察機だが、その機動は全くの別物だった。人間が乗っていては実現不可能な機動で、魂のない戦闘艇が俺たちに襲い掛かる。さらに、アークバードの腹が開いた。細長い砲塔のようなものがゆっくりと回転し、俺たちの方を向く。……あれは、レーザーか!?
「全機、ヤツの上に逃げろ!早く!!」
俺は操縦桿を引き一気に機体を上面に持ち上げた。3人も瞬時に反応し、鳥の上面にポジションを取る。その刹那、アークバードから青白い光が伸び、海面を引き裂いていく。その直撃を受けた戦闘艇が空中で真っ二つになり千切れ飛ぶ。あんなものを食らったら、俺たちとて一瞬で空の塵になってしまう。
「ちっ、何てヤツだ。」
「大丈夫。私は誰よりもアークバードのことを知っている。あの鳥の図面を私は何度も何度も見ていたんだもの。あの鳥が再び宇宙に還るには、方法はただ一つ。ブレイズ、機体後方のブースターを潰して!あれさえ破壊すれば、もうあの鳥は二度と戻ることは出来ない!!」
「分かった!みんな、ブースターだ。ブースターを狙え!!」
俺は照準レティクルにブースターを捉え、同時にレーダーロックをかけた。ロックオンを告げる電子音を聞くや否や、AAMを数発お見舞いする。連続した爆発でエンジンカバーが弾けとび、ブースター本隊の姿が露になる。だが敵も馬鹿ではない。ブースターから青い炎が吹き出し、アークバードが再び上昇を開始する。逃がすものか!俺たちは無人戦闘艇の攻撃を交わしながら、集中攻撃を浴びせた。機関砲の連打を叩きこみ、AAMを放っては反転し、再び攻撃。弾け飛んだカバーの隙間にAAMの直撃が入り、右側のブースターが爆発を起こす。片側の推力を失ったアークバードのバランスが崩れ、機体は自然と右にローリングしていく。続いて左側のブースターをナガセが吹き飛ばした。白い鳥は黒い煙を吹き出しながら、青い空を漂い始める。やったか!?だが白い鳥は腹のレーザー砲塔を回転させ、何度も死の光線を放ってきた。一度など光線が機体を掠め、猛烈な衝撃波が機体を揺すぶった。白い鳥はまだ戦う意志を失っていない。
「アドラー。第一次攻撃に失敗した場合は分かっているな?」
「ああ、言われるまでも無い。これより第二次攻撃に移行する。」
「しかし本当に大丈夫か?相手はラーズグリーズだぞ?」
「いい加減にしろ、シャンツェ。有り得ないことを考えるだけ無駄だ。奴らごとき、このアークバードがあれば敵ではない!」
青い空を漂っていた白い鳥が突如針路を南に変えた。いつの間にか大気圏内飛行用のエンジンが点火され、アークバードが加速を開始する。
「ちょっと待って!南に針路を取ったということは……」
「そうだ、奴らオーシアに目標を変えやがった。まさかとは思うが、機体ごと落とすつもりか!イカレたやつらの考えることは恐ろしいな!」
アークバードの背面が開き、砲台が姿を現す。あんなものまで搭載していたのか!砲台は俺たち目掛けて攻撃を開始した。SAMランチャーからはミサイルが幾本も撃ち出され、パルスレーザーの青い光が俺たちに雨を降らせる。そして腹からは、青白い死の光線が絶えず照射される。まさに、悪魔の鳥だ。
「レーザーにパルスレーザー、ミサイルにランチャー。あれ一機で新兵器の博覧会が開けるな。化け物め!!」
スノー大尉の機体に数発パルスレーザーがヒットする。が、大尉もその砲台目掛けミサイルを放ち、急旋回で衝突を避ける。ミサイルは確実に砲台を打ち砕き、白い鳥の背を炎で焼く。
「この程度の損傷など!全砲門開け!ラーズグリーズを道連れにしろ!!」
狂気の権化と化した鳥からは殺意に満ちた攻撃が放たれる。俺はその攻撃をかいくぐり、腹に回り込んだ。照準レティクルに細長いレーザーの筒を捉える。その中央を狙い、俺はトリガーを引いた。無数の火花が炸裂し、破片を撒き散らしながら砲塔が削られていく。ジェネレーターが爆発したのか、腹で爆発が発生し、アークバードの巨体が揺らぐ。吹き出した黒煙が青い空にまっすぐ伸びていく。開いた砲塔のかなりは破壊されているというのに、なおも抵抗を止めずアークバードは飛び続ける。
「アドラー、我々は君たちの奮闘を忘れはしないぞ。」
「ああ、オーシアはもうすぐだ。我らの大地のような特大の孔を穿ってやる」
まだそんなことを!!俺はアークバードに肉薄すると、大気圏航行用のエンジンを徹底的に叩いた。機関砲の残弾カウンターが見る見る間に減っていく。ぼろ布のようになったカバーが弾け飛び、エンジン本体が剥き出しになったところをさらに叩く。ずしん、と轟音を立ててエンジンが爆発し、アークバードの機体が激しく振動した。もともと大気圏内での高機動を考えていない胴体は再びバランスを崩して滑空していく。反対側のエンジンをグリムとナガセが吹き飛ばし、鳥はついに翼をもがれた。飛ぶ力を失ったアークバードは、海面目指して降下していく。黒い煙をその身にまとわりつかせながら。
「この戦いが終わり、平和になれば大統領がまたあなたを作ってくれる。人間が使命を捻じ曲げてしまったあなたは、もうここにいてはいけない。墜ちなさい、アークバード!!」
ナガセがさらにAAMをその胴体に撃ちこんでいく。炎と煙が白い鳥を覆い尽くしていく。が、アークバードは残された補助エンジンに点火した。落ちかかった機体の降下が止まり、ゆっくりとだが上昇を始める。
「まだだ!まだいけるぞ!こんなところで、我らの理想が終わるわけが無いのだ!!」
狂っている。理想?この美しい白い鳥をこんな姿に変えることの何が?
「哀れだ……見ていて辛くなる」
「同感です、スノー大尉。罪があるのは人間の側です。早く、眠らせてあげましょう」
ソーズマンとアーチャーが胴体右舷にミサイルを撃ち込む。炸裂したAAMはアークバードの胴体を揺さぶり、そして腹が剥き出しになった。その根元には、断末魔の炎をあげ続けるエンジンがあった。
「ナガセ、これで終わりにしよう。俺たちの手で、あの鳥を眠らせるんだ!」
俺たちは轡を並べてアークバードに狙いを定めた。残り少なくなったAAMを発射し、そして機関砲を撃ちまくる。何本ものAAMの排気煙がアークバードに吸い込まれ、そして炸裂した。メインジェネレーターの爆発はアークバードの胴体を引き裂き、その身体から真っ赤な炎が吹き出す。最後の翼をもがれた鳥は完全にコントロールを失った。爆発が容赦なく白い胴体を切り裂き、飛び散った破片は海面に無数の水柱をあげる。
「くそ……ラーズグリーズめ……」
アークバードに乗り込んだ男の声が消えると同時に、アークバードは海面に叩きつけられた。数秒後、数百メートルまで達する水柱をあげ、白い鳥は砕け散った。核を使うことを躊躇わない狂気とともに。
ケストレルに帰還した俺たちは、乗組員たちの熱狂的な馬鹿騒ぎに迎えられた。結局、アークバードの核は幸運にも炸裂することもなく、またその巻き添えになった船もおらず、白い鳥は公式にはまだ宇宙を回っていることになっている。大統領は、オーシア政府――アップルルース副大統領がユークへの核攻撃を承認したのだろう、と言った。その決定自体が、実はベルカの思う壺であろう事にも気がつかずに。何日もの間、停戦を呼びかけていた大統領の顔には疲労の色が強い。
甲板に出た俺は、夕暮れ時の海を見て佇んでいるナガセを見つけた。彼女の手には、どこから持ってきたのか、封を開けていない白ワインがあった。
「ナガセ、まさか一人でヤケ酒でも?」
「そんなことあるわけないでしょう?だいいち、私はそんなに飲めない。笑われるかもしれないけど、アークバードへの手向けがしたくて、ね。」
ナガセは瓶を被うカバーを剥き取り、オープナーを当てた。コルクの抜ける音が響き、甲板のヘリで蹲っていたカークの耳がぴくりと動く。ナガセはゆっくりと瓶を傾けた。甘い香りの液体は、海風に飛ばされながら海面へと散っていく。瓶が空になると、彼女はため息を吐き出した。
「おやすみなさい、アークバード。私の憧れた白い鳥。でも、私はもう大丈夫。私が飛ばなければならない理由があるのだから……」
彼女の理由とは何だろう……?俺は少し首を傾げながら腕を組んだ。ナガセは、笑いながら空を見上げた。夕暮れ時の空に、夜の訪れを告げる星たちの光が混じり始める。オーシアとユークの戦いは依然続いている。だが、悪しき者たちによりさらに深まるはずだった憎悪はその姿を表すことなく、海面へと消え去った。今日まで後手に回り続けた俺たちだったが、明日からは俺たちが攻勢に出る番だ。そして、両国を必要の無い憎しみから解き放つ日まで、俺たちは戦い続ける。