首都に至る決路を開け・前編
アイガイオンと空中艦隊を壊滅に成功した、という吉報は、エメリア軍全軍の兵士たちの士気をこれ以上無いくらいに高めている。兵士たちだけではない。エストバキアの支配から解放された市民たちの下には、自由エメリア放送がトップスクープでこのニュースを伝え、それをカークランド首相が追認するという本来の順番から言えば逆転した状態で吉報が伝わり、歓喜の輪が大陸に広がっている。エストバキアの占領地であっても、この吉報を聞いた市民は決して少なくないだろう。さすがにエストバキア軍令府もこの一件を「絵空事」と決め付けるわけにはいかず、「無益な抵抗を続けるエメリアの抵抗勢力が、卑劣な手段を用いて非道な殺戮を行い、勇敢な空中艦隊の兵士たちに無為な死を強要した。我々はこの屈辱を晴らすべく、抵抗勢力に与する者たちに容赦の欠片も無い制裁を行うであろう」と、空中艦隊壊滅を認める周知を行ったそうな。
空中艦隊殲滅の喜びと、キリングスの仇を討ったという安堵感に浸ることが出来たのは、実に一日だけ。空中艦隊消滅によって生じたエメリア大陸南側の戦力的空白をエストバキアが埋めにかかる前に、我々の国土を可能な限り取り返す。先の戦いで出番の無かった地上部隊は、空軍に負けるなをスローガンにして精力的に進撃を続け、エストバキア軍が放棄した前線基地などを占領、拠点として機能を回復させたり、潜伏していた敵部隊を発見、これを降伏させたり、と奮戦を続けていた。大規模な戦闘が生じることは無かったものの、航空支援や周辺偵察に俺たちも駆り出され、遭遇した敵戦闘機部隊と交戦したり、と多忙な日常がいつも通りに戻ってきた。エストバキア軍の士気高揚のために、大規模な陸軍兵力を派遣してくるのではないかと俺は考えていたけれども、そこまでの余力が無いのか、或いはグレースメリア防衛に戦力を集中させているのか、全面衝突という事態は生じないまま、数日が過ぎ去っていった。
そうして拡大していった我々の勢力圏ではあったが、グレースメリアに至るには見過ごすことの出来ない敵拠点が残されていた。グラジオ峡谷に作られた、ラグノ要塞である。元々はノルデンナヴィクによる北西部からの進撃に備えて、要衝の地であるこの峡谷に構築された簡易な駐屯地が始まりであったらしいこの要塞は、エストバキアの手に落ちてから徹底的に改修が施され、文字通りの要塞として生まれ変わっていた。ここの戦力を牽制出来る充分な戦力があったならば、牽制戦力だけを展開して主力部隊はグレースメリアを目指すことが出来たかもしれない。だが、この拠点を残すことによって後方地域を危険に晒したり、妨害工作を展開されるのは目障りであったし、何より「充分な戦力」とは常に無縁の我が軍が下した結論は極めてシンプルであった。ラグノ要塞に展開するエストバキア戦力を駆逐し、同要塞をグレースメリア解放に向けた前線拠点として活用すべく、占領せよ――それが、俺たちに課せられた新たなミッションとなったのである。
深い谷とその底面を流れる川と湖、そして広がる台地。グラジオ峡谷はそれ自体が天然の要塞と呼ぶに相応しい地形を持った、難所の一つ。そんな場所であるが故に、民間人の居住地はごく限られているのはこれから始まる戦いのことを考えれば不幸中の幸いと言って良いだろう。極論すれば、ミサイルや砲撃で地形を変えてしまうという戦法も、ここなら有効だ。勿論、今回の地上進撃を担当するワーロック隊の安全を確保した上でのことではあるが。
『ワーロック隊より、各航空部隊へ。データリンクでも見ているが、特大サイズの火砲が敵陣地に配備されているようだ。旧態依然とした兵器だが、その分威力と信頼性は折り紙付きだ。優先して潰してもらえると助かる』
『こちらシャムロック、了解した。その代わりと言っては何だが、対空ミサイルの類は極力葬ってもらえると助かる』
『イエロージャケットよりワーロック、こちらとしても対空兵器の類は片付けてもらえると助かるな。谷の中はいいんだが、上に出ると警報がかなりやかましい』
先行して進撃中のワーロック隊は、もう間もなく敵の前衛部隊の射程圏内に到達する。要塞を支える輸送路や設備の破壊と、渓谷の何箇所かをくり抜いて作られた管制施設・地下基地の破壊は勿論重要ではあるが、敵防衛部隊とガチンコの殴り合いを担当するワーロック隊が、今回の作戦では最も難しい任務を負っていると言っても過言ではない。突撃なら右に出るものの無いクオックス隊は今回別方面に既に進撃中なので、ワーロック隊を中心に編成された進撃部隊が単独で激闘を引き受けざるを得ないのである。もっとも、今回は「要塞制圧」が重要なミッションでもあるため、ワーロック・イエロージャケットの両部隊に特殊部隊も同行している。彼らの任務はさらに過酷で、要塞を巡る激戦の最中を駆け抜けて、要塞中枢を制圧しなければならないのだ。極論すれば、両隊の損耗をどこまで抑えられるかが、この作戦の成否を決めることになる。
少し遠くの大地から、立て続けに炎が上がるのが見える。それと同時に撃ち出されたいくつもの光の塊が放物線機動を描きながら、迫り来る。そしてそれほどの時間を待たず、ワーロック隊の周囲は爆炎と黒煙と土煙とに包囲された。引き返すなら今のうちだぞ、というような手荒い歓迎の始まりだ。まだワーロック隊は反撃出来る距離になっていない。だが彼らは歩みを止めない。次第に密度を増していく攻撃の中へと迷わず突入していく。そんな彼らの頭上を通り過ぎ、愛機は速度を増していく。データリンクの情報を整理し、俺たちの正面に展開している敵部隊情報をチェック、タリズマンに渡す。タリズマンがちらりとモニタを確認するのが見える。
『勇敢なる祖国の戦士たちよ!今日ここで非道なるエメリアの愚か者どもを葬るのが――』
『進歩の無い報道さんしかいなくて可哀想になぁ。エストバキアのみんな、今日も快適な音楽を届けに来てやったぞ。なあみんな、でかいの落とされたからって落ち込むなよぉ?そんなものより、ゼット様の送る素敵な音楽で酔いしれて、ハッピーになろうぜぃ!!』
『また――こいつら――』
「こいつら元気で良いなぁ。ある意味、良い支援だよな、これ」
「タリズマン、またここに繋いでいたんですか?いい加減にしておかないと、そろそろ――」
『――分かっているなら、隊長を諌めるのも部下の仕事のうちだ、エッグヘッド。民間周波数に戦闘中に合わせるなと何度言わせていると思っている』
『まあまあ、声の素敵な空中管制官もカリカリしないの。そうそう、ガルーダ隊にはゼット様特製「金色の王様」勲章を、漏れなくあげちゃう』
『俺たちももらえるのか。ありがたい話だ。さて、シャムロック、エンゲージ!』
二手に分かれたガルーダ隊の獲物は、まずはワーロック隊の正面に展開している敵迎撃部隊。低空を駆けながら、狙いを定めるタリズマン。機関砲弾の短い火線は、俺たちの正面に位置した火砲目掛けて吸い込まれるように飛んでいく。小さな爆発と炎が見えたかと思うと、根元の台座辺りから長い砲身が折れて吹き飛ぶ。招かれざる客に対して迎撃の火線が手向けられるが、それを嘲笑うかのように旋回しながら、すかさず次の攻撃を仕掛ける。再び火の手が上がり、敵の火線がまた一つ沈黙する。同じように緩やかに旋回しながら攻撃を続けているシャムロック機とすれ違う。タリズマンと同様に、現時点での戦車部隊の強敵たる重砲狙いで彼らも飛んでいる。ここの陣地には戦車の数が少ないのも幸運と言える。これが重装備の戦車部隊が最前面に展開していたら、俺たちは対要塞戦のために積んできた爆弾とミサイルを一旦消費し、もう一度引き返してから再攻撃、さらにもう一度くらい補給に戻ることを余儀なくされていただろう。――だが、このくらいの数ならば、戦車の相手には最適のメンバーがいる。
火砲の近くに展開していた敵戦車の一台が、突然炎を吹き上げ、そして砲台が裏返しになって横に転がる。それだけではない。密度と勢いならエストバキアの初弾に決して負けることのない、熾烈な集中砲火がエストバキア部隊に襲いかかる。ワーロック隊が、とうとうエストバキア部隊を射程内に捉えたのだ。怒涛の勢いと信じがたい進撃速度で敵を圧倒するのがクオックス隊の特技だとすれば、ワーロック隊の特技はこれである。連携しての圧倒的な集中砲火によって敵の攻撃の空白域を強制的に作り出し、それを広げていくという、徹底した集中攻撃の妙技。その攻撃に晒された敵部隊が、一つ、また一つと炎に包まれ、そして生き延びた兵士たちが逃げ惑う。そんな状況になって尚も反撃の牙を突きたてんとする敵部隊に対し、俺たちもトドメの一撃を加えて回る。と、コクピット内に、嫌な警告音が聞こえ始める。レーダー上の光点は、地上部隊のものでは無い。と、甲高い警報音に音が跳ね上がる。ほぼ同時にタリズマンが機体をロールさせ、敵陣地から離脱。深い谷間の一つへと躊躇なく機体を飛び込ませる。少しして、俺たちを「レーダー上」は追いかけていたらしい敵のミサイルが、地面に突き刺さって炸裂する。
タイミングを図って再び谷から急上昇、少し高度を稼いでから水平に戻る。新たに戦場へと出現したのは、戦闘ヘリ部隊だった。対地攻撃の脅威という点では、ある意味戦闘機以上とも言えよう。何しろ、最強の戦闘ヘリの一つ、AH-64なのだから。わざわざ危険性を指摘するまでも無く、タリズマンの「優先度」は戦闘ヘリに向けられる。近場にいた一団に狙いを定め、その頭上から攻撃態勢。ロックオンを告げる電子音が鳴り響くや否や、一撃を発射。少し機体を傾けて、その隣の一機に対して機関砲弾のシャワーを浴びせる。ミサイルの直撃を食らった一機は紅蓮の炎に包まれ、もう一機はローターをへし折られ、バランスを失って高度を下げていく。生き残ったヘリからはチェーンガンの火線が俺たちを追いかけてくるが、それを振り切るように旋回。今度は横から敵機に攻撃を叩きこむ。ヘリといえどもAH-64の防御力は非常に強い。だから、コクピット付近を集中的に叩きこまれた攻撃は、キャノピーに大穴を穿ち、中の乗員たちを血煙へと変えた。
『やるなガルーダ隊。砲弾の雨あられは随分マシになった。感謝する!』
「その代わり、戦車の類はみんな残しておいた。そっちの仕事だ」
『ハハハ、戦車相手なら任せておけ。しっかりとご退場頂くさ』
「お話し中悪いんですが、AH-64の第二波を確認。谷の下から上がって来ています」
「了解だ。谷の下に基地でもありそうだな。ウインドホバー、そっちの受け持ちにヘリポートでも無いか?」
『こちとら渓谷をタイトロープ中だ。もし見つけたら、発電所もろとも沈黙させとくさ』
『ラナーより隊長、渓谷内に敵戦闘機部隊確認。正面から来ます!』
『サーベラスよりセイカー、敵機の相手は俺たちで引き受けるぞ。隊長とラナーは先に行ってくれ』
敵がワーロック隊に攻撃を開始する前に、どれだけ撃ち落とせるかが鍵となる。第一波が壊滅させられたのを警戒してか、こちらになかなか近付いてこないヘリの集団に対し、レーダーロックを開始。シャムロック機もやや上方にポジションを取りながら攻撃態勢。ミサイルシーカーがしっかりと敵を捉え、ロックオンを告げる電子音が鳴り響く。空の上の戦いは、タリズマンに任せておけばどうやら問題は無さそうだ。地上の戦いに目を向ければ、ワーロック隊が獅子奮迅の戦いを繰り広げているのが分かる。かといって、彼らは弾の無駄遣いはしていない。この作戦の本丸は迎撃部隊ではなく、より強固な防御力と攻撃力とを持つ要塞だ。いくつかの集団に部隊を分けつつ、複数の方向から狙い撃つ戦術。異なる角度から撃ち込まれた攻撃は、的確に装甲を撃ち貫き、そして破壊していくのだ。これは完全にワーロック隊の方が一枚上手だ。
ぐい、と機体の姿勢が急に変わるのが分かる。完全に意識を空に向けたタリズマンが、接近中の戦闘機に目標を切り替えたのだ。ここは自分たちの縄張りとでもいうように、敵機が迫る。恐らくは渓谷の中からこちらへと攻撃を仕掛けるつもりであろう。一方のタリズマンは頭を押さえて迎え撃つ態勢。決して敵を見落とさないよう、レーダーと窓の外とを睨み付けるのだった。
タリズマンとエッグヘッドのコンビは、F-15Eという機体を操るという点においてこれ以上ない組み合わせではないか、と度々実感する。自分とドランケンの組み合わせだってなかなかのものだろうと自負はしているが、あの二人はその上を行く。特にエッグヘッドの戦況状況把握や分析の広さと早さは、目を見張るものがあると言っても良いだろう。決してタリズマンはそれをべた褒めすることは無いだろうけれども。
「敵さんも必死じゃのぅ。だが、勢いは完全にこちらに優勢じゃな」
「このまま押し切れれば何も言うことないけどな。だが相手は要塞だ」
「こんなところにあんなモン作り上げてしまうあたり、エストバキアの連中というのは発想がどこかおかしいワイ」
「防衛拠点として使われると、厄介なことこのうえないがな」
「まあそうなんじゃが、本拠地からこんなに離れたところにこんなご立派な要塞を築いたところで、補給線やら駐屯部隊やらを考えると面倒くさいはずなんじゃよ。こういう発想は統一された軍隊というよりも、異なる国なり派閥なりがやることじゃよ。ここはワシらの拠点じゃ、とな」
言われてみれば、確かにドランケンの見解にも一理ある。極論すれば、異なる進撃ルートでグレースメリアを目指すことがエメリア軍には出来ていたはず。最悪の場合、この要塞は素通りされてもおかしくは無かったのだ。なるほどね、と思いながらシャムロックは愛機を旋回させ、次なる獲物の姿を探す。アイガイオン戦ではF-15Cで戦った二人であったが、今日の戦いからは再びF-15Eに戻っている。もっとも、ドランケンにしてみれば覚えなければならない機能がさらに増えた点は悩みの種にはなっているようだが。
『イエロージャケットより航空部隊、聞こえるか?』
「こちらガルーダ2、シャムロックだ。どうした、何か問題が発生したか?」
『敵要塞内部への侵入口の一つの反撃が熾烈で、現在苦戦している。支援を頼みたい』
「分かった、そちらの位置は確認している。待っていてくれ」
ワーロック隊の正面に展開した敵部隊との戦闘は大体勝敗が決したと言える。タリズマン・エッグヘッドのコンビに上は任せておけば良いであろう。イエロージャケット隊の位置をレーダーで確認しつつ、シャムロックは愛機を渓谷の中へと向かわせる。切り立った崖が高速で流れていくのを視界の隅に眺めつつ、ガルーダ2のF-15Eは曲がりくねった渓谷の中を潜り抜けていく。一方、イエロージャケット隊の位置は、戦域やや北方の渓谷内、厳密にはラグノ要塞内部への侵入が可能な物資搬送用の大型トンネルの入り口であった。
「ふうむ。トンネル入り口に迎撃部隊が出張っておるようじゃの。対空兵器が並んでお出迎えのようじゃ」
「正面玄関からは入れてもらえない、か」
「なに、勝手口から上がらせてもらえば良いまでのことよ」
「勝手口?」
「そうじゃ。何しろ、トンネルじゃからの」
ドランケンはモニターを見ろ、と指示を出し、何やら含み笑いをしている。そして指示されたモニターを確認したシャムロックは、マスクの下で苦笑を浮かべてしまった。そう、確かに相手は「トンネル」だ。目標点へのルートを手早く確認したシャムロックは、対空兵器が歓迎の準備をしている突入口から離れ、別の谷の中を進んでいく。
『こちらイエロージャケット、ガルーダ2、迷子になったか?』
「ドランケンよりイエロージャケット、まあちっと待っているが良いぞ。シャムロック、任せるゾイ」
「了解した」
渓谷を抜けたガルーダ2のF-15Eは右方向へと大きく旋回し、渓谷を構成する山肌の一角へと機首を向ける。その行く先には、シャッターに覆われた入り口――要塞内部へと至る物資輸送用トンネルのもう一方の出口があった。搭載してきた対地ミサイルの一つをそのシャッターに狙いを定め、放つ。一旦急旋回して反対方向へと逃れる。一方、翼から解き放たれたミサイル本体は、目標に向かって直進を続け、そしてシャッターへと突き立つや否や炸裂した。ズシン、と辺りを揺るがせる音響と共に火玉が膨れ上がり、吹き飛ばされたシャッターの破片が宙を舞う。トンネルとしてはかなり間口の広い入り口が、ぽっかりとその口を開けた。
一旦トンネルから離れたシャムロックは改めて愛機を旋回させ、自ら開いた入り口を真正面に捉えた。そして、機体を安定させながらスロットルを少し押し込む。ありがたいことに、トンネルの中には照明も付いているらしい。主翼と尾翼とトンネルの壁の位置関係を確認し、「勝手口」――トンネルの反対側から、シャムロックたちは内部へと突入する。
「優先目標は入り口付近の敵車両じゃ。並ばれたままではどの道出られないしの」
「ブルドーザーは自前でやれってことだな」
さすがにトンネル内では速度を落としつつ、出口付近に展開している敵対空攻撃部隊に対してシャムロックは狙いを定めていく。若い頃に見た映画に出てきそうな「敵要塞突入」のシチュエーションを楽しむような時間が無い事は彼にとって残念ではあったが、やがて前方に出口の光とそこに並ぶ敵部隊の姿とを捉える。まさか戦闘機が反対側から飛んでくるとは思っていない敵部隊は、相変わらず外のイエロージャケット隊を追い掛け回しているようだ。待っていろよ――再び対地ミサイルのレーダーロックを開始。ロックオンを告げる電子音が鳴り響く。翼から離れたミサイルが、トンネルを這うように加速していき、そして対空砲車輌の横っ腹に突き刺さり、炸裂した。爆発による衝撃波と爆風とが、周囲の戦闘車両を谷底へと吹き飛ばし、或いは横に並ぶ車の上にと引っくり返した。そして、黒煙を振り払うように、ガルーダ2のF-15Eはトンネルから再び渓谷へと飛び出したのである。
『おいおいマジか!?あのトンネルの中入っていったのかよ!』
『さすがだな、ガルーダ隊。戦闘機であの中に入ろうっていう発想は普通湧かないだろうよ』
「なあに、たまたまうまく行っただけさ。それよりチャンスだ、今のうちに仕事を片付けてしまうといい」
『勿論だ。バードイーター、スワローテイル、念のためトンネル外を警戒しろ。残りは一旦内部へ突入だ!!』
『了解!!』
脅威の消失を確認したヘリ部隊が、次々とトンネル内へと突入していく。彼らに同乗している特殊部隊が、いよいよ要塞内部への突入を開始することになる。敵部隊によってその企図が妨害されないよう、シャムロックは周辺の敵に警戒しながら愛機を駆る。レーダーを見れば、ウインドホバー隊が渓谷の別ルートで敵の航空機部隊とドンパチやっているようで、その結果として敵の航空部隊はここに近寄れずにいた。
「どうやらここは任せておいて大丈夫そうじゃ。タリズマンに合流するかの」
「了解だ」
彼らの隊長機は、進撃を続けるワーロック隊の周囲に対して圧倒的な攻撃と脅威を振り撒き続けている。ガルーダ1の位置を確認しようとレーダーを確認したシャムロックは、別方向から接近する光点の姿を捕捉した。どうやら、別働隊の敵戦闘機部隊のお出ましらしい。勿論、すんなり通すつもりなど毛頭無い。右方向へ急旋回、敵部隊の正面へと躍り出たシャムロックは、愛機を加速させるべく、スロットルをぐいと押し込むのだった。
「天使舞う空、駆け抜ける鉄騎」ノベルトップページへ戻る
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