ミッション10

大陸に上陸拠点を確保した我が軍は、クラウンビーチに拠点を構築。大陸深部への侵攻準備を整えつつあった。しかし、この地点から侵攻するには天険の要害であるタンゴ=ライン、イスタス要塞を越えねばならない。そこで、俺たちの出番となった。U2偵察機が持ちかえった情報によれば、イスタス要塞は大きく4つのエリアに分けられ、空港とVTOL基地、補給施設と驚くべきことに潜水艦ドック。そのいずれもが山岳帯の中に巧妙に隠されているのだ。これを陸軍の到着までに極力排除することが俺たちの任務である。

「これを攻めるんですか!?」
ブリーフィングルームでは新米たちを中心にどよめきが広がっている。そりゃそうだ。俺たちは、かなり広範囲に渡る基地群を、しかも狭い山の間を縫って叩かなければならないのだから。だから、今回に限って自信の無い者については、航空基地の上空防衛をまかせるつもりだった。……結局部隊に配属されて間も無い6人のパイロット達には留守番をまかせることになった。
「よし、作戦開始までは十分な休息をとっておくように。解散!」
解散の合図と共に、隊員達は各々退室していく。俺はエンゼル01に頼んでいたいくつかの機密資料を目に通す為に、もう一度椅子に腰を下ろした。
「私は待機と言われても飛びますからね。」
資料を渡すときにエンゼル01は頬をふくらませながら言ったものである。何だって俺が怒られねばならんのだ。
「よう、痴話喧嘩は大概にしてくれよ。作戦行動に支障が出るからな。」
今や部隊の相棒となってしまったレイピア09が側にやってきた。
「痴話喧嘩ってのは恋人同士の話だろ。俺には関係無い。」
「どうだかね。」
この野郎。俺は奴の嫌がる方の担当を押し付けることにしたのだった。

基地を飛び立った俺たちは、空中給油機の補給を受けて、タンゴ=ラインに接近していた。開始直前になって、地上攻撃に定評のあるスカーフェイス隊も参加することになり、彼らには空港地帯の集中爆撃を依頼してある。
「スカイアイより、全機。間もなく敵のレーダー圏内に入る。作戦開始!」
「ラジャー、スカイアイ。基地で会おうぜ!」
「メビウス1、無事帰ったら今度こそ酒をおごってもらうからな!」
2方面に分かれ、レイピア09は補給施設へ、俺たちは空港の上空制圧に向かった。
山脈の山と山の間を縫うように俺たちは飛んでいた。忙しいことこの上ない。スリルの連続で、背中には冷や汗がたれているのが分かる。空港まで、あと2キロの所で俺たちは上昇し、一気に空港への距離を詰めた。スカーフェイス隊の機影を発見し、スクランブル発進準備中の滑走路に襲いかかる。滑走路上では、メカニックたちが慌てて防空壕に逃げて行く。俺は離陸を開始しようとしていたF−15にバルカン砲を食らわした。飛び立つこともかなわず、F−15は地上で爆炎に包まれた。ついでに辺りの防空設備を片っ端から攻撃する。それらをあらかたかたしたところで、俺たちは難関のVTOL基地へと向かった。スカーフェイス隊からは「俺たちの獲物を狩りすぎないでくれよ」と言われたが。

VTOL基地へと向かった俺たちは、さっそくAV−8Bのお出迎えを受けていた。スピード自体は決して速くないが、垂直方向に動きやがるから危険だ。俺は十分な距離を取ってAAMで1機ずつ確実に仕留めていった。インターセプターを撃退すると、俺たちは基地群のある山の上空に上がった。下を見下ろすと、山を円形にくりぬいたVTOL用の滑走路がいくつも見えた。敵さんの技術力はあなどれないな……こんな所にこんな施設を作っちまうんだからな。驚いているのは他の連中も同じようだった。俺は機体を垂直降下させた。眼前に山が迫ってくる光景はものすごいスリルだ。十分に狙いを定めて、滑走路のある「穴」へ爆弾を投下し、一気に操縦桿を引く。強烈なGがかかり、機体は再び急上昇。しばらくして、後ろから爆炎が上がる。成功だ。俺たちはその戦法で一つ一つ穴蔵をしらみつぶしに叩いて行った。
予想よりも数の多かった基地を攻略した俺たちだったが、同時に弾薬もほぼ尽きていた。一端要塞空域を離脱し、基地へと帰還する。機体の簡単なチェックと弾薬補給を頼んで、少しの間のブレイクタイムを取ることにした。どうやらレイピア09たちも苦戦したようで、俺たちの後に補給を受けることになっているが、3機は損傷が激しく次の出撃には耐えられないようだった。
「メビウス1、機体整備完了したぞ!」
おやっさんが大声で俺を呼ぶ。俺は手にしていた紙コップをゴミ箱へ投げると、再び要塞へ向かうべくコクピットに滑り込んだ。

俺たちは最後に残った潜水艦ドックを目指していた。しかしこっちの山は空港施設の方に比べてより険しく、操縦が大変だ。補給施設群も深いクレーターの底に作られていたようで、レイピア09の隊もかなり大変な目にあったらしい。天険の要害という言葉が本当にふさわしい要塞だ。やがて、狭い渓谷を流れる川が見えてきた。同時に、俺たちを歓迎してくれるミサイルボートの姿も。飛来するSAMを回避し、逆に機銃掃射を食らわして渓谷内に侵入する。エンジン音が崖に反響してけたたましい音を立てる。あれか!こっちの接近に気が付いた原潜が一隻、既にドックから動き出している。行かせるものか。俺は潜水艦の艦尾を狙い爆弾を投下した。航行不能となった潜水艦は、そのまま浅瀬に乗り上げて傾く。中からはわらわらと乗組員達が出てきて逃げ惑う。俺は狭い渓谷内でループをかまして方向転換すると、今度はドック内に入っている潜水艦と駆逐艦を狙った。せまいドック入口に爆弾は吸い込まれていき、そして炸裂した。爆発はドックを内側から吹き飛ばし、辺りには破片が散乱する。主要目標を破壊した俺たちは、残りの弾薬で基地を徹底的に攻撃したのだった。

俺たちの攻撃で施設の大半に損害を負ったイスタス要塞は、時を経ずして行われた陸軍の侵攻により、完全に壊滅した。タンゴ=ラインを無事越えた陸軍は南東部の都市ロスカナスを占領。これを大陸深部への侵攻を行うための重要拠点とした。ミリタリーバランスの逆転が始まっていた。

本ミッションにおける撃墜スコア
地上目標56・戦闘機25・船舶17・ヘリ11

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