ミッション15

大陸北部から侵攻した陸軍の別働隊は、エルジア軍の配備の空白地帯をつき、北部の主要都市の奪還、ロスカナスにいる本隊に合流した。そして、作戦司令部は、大陸中央の大都市、この戦争で真っ先に占領された悲劇の都市、サンサルバシオンの解放作戦の発動を決定した。既にサンサルバシオンに潜伏するレジスタンスの数組織から連絡が入っていて、こちらの侵攻開始と共に町の灯火管制を全面的に解除する手筈になっている。陸軍の初期目標は国道7号線に陣取っているエルジア軍機甲師団、それから国会議事堂の制圧。その支援が俺たちの仕事ってわけだ。

今回のミッションは市街戦。まさか気化爆弾を使って街を燃やすわけにもいかないので対地ミサイルが愛機にぶらさがっている。30分前に陸軍がサンサルバシオンへの移動を既に開始し、7号線に向かって展開中だ。俺たちの部隊は機甲師団への攻撃を行った後、都市郊外の空港を攻撃、この機能を奪った上で国会議事堂地域の上空制圧というコースを取ることになった。再編成が進んだISAFの航空戦力は確実に強化されつつあり、俺たちもだいぶやりやすくなったもんだ。
ハンガーへ向かった俺は、エンゼル01が所在なげに立っているのに気がついた。これまでで最大規模と思われる作戦発動でびびったか?俺が声をかけると、浮かない表情で返事を返してきた。
「サンサルバシオンは私の生まれ故郷なんです。」
そういえば、周りに他の人間がいないときは「自分」じゃなくて「私」って言うようになったな……。彼女が航空学校に在籍していた頃、エルジア軍が侵攻を開始。彼女の両親はレジスタンスとして戦っていたが、その戦いで戦死。兄弟も爆撃で死んでしまっていたらしい。そこまで一気に話すと、彼女は色々思い出したのか泣き出してしまった。俺は自分の手拭いを投げようとしたが、ジャケットのポッケから入れているだけでろくに使ったことのないハンカチを渡してやった。かわいい顔して、無理してたんだな。
「やっと、仇が取れるな。今回は黄色も出てくる。……後ろを頼むぜ。」
エンゼル01は、敬礼してそれに応えてくれた。天使の顔に笑顔が戻っていた。

「作戦司令部より、全兵!ここが正念場だ、健闘を祈る!!」
展開を終えた陸軍は、7号線に展開したエルジア軍機甲師団と交戦状態に入っていた。遠目からも、戦車砲の光が飛び交っているのが見える。早く行ってやらないとな!俺たちは急行して、最前線に展開しているM1A1戦車隊に攻撃を仕掛けた。火柱が何本も上がり、戦車が吹き飛ぶ。爆風で付近にいた兵員たちも吹っ飛ばされている。既に灯火管制は解除され、街の明かりに戦車も兵員も照らし出され逃げ場を失っていた。俺たちは垂直降下で攻撃を何度も加え、機甲師団を徹底的に叩いた。陸軍もそれに応え、無謀とも言える突撃を敢行した。最先鋒の90式が直撃を大爆発を起こす。だが後続は勢いそのままに、一気に敵陣へと展開し、中から機甲師団をかき回す。こうなれば、もうこっちのものだった。突入した戦車隊はエルジア軍を蹴散らし、ついには7号線戦区から機甲師団を完全に撤退させるのに成功していた。
一旦ベースに戻った俺たちは、今度は爆装して再びサンサルバシオンへ向かう。目指すはサンサルバシオン空港。俺たちより前に進撃した第108爆撃隊が、敵のインターセプターに手を焼いているらしい。俺たちは予定を変更して空港を徹底的に叩くことを決めていた。激戦区は既に市街地に移っていて、両軍の兵士、それにレジスタンスや一般民衆まで加わって、激しい銃撃戦が繰り広げられている。俺たちはそれを眼下に見下ろしながら上空を通過し、一気に空港までの距離をつめる。インターセプターをオメガ01・13にまかせ、空港近辺に展開しているSAM車輌を爆撃する。爆発したSAMは辺りを照らし出すキャンプファイアと化し、それを目印に各機が次々と爆弾を投下していく。駐機していたC−17輸送機や離陸待ちの戦闘機が次々と血祭りに上げられていく。敵の防空戦闘機はあまり上がっていないようで、おかげで仕事がやりやすいってもんだ。黄色中隊も手が回らないのだろうか。

空港を制圧した俺たちは、陸軍からの支援要請を受けて国会議事堂上空へと急いでいた。どうやら予想外の戦力をエルジア軍は展開していたようで、特に大量のMi−24ハインド対戦車ヘリに損害を強いられているようだ。……いるいる。俺たちは今回はあまり使っていないAAMで襲いかかる。飛行機に比べたら、動きは良いけど鈍ガメだぜ。直撃を食らったハインドが次々と爆発して議事堂辺りを照らし出す。味方の歓声が通信越しに聞こえてきた。
「スカイアイよりメビウス1!敵の爆撃機の侵入を確認した。かなりの速度でサンサルバシオンに接近中!」
「くっそぉ、ファシストどもが、焦土作戦かよ!!」
レイピア09が絶叫する。まったく同感だ。絶対に止めてやる。
「私も行きます!!」
エンゼル01も後から付いて来る。しかし……速い!爆撃機は、こっちの予想よりもはるかに高速で接近していた。Tu−160ブラックジャックか!!特徴の有る機体が眼下を高速で通り過ぎて行く。俺は先頭の機体のケツにつけ、そしてAAMを発射した。翼と垂直尾翼を吹っ飛ばされたブラックジャックが、きりもみしながら落ちて行く。少し速度を落とし、2機目のコースに割り込んで、またそのケツを取る。これでも食らえ!!今度はバルカン砲をお見舞いしてヤツの機体を引き裂く。エンゼル01も必死になってブラックジャックを攻撃している。街までもう僅かの時間しかない!俺たちは必死になってブラックジャックを攻撃した。しかし1機だけ、猛追を逃れた爆撃機が攻撃コースを取る。万事休すか!?そのとき、1本のミサイルが飛んできて、ブラックジャックを上から下へと貫き通した。真中からへし折れて、畑に墜落する。今のは……?俺は周りを見回した。友軍機がいたのか?
しかし上から現れたのは、見覚えのある、いや忘れようのない黄色いカラーリングのSu−37。13番か!?だがヤツは戦う気はないらしく、数回機体をバンクさせると、エルジアの首都ファーバンティの方角へと飛んで行った。借りを作っちまったか……。

この日、エルジア軍は機甲師団の主力を失い、サンサルバシオンから敗走した。占領下から解放され、街は夜通しで大騒ぎが続いている。俺たちもロスカナスから突貫工事で復興されたサンサルバシオン空港を拠点とする事になった。大陸のミリタリーバランスは完全にひっくり返っていた。決着のときは近い。そして、13番との雌雄を決する日もまた近づいている。

本ミッションにおける撃墜スコア
戦闘機2・輸送機7・ヘリ2・爆撃機6・地上目標48

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