ミッション16

サンサルバシオンを占領した連合軍は、敵国首都ファーバンティへの侵攻作戦を発動した。しかし、ファーバンティに至るには、ランバート・アンバー両山脈に挟まれた天険の要害「ウイスキー廻廊」を通過しなければならない。エルジア軍もここを最後の防衛ラインとして陸軍の残存部隊の大半をここに展開していた。我が軍がここを通過する為には、優位に有る航空戦力による支援攻撃以外に道は無かった。俺たちの部隊は、上空制圧と敵部隊への攻撃を行う主要部隊として今回の作戦に臨む。

サンサルバシオン空港は大陸中央に位置し、かつては大陸内のハプ空港として機能していた空港であり非常に広い。俺たちの機体もこうして横にずらっと並んでいるとなかなか見栄えがいいもんだ。出撃準備中の機体の周りではメカニックたちが忙しそうに走り回り、パイロットは機体の最終点検をしている。俺もまた自分の機体を見て回る。ここ何回かの激戦をくぐり抜けた愛機は、大地の束縛から解き放たれ大空へはばたくことを待っている。点検を終えた俺は、コクピットの中に乗り込んだ。今回からは、俺に部隊の指揮権が付与されている。俺は辞退したかったのだが、部隊の連中に説得されて結局引き受けちまった。彼らが言うには、俺が指揮を取った方が死人の数がはるかに少ないってことらしいが……ちょっとプレッシャーだぜ。
部隊全機の発進準備が整ったと管制官から通信が入る。俺はマイクのスイッチを入れた。
「全機、発進!」

ウイスキー廻廊出口に防衛戦を張ったエルジア軍の砲撃は既に始まっていた。ご丁寧にSAM車輌や対空砲も多数、部隊に混ざっていやがる。だが、これまでの激戦を生き抜いてきた俺たちの部隊も伊達じゃないぜ。俺たちは中央戦線の敵部隊に襲いかかった。機体に吊り下げた気化爆弾を、密集陣形を取っていた部隊にお見舞いする。直撃を受けたSAM車輌を中心に火球が膨れ上がり、周りの戦車隊を巻き込む。部隊の戦闘機も次々と爆弾を投下し、戦車部隊を血祭りに上げていく。
「メビウス1、上空にハエを発見!!」
レイピア09は言うなり機体を上昇させた。俺も負けじと上昇し、部隊を狙って降下してきた敵戦闘機を狙う。無理だよ、すれ違いざまの攻撃で俺にかなうと思っているのか!機体が接触するかしないかのぎりぎりの所で敵をかわす。コクピットを潰された敵機は、そのまま大地に突き刺さり、爆発した。レイピア09も、1機を苦もなく撃墜していた。僚機を撃墜された敵機は踵を返して逃走しようとしたが、逃がすものか。その後ろに食らいつき、AAMを発射する。
「助けてくれ!逃げられない!!」
最後に絶叫が重なって、ミサイルが敵機にヒットする。パラシュートの花が2つ、大空に咲く。恐らくは絶望的な表情でこちらをみているパイロットたちのわきを抜け、再び地上部隊へと襲いかかる。
「くっそー、空軍は何をやっていやがる!」
「リボンのエンブレム……メビウス1だ、メビウス1が来てくれたぞ!」
両軍の交信が交錯する。眼下では、突撃中の兵士がこっちに手を振っていやがる。期待を裏切っちゃいけねぇか。俺は歩兵の進撃を阻んでいたトーチカ群を爆撃した。味方の歓声が上がる。陸軍も戦車部隊の斉射で突撃をかけ、敵の防衛ラインを少しずつ突破して行く。

中央戦線の戦車隊を壊滅させた俺たちは、二手に分かれて攻撃を続行した。レイピア09の隊は他の戦車隊を、俺たちは後方に展開している本隊に向かった。あれだけ前線に展開しているくせに、まだあんなにいやがるのか!俺たちは手荒い対空砲火をくぐり抜け、無防備な頭をさらしている戦車隊に襲いかかった。地上では、兵員たちが逃げ場を探して走り回っている。そこに爆発が重なって、パニックに陥る兵士たち。俺は上昇しては垂直降下爆撃を加え、敵の戦力を削いでいった。
「司令部より、全隊!リボン付きの戦闘機を最優先撃墜目標とする。あの死神を叩き落せ!!」
敵の命令が通常回線に入って来る。死神はないだろ、死神は。しかしその命令と同時に、自分への砲火が集中してきやがった。おまけに防空戦闘機の新手まで!俺は砲火を避けて急上昇し、敵の防空戦闘機部隊と交戦に入った。……機体はいいみたいだが、腕はそんなに良くない。どうやら敵さんの技量は確実に落ちてきているようだった。ここ何回かの戦いでベテランたちが減ってきているせいもあるのだろう。俺は必死になって逃げようとしている敵のF−22にバルカン砲を発射した。破片を撒き散らし、爆発する機体。急旋回して、8時方向の敵機にくらいつき、これも撃墜する。エンゼル01も容赦無く俺を狙った戦闘機たちを撃ち落して行く。……頼りになる護衛機だよ、ほんとに。今や部隊の中で彼女に勝てる男はレイピア09と俺、あと2人くらいしかいなくなっちまった。
「スカイアイより作戦参加各機へ。敵は撤退を開始した。繰り返す、敵は撤退を開始した!追撃を許可する!!」
陸軍は全戦線で防衛ラインを突破し、追撃を開始している。俺たちも残弾を敵の退路に放ち、それぞれの撃墜スコアを稼いだのだった。

ウイスキー廻廊の防衛ラインを突破されたエルジア軍は、連合軍の降伏勧告を拒否し首都ファーバンティを最終決戦地にするつもりのようだ。今回の作戦による我が軍の損害も看過できない状況であるが、士気は確実に高まっている。恐らくは次の戦いが最終決戦になるのだろう。……負けるわけにはいかねぇな。

本ミッションにおける撃墜スコア
戦闘機15・地上目標105・ヘリ1

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