ミッション4

我が軍の偵察隊が、コンバース港に停泊しているエルジア軍の誇る無敵艦隊、エイギル艦隊の姿を捉えた。この戦争において、連合軍の数々の艦隊を打ち砕いてきた英雄的艦隊だ。奴らがそこにいるということは、我々の本拠地に対する侵攻作戦が進みつつあるということだろう。作戦司令部は、その港への物資を積んだ輸送ルートを割り出した。なんと我が部隊の哨戒圏内を堂々と通過していやがる。一度痛い目を見させて、この廻廊を使うことがどれだけ危険か、奴らに教えてやる必要があるようだ。

我が部隊も立て続けに増員され、全機が出撃した場合には中隊規模の部隊編成が行えるようになってきた。とはいえ半数はまだまだ敵のエースに狙われたら一たまりも無いヒヨッコ達。戦力としては十分じゃない。軍のお偉いさん達もベテランを散らばすだけじゃなくて少しは部隊の運営を考えてほしいものだ。
離陸を待つ僚機たちは、久々の空戦とあって色めき立っている。戦闘機乗りの救い難い習性と言うべきなのだろうか。AAMを搭載した空飛ぶ棺桶達が、次々と滑走路を飛び立って行く。だいぶ馴染んできたF−5Eの操縦席。そういや、明日辺りまた新入りが来るらしい。これだけ忙しい部隊だ。多少は使える奴だといいんだが。そうこうしているうちに、俺の離陸の番だ。すっかりペアを組んでいるレイピア09と一緒だ。
「メビウス1!今日こそは俺に酒をおごってもらうからな!」
彼は立て続けに3回、俺に酒をおごる羽目になったことを根に持っているようだ。
「なんの、やっぱり今日もおまえのおごりで決まりだよ。」
言い返して、スロットルを前回に叩きこむ。アフターバーナーを吐き出して、俺達の機体は空に舞い上がった。

「全機、状況を報告せよ。」
スカイアイからの通信だ。だが、いつもと違って雑音がまじっている。
「スカイアイ、通信機を交換した方がいいんじゃないか?ノイズが耳障りだぜ。」
だがノイズは徐々にひどくなってくる。部隊にも動揺が走る。これは……電子妨害!?
「全機へ!E767がいる!レーダーが……な……気を……。」
妨害がひどくなり、スカイアイからの通信が途絶した。まさか目視戦闘をやる羽目になるとは思わなかった。でも条件は敵も同じだ!俺はヒヨッコ達の為にも真っ先にE767を叩くことにした。妨害の一番ひどい所。その中心に奴らはいるはずだ。急上昇して15000フィートまで駆け上り、辺りを見回す。いた!目標確認。こっちの接近に気がついて慌てて進路を変更するE767に俺は襲いかかった。20ミリの鉛弾に引き裂かれて行く機体。大爆発を残して、E767は四散する。途端に、それまで機能していなかったレーダーの一部区域がクリアになる。
「うわっ!真後ろにいやがる!」
「ちっ、こっちもだ!振りきれない!!」
初めてのレーダーの使えない戦闘でルーキーたちが浮き足立っている。休む間もなく急旋回して、味方に食いついているMig−29の後ろに回りこむ。さすがにF−5Eのエンジンじゃついていくのがやっとだぜ。素早くロックをかけてミサイルを叩き込み、すぐに別の目標に狙いを定めて攻撃。忙しいことこの上ない。
「メビウス1、護衛に感謝する!」
「御託はいいから、あそこに浮かんでいる輸送機を攻撃しろ。」
「りょ、了解!!」
トロい輸送機を狩るのはルーキーにまかせ、俺は再び機体を上昇させた。もう1機いる、E767を叩く為。その瞬間、俺の機体にレーダーロック警報が鳴り響いた。ちっ。後ろにくいつきやがったか。
「メビウス1!ここは俺が引き受けた、おまえは行け!!」
レイピア09!おいしいところもっていってくれるじゃないか。俺は強引にその場を突破した。向かう先は、ジャミングの中心点。最高巡航速度で進む俺の目前に、E767が迫る。くたばれ。俺の機体から放たれた矢は、奴の機体を貫き、そして真っ二つにした。曇っていたレーダーが途端に全回復する。
「くそっ!話が違うじゃないか。これじゃあ撃墜されちまう!」
敵さんの悪態が聞こえてくる。ジャミングの柵が取り外された今、俺たちの進路を阻むものは何も無かった。

「遅かったか。」
レーダーから味方の姿が次々と消えて行く光景を隊長機は苦々しげに見つめていた。
「ISAFにも、腕利きがいるようですわね。」
寄り添うように飛んでいる4番機がそう呟く。今からいっても何も得るものは無い、そう暗に語っているのだ。
「よし、全機帰投!」
次は逃さない。そう誓う男の機体には「013」と黄色い機体番号が記されていた。

本ミッションにおける撃墜スコア
E767:2機・C−17輸送機:3機・戦闘機10

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