ミッション5
我が軍の諜報部が、コンバース港に停泊中の無敵艦隊の燃料補給ルートの解明に成功した。1日25万バレルの生産能力を持つコンビナートと、500万バレルを保有する備蓄基地がその中核を担っているらしい。これの制圧に成功すれば、艦隊の補給ルートはやせ細り我が軍の勝機が多少は見えてくるってわけだ。ただし問題も多い。攻撃目標が2箇所になるため部隊を二分しなければならないこと、さらには敵も馬鹿じゃないからSAM陣地を設けていることが気がかりな点だった。部隊の区分けを一任されてしまった俺は、迷った挙句レイピア09に備蓄基地攻撃を任せ、コンビナートの攻撃を俺の部隊が行う事に決めた。
ついでに言うと、俺たちの部隊に新入りがやってきた。何と航空学校上がりの女子学生だ!こんなむさ苦しい男どもの部隊に配属なんて上層部も何考えていやがる。第一、今この基地には女子トイレすらないんだぞ!しかもうちの部隊の配属となっちまった。レイピア09め、厄介事押し付けやがって……。ハンガーに向かった俺は、自分の乗るべき機体がある場所に別の機体が置いてある事に気がついた。
「おやっさん!俺のF−5Eはどうしたんだ!!」
「おお、聞いてないのかい!?」
そこに置いてある機体……A−10のコクピットからえっちらおっちらと、おやっさんが降りてきた。
「今日からおまえさんの部隊に新人が入るじゃろ。だが予備の機体はこれしかなくてなぁ。こんなの使えるのはおまえさんくらいなんで、あの機体はルーキーにやっちまったよ。」
「ってことは、俺にこれに乗れってことか?」
かくして、俺の今回の作戦における機体はA−10となった。この作戦が終ったら戦闘機を仕入れないとな……。
メインベースから飛び立った俺たちは、目標まで15マイルの海上に接近していた。ようやく数もまとまってきた俺たちの部隊も、こうして編隊を組んでいるとなかなか見栄えがいい。ちなみに俺の側には昨日まで俺の愛機だったF−5Eに乗ったエンゼル01がいる。
「そろそろ時間だ。メインベースで会おうぜ。」
レイピア09からの通信が入る。彼はF−4E主体で編成された部隊を率いている……本人はF−16に乗っているが。
「子猫ちゃんとの空中デートはうらやましいぜ。後で結果を報告しろよ!」
僚機たちの笑い声。一人エンゼル01が抗議の声をあげている。
「……スカイアイより全機、作戦開始!」
常に冷静なスカイアイのオペレーターの声が聞こえてくる。俺たちは基地での再会を約束してコンビナートへ向かった。
コンビナートは予想以上に武装していた。対空機銃とSAMが組み合わされた陣地が至るところに設置され、俺たちの接近を阻んでいた。俺はクラスター爆弾の安全装置を解除し、敵の施設密集帯に投下する。炸裂する子弾がクレーンや建物を粉砕し、ガラクタの塊に変えて行く。こりゃ楽でいい。俺は少しA−10を見直していた。空戦性能に劣るこの機体だが、うまくエンゼル01が防空隊を追い払ってくれているおかげでコンビナートの攻撃に集中できる。前言撤回だな。なかなかやるぜ、あの姉ちゃん。……今後のことを考えると女子用のシャワールームとかも請願しないとな……。と気を抜いていたら機体に振動が走る。運良く影響は無いみたいだが、対空砲火を浴びちまったみたいだ。この野郎。機体を旋回させた俺は、30ミリバルカン砲を対空陣地にお見舞いした。弾薬が誘爆して根元から陣地が吹き飛ぶ。爆炎の中を旋回して、水平爆撃を行って敵の施設を叩く。どうやら部隊もその方法に慣れて来た様で、正確に爆弾やミサイルを施設に叩きこんでいる。コンビナートからはあちこちで爆炎が上がり、夕闇の空を焦がしていた。
あらかたコンビナートの破壊を終えた俺たちは、備蓄基地へと加勢に向かった。どうやら防空隊はこっちを中心に配備されていたようで、レイピア09が苦戦しているらしい。全速力で備蓄基地に向かうと、守備隊の必死の反撃もあって攻めあぐねている味方がいた。俺は残っていたクラスター爆弾を片っ端から対空陣地に叩きこんだ。大爆発と共に対空陣地が火の海と化す。対空砲火が止まったスキを突いて、上空に待機していた攻撃機が次々と燃料タンクへ爆弾を投下していく。気がついてみれば、500万バレルの石油を備蓄していた燃料タンク群は壮大なキャンプファイアーの燃料源となっていた。部隊は久々の大勝利に湧き返っていた。俺たちはメインベースのある南に機首を向け、編隊を組んだ。
「スカイアイより各機へ。未確認の航空機が5機そっちへ急速に接近中!」
まだ生き残りがいたのか?レーダーを確認すると確かに5機、光点がきれいなトライアングルを組んで急速に接近していた。速い!さっきまでの連中とは違う!
「スカイアイより全機!黄色中隊だ!」
その通信が届くよりも速く、トライアングルからブレイクした奴らは俺たちに襲いかかっていた。動きが違う!一体どうすればあんな動きが出来るっていうんだ!今回ばかりはヤキが回ったらしい。Su−37相手にA−10じゃ分が悪すぎる!
「全機、交戦せず安全区域まで逃げるんだ!!」
俺はとっさにそう叫んでいた。が、やつらがそうそう簡単に俺たちを手放してくれるわけも無く、ルーキーたちが次々と撃ち落されて行く。
「隊長ォォォォ!!」
断末魔の叫びがプツッという無線途絶の音にかき消されていく度に、部隊のメンバーが一人また一人と血祭りにあげられていく。悔しさに歯噛みしながら、1機でも多く撤退させるべく俺は無謀な空中戦を挑んでいた。その眼前に、見覚えのある機体が機番04の黄色に追われている光景が目に入った。ちいっ!やらせるかよ!!俺はバルカン砲を乱射しながら、そこに割って入った。機番04からの銃撃がA−10をとらえ、激しい衝撃が襲う。女?一瞬目に見えた機番04のパイロットは明らかに女性だった。
「メビウス1、逃げろ!!」
まだ踏みとどまっていたレイピア09の援護で、俺たちはかろうじて戦線離脱に成功した。もちろんエンゼル01は無傷で済んでいた……こっちはガタガタだったが、A−10の頑丈さに今回ばかりは感謝だ。
この日、俺たちは大勝利を得るも、部隊の半数を失ったのだった。まさか奴らがこんな辺境にまで現れるとは……。
本ミッションにおける撃墜スコア
地上施設83・船舶2・ヘリ3・戦闘機7