ミッション9

大陸から撤退していた陸軍の再編成が終了した。先日のコモナ諸島での戦闘で制空権を確保した連合軍は、大陸南東部からの上陸作戦をついに発動した。大陸中でも数少ないストーンヘンジの射程外というのも上陸点の決定の大きな要素であることは言うまでもないが、敵さんも馬鹿じゃないからそこにはそれなりの防衛部隊を置いているはず。ある意味、この作戦は運試しの意味もあるってことらしい。ただ、以前のリグリー航空基地や何度かの空中戦によってエルジア軍の航空兵力は確実に弱体化しているうえ、今回については近くに大規模な航空基地がない。その点だけは、俺たちにとってかなり有利な点だ。

本作戦から、俺たちの部隊は最優先で新鋭機を導入できることになった。これまでの戦果がようやく認められた、というわけだ。今後の作戦を考えて、俺はF−15Eを選択した。メカニックの連中はマニュアルを何度覚えなおさなきゃならないんだ、と叫んでいる割には嬉しそうだ。アイドリング状態のF−15Eは、低いエンジン音をたてながら出撃の刻を待っている。そしてF−14Aは予備機としてハンガーに保管されることになった。隊員たちもほとんどが持っているクレジットの範囲で機体を新調したようで、ずいぶん贅沢な部隊になってきた気がする。俺はステップを駆け上がり、コクピットに滑り込んだ。ヘルメットを被り、機体をランウェイへと動かす。既にタクシーウェイには離陸待ちの戦闘機の渋滞が出来ていて、パイロット達の管制官をなじる声が聞こえてくる。今回の作戦には、俺たちの他地上攻撃を専門とする航空隊も参加することになっていて、トータルではかなりの戦闘機が投入されることになっていた。
「メビウス1、離陸を許可する。グッドラック!」
「海辺で貝殻でもみやげに持って返って来てやるよ。グッドラック!」
スロットルを最大にすると、心地よい加速と共にF−15Eはランウェイを滑り出した。今回からF−18に乗り換えているエンゼル01も斜め後ろから付いて来る。……だいぶうまくなったもんだ。他の連中も。
基地を出撃した俺たちの部隊は、航空支援を心待ちにしている上陸部隊の元へと全速で空を駆ける。

上陸地点では、既に激戦が始まっていた。海岸線を砲火の灯りが照らし出し、時折起こる爆発が一瞬だけ付近を昼のようにしていた。
「くそったれ!本部、空軍の連中はお昼寝中か!!」
上陸部隊の指揮を取っている士官らしい男の声が聞こえてくる。
「ベルツ中尉、もう君たちの後ろに来ている。全力を尽くし進軍せよ。」
「……了解!トーチカ群に手を焼いている。それを先に狙うよう言ってくれ!!」
言いたいこと言うヤツだな。苦笑いしながら、俺たちの部隊はベルツ中尉が戦っているであろう中央戦線、クラウンビーチを最初に狙った。遠距離からの対地ミサイルをお見舞いし、トーチカ群を攻撃する。突如海岸線に上がった火柱に、敵軍の指揮系統は混乱し始めた。そのスキをついて、低空からの機銃掃射を戦車や対空車輌にお見舞いする。直撃を食らった車輌が爆発し、薄暗い辺りを照らし出す。そして上昇して、敵の防衛陣地の上空から垂直爆撃を食らわす。それを何度も繰り返し、俺たちはめぼしい攻撃目標の大半を破壊することに成功していた。眼下では歓声をあげて陸軍の連中がこっちに手を振っている。俺はバンクを振って応えると、他の上陸地点へと機首を向けた。

レイピア09に一方をまかせ、俺は南西部の上陸点に向かった。どうやらそっちは航空戦力の妨害で上陸がうまく行っていないらしい。そうこうしているうちに、レーダーには早くも敵機の機影が映る。F−18とジャギュアの数機が、揚陸艇に機銃掃射を繰り返し、上陸を阻止せんと奮闘している。俺たちは奴らの上空から一気に襲いかかった。こっちの接近に気がついた敵機は慌てて回避行動を取るが、もう遅い。俺は立て続けに2機を撃墜し、ついで3機目のケツに食らいつく。
「くそう、リボン付きだ!誰か助けてくれ!!」
俺は敵の尾翼辺りに機関砲を集中した。コントロールを失った機体のキャノピーが跳ね上がり、パイロットが脱出するのを横目に見ながら、地上部隊に狙いをつける。戦車群に爆弾を投下して一網打尽にし、こっちを狙う対空ミサイルには死角から攻撃を叩きこむ。燃料タンクにもバルカン砲の雨を降らしてやる。石油の燃える炎は、辺りを照らす灯台代わりにはもってこいのようだ。勢いづいた上陸部隊が残っていた敵の戦車部隊に集中砲火を浴びせて進軍して行く。上から見ていてはっきり分かるほど、敵の防衛ラインは崩壊し始めていた。俺の機体のレーダーに、北西から向かってくるいくつかの光点が見えたのはそのときだった。
「スカイアイ!北西方向から接近してくる機体があるぞ!」
「こっちでも補足した。A−10がクラウンビーチに急速接近中。食いとめてくれ!!」
俺は残っていた爆弾を敵戦車隊にぶちまけると、クラウンビーチに急行した。トライアングルをいくつか組んで飛来してきたA−10隊の間に割って入る。自分が以前乗っていた機体だからこそ、その恐ろしさは良く分かる。だがそれは弱点も良くわかるということだ!!外に剥き出しのエンジンを集中して攻撃し、1機また1機と撃墜していく。やたらと逃げ回っていた1機を落とした頃には、他のA−10は全機海水をしこたま飲む羽目になっていた。上陸部隊までは行かせなかったぜ。

「敵地上部隊の撤退を確認。作戦成功だ!航空支援に心から感謝する。」
陸軍司令部からの通信に、パイロット達も歓声をあげる。
「ベルツ中尉、パイロットたちに何か伝えることがあるか?」
だが返事は返ってこない。しばらくして、若い下士官の声がヘッドホンから聞こえてきた。
「こちらコルフト准尉です。現在部隊の指揮権を引き継いでおります。空軍の支援に感謝する、ありがとう、とお伝え下さい。」
エンゼル01の息を飲む音が聞こえた。

その晩、俺は基地のバーカウンターで、激戦の中に散って行った一人の中尉の為に杯を空けた。この戦争を1日でも早く終わらせなければ。俺はそう考える時間が多くなったことに気が付いた。

本ミッションにおける撃墜スコア
地上目標50・戦闘機4・A−10×6機

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