南国?のあとがき
おかしい。ベルカでの戦いを終えて南国でバカンス三昧のはずだったのに、2006年12月9日から2年以上も次なる戦いに巻き込まれるとは……。ミッション数自体は分岐の部分を除けばAC04以降の作品としては一番少ないはずなのに、「南十字星の記憶」・「偽りの空」両編合わせて100話になってしまうとは、書き始めた当初は全く予想もしていませんでした。当時は、60話程度で終わるだろうなぁ、と思っていたわけでして……。ここまでお付き合い頂きました読者の皆様に感謝、感謝でございます。
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第一話を書き始めた頃は こんなに長く 話が続くとは 思わなかったよ
二編同時が こんなに大変なら やっぱり一つずつ 書いてれば良かったよ
Uuuuu もう絶対やらない
♪ 〜「ダイヤモンド・クレバス」の節で〜
今回は、ジャスティン、フィーナという二人の主人公の視点から物語を執筆していったわけですが、書き始めの頃は同じフィールドで戦っている時は文章の使いまわしも出来るしスムーズに行くだろう、と思ってました。ところが、実際に書いてみるとそういうわけにはいかず、ジャスティン視点の話を見ながら全く新たに話を書いているような状態になりまして、むしろ二人が別々のミッションについているときの方が仕上がりが早いという結果になりました。フィーナの視点はジャスティンの戦い方が定まらないと書けなかったんですね……。さらに付け加えるなら、AC05・AC00はある程度物語の主軸となるキャラクターが本編にも存在していたので、ある程度主人公の性格や行動、物語の章立てがやりやすかったのですが、ACXはユジーンとジュネットとナバロくらいしかいないことに加えて、肝心のグリフィス隊の陣容等が細かくは設定されていないことも、執筆の上で随分悩んだポイントでした。そこで、今回は「エトランゼたちの戦旗」に比べても随分多くの登場人物を設定しています。そもそもシルメリィ艦隊という存在自体が、こちらのサイトで掲載しているAC05時代の物語の産物ですし、当時の物語から二人ほど再登場をさせてしまったり、フィーナに至ってはレオンハルト・ラル・ノヴォトニーの娘という設定です。レサス側にも、紫パンツのナルバエス君やロビンスキー、公式サイトの物語とは全く別人になってしまったアレクト隊の面々、懲りないエスケープキラー、ポリスアカデミーの「ブルーオイスター」がベースのフェラーリン部隊等々、終わってみれば随分いろんな人々が出演していたのだなぁ、と我ながら思いました。これもまた、彼らの登場機会をどうするかという悩みの種になってしまったわけですが……。
でも、今までの作品とは異なる楽しみもありました。それは、設定がAC03の時代により近付いたことによって、架空機を存分に使い回せるという点です。ジャスティンのXR-45S・XRX-45・XFA-27S、スコットのXFA-24S、マクレーンのYR-99、バターブルのX-02、アレクト隊のフェンリア、改造人間ルシエンテスのロットバルト、グランディス隊長のADF-01S……これだけ揃うと、ガンダムシリーズなら「ZZ」、マクロスシリーズなら「マクロス・フロンティア」のようなノリですね(笑)。中でも、ジャスティンのXRX-45とルシエンテスのロットバルト。この2機は、私としてはかなり思い入れのある機体です。実は、この2機はかなり前からあまてらすさんとの間でも設定を考えていた機体でもありまして、一度XR-45Sがぶっ壊れて、その機体をリファインして専用機が出来上がるという筋も粗方決まっていました。さらに、AC00のようなラスボスが存在しないACXの終盤を盛り上げるという観点から、「スーパーフェンリア」案が登場し、masamuneの頭の中でこいつには魔王のようなネームを付けたい、というわけで「白鳥の湖」に登場する悪魔の名前から「ロットバルト」が付きました。もしかしたら、ロットバルトの名前を聞いてもっこりタイツのダンサー姿が思い浮かんだ方がいたかもしれません。そしてさらに、この悪役機が簡単に扱える代物では面白くないし、サイバーパンク的要素の強いAC03へと繋げるという観点から改造人間ルシエンテスプランが生まれ、その結果一度奴はジャスティンに敗北するという筋書きが定まっていきました。さらにさらに、これだけだと何だかルシエンテスのキャラが立たないし、マクレーンの昼行灯の背景が良く分からん、ということから、この二人を結びつける設定が必要となり、その結果生まれたのが悲運のヒロイン、リンちゃんのエピソードです。そして後付で、XR-45Sもフェンリアもこの当時からコンセプト機が存在していたこと、そのプロジェクトにはゼネラル・リソースが当然の如く参加していたこと、ロビンスキーはその同時から色々とかんでいたこと……といった設定が加えられていったわけです。この辺はAC05やAC00では無かったことなので、私は結構楽しんで設定を行ったりしていました。
はい、では恒例の暴露話です。
グリムワルド・ロビンスキー
ベルカに繋がっている「灰色の男たち」の一人、という設定は当初も最後も変わらなかったんですが、もともとはオーレリア・レサス戦争後も彼は生き残って暗躍を続ける予定でした。ところが、後述しますがナルバエス君の位置付けとラストを途中で変更してしまったため、彼は真の黒幕的な役柄に変わり、物語の後半ではナバロからも敵視されるようになっていきました。グリスウォールで墜落したルシエンテスを回収したのも、彼を改造人間に作り変えてアーケロンに配置したのも、ぜーんぶこの悪人の所業です(笑)。で、やっぱり悪人にはそれに相応しい最後が必要だろう、というわけで、最後は脳天を吹き飛ばされてしまいました。でも、企業のやり手の幹部なんてのは、多かれ少なかれ彼のような側面を持っているようにも思います。こういう役回りの人物は初めてだったので、良い勉強になりました。
ディエゴ・ギャスパー・ナバロ
登場機会は多いのに、今ひとつ彼の人物像が見えない。それがナバロでした。ただ、本編の最後でも顔を覆いながら逃げていく姿があり、全てを失った後には小心者の本性が現れる……ということをベースに、偽りと謀略で塗り固められた策略家としての人間を組み立てていきました。結果として、公式サイトの小説に出てくるナバロとそれ程ずれないイメージに仕上げられたのは嬉しいところです。男前になったナルバエスとは対照的に非常に情けないラストになったあたり、「エトランゼ〜」の時のジョシュア・ブリストーに繋がるようにも思います。
リン・フローリンス・ルシオーラ
彼女のモデルは、AC03に登場したかの御仁です。普通は飛べないはずの人間が空を舞う、その宣伝塔としての役割と、その立場に負けない人間的な強さ・明るさをもったキャラクターを、ということから、彼女が生まれました。これがまぁ、フィーナ嬢に負けないくらいのいい娘だったもので、マクレーンの復活のきっかけとなる節目節目で妖精のように現れるようになってしまいました。ちなみに、けなげな彼女は、「GS美神・極楽大作戦」に登場するルシオラ嬢も結構入っています(笑)。ルシオラ=蛍ですので……。我が作品初のヒロイン殺しの犠牲者だったり。
ドミニク・ズボフ
ジュネットが出てくるくらいなんだから、まだ存命中でしかもしぶとそうなこれまでの作品のキャラを出そう、ということで、「エトランゼ〜」でも大活躍でしたドミニク氏の再登場となりました。それも、いい感じに年取った爺として(笑)。これがまた使い勝手が良すぎまして、最後はサンタクロースに扮してジャスティンとフィーナのキューピット役まで務めてしまうという、非常においしい役柄を演じてしまうのは予想外でした。
ジャスティン&フィーナ
某大作RPGの主人公とヒロインより拝借。
ブルース・マクレーン
絵柄の通り、ブルース・ウィリス氏がモデルです。
オストラアスール
スペイン語での「ブルーオイスター」です。ポリスアカデミーに登場したハードゲイバー(笑)。
アレクシオス・ナルバエス
彼は初期設定と実地が完全に変わってしまった、非常に珍しいキャラクターです。当初の予定ではアーケロン要塞決戦の後、ロビンスキーの手で射殺され、フェンリアの残骸と共にステージ上に転がっている予定でした。私もそのつもりで執筆を進めていましたので、彼の役回りは小役人の謀略家という位置付けでした。ところが、紫パンツ事件の辺りから、何だか妙な愛着感が湧いてしまったんですよねぇ。逆に、ロビンスキー氏に対してだんだん嫌気がさして来まして、とうとう役割チェンジが決定してしまいました。蜂の巣になりながらも全ての元凶を打ち倒すことになるとは、きっと彼にとっても予想外だったでしょう(笑)。
余りにも長い期間の執筆だったので、正直なところ途中で挫折しかけたり、本業がとんでもなく忙しくなってしまって執筆の時間も気力も無くなってしまったり、二人目の子供が生まれたり、と今までの作品群とは全く異なる環境下の作品でもありましたが、何とか書き終えられたことに今は満足しています。書きあがると、ここをこうすれば良かったとか、これまずいなぁ、と思う箇所が見つかるのはいつものことですが、まあ今回はこれで勘弁して頂きたいと思います。エトランゼに引き続き、魅力的なイラストをご提供頂きましたあまてらす氏にも大感謝でございます。彼のイラストのおかげで、キャラクターのイメージが際立って執筆に役立つこととなりましたし、物語を考える時に彼らの顔を思い浮かべながら執筆したり、ということも出来ました。あまてらすさん、今回も本当にありがとうございました。
さて、と。物語も仕上がったことだし、今度こそ青い海、青い空でバカンスを満喫しま……何だい、こんなときにまた電話ですかい。
「はい、masamuneです。この電話は現在使われておりませんので……」
「丁度良かった。アネア大陸できな臭い動きが出てきていてな。早速だが、身支度整えて腕っこきたちと共に向かってもらいたい」
「いえあの……こっちゃ、ようやくオーレリアの戦い終わったばかりなんすけど……」
「いい話じゃないか。二人目の子供も生まれたことだし、養育費をしっかりと稼いでおく良い機会だぞ。ああ、既に迎えが行ってるからな」
「へ、迎え?……って、あ、何すんだ。これからバカンスが、バカンスが待っているんだ。いやぁぁぁぁぁ、あんな寒いところに連れて行かれるのはいやぁぁぁぁぁ」
お後がよろしいようで(笑)。次回作も、軽く50話コースになるとは思います。
2009.01.30
資料の山に埋もれながら
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